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私のスキルは【毒反転】。なので、劇毒しか食べない配信やってます  作者: 狐白
第二巻

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48/51

第48話

「おはよう、ポチ」


【おはようございます。本日の行動予定を読み上げますか?】


「ん……歯磨きしながら聞く……」


 どすん。


 ぼんやりしたままベッドから転がり落ちて、顔面から床に激突した。


 鼻がツンとして、涙が出そうになったところで――ようやく思い出す。


 ……ここ、自分の家じゃなかった。


 前のボロ賃貸ではずっと床に布団を敷いて寝てたから、ベッドで目を覚ますの、まだ全然慣れない。


 でも――


「ずっとここに住みたいなぁ、ポチ……」


 ただのホテルの部屋なのに、私の激安アパートと比べたら広すぎる。


 しかも、タオルもトイレットペーパーも無料。


 さらに、大きな洗面台と鏡まである!


 私はうるうるした目のまま鏡の前に立ち、唇をめくって、前に折れた歯を確認する。


 ……ちょっと生えてきてる!


「ふふふ〜♪」


【警察官・真司からの依頼を受諾済みです。本日、新たに出現した未知のダンジョン探索へ向かいます】


「……真司……? 誰それ?」


【鎧のおじさんです】


「おお!!」


 ぼんやりしていた頭が、一気に冴えた。


 昨日の会話を思い出す。


 ――あのときは、本気で地獄送りにされるのかと思った。


【今回の探索では、あなた単独でダンジョンへ侵入します。調査対象は入口付近の「彼岸花の花畑」「三途川」のみ。調理器具の持ち込み、配信も許可されています】


【また、冒険者協会『ダンジョン開拓部門』も本配信をリアルタイムで視聴し、行動提案やダンジョン内部の調査を行います】


「うぅ……なんかいっぱい言ってる……つまり、いつも通りってこと?」


「ダンジョン入って、『いただきます』するだけでしょ?」


【正解です。ですが、幽霊との遭遇可能性もある中、即答で了承したのは少し驚きでした。まさかここまで勇敢だったとは】


 かたん。


 歯ブラシが洗面台に落ちた。


「今……なんて言った?」


「幽霊???」


「そんな話、一回も聞いてないんだけど!!」


【……冥界で幽霊や亡霊系モンスターと遭遇するのは、むしろ当然では?】


「聞いてないって言ってるでしょおお!!」


「あのときは『あっ、この人ほんとに私を地獄送りにするわけじゃなかったんだ……!』って、それで頭いっぱいだったの!! そこまで考えてなかったの!!」


【……ですが、すでに配信内で了承していますし、昨日は『冥界』テーマのダンジョン探索と聞いた視聴者から大量のギフトも届いています】


「返して!! ポチ!! 全部返して!!」


【申し訳ありません。その機能は実装されていません】


「…………」


 終わった。


 人生終わったぁぁぁぁぁ!!


 ◇


 午前の日差しがぽかぽかと身体を包んでいた。


 私は空の上から地上を見下ろしている。


 私はぴくりとも動かない。


「……なあ。ホテルの屋上にパンダ風船が浮いてたら、誰でも不審に思うだろ」


 地上で、警察のおじさんが呆れた顔でこちらを見上げていた。


 私は動かない。


「本当に怖い幽霊なんていないって。先遣隊ももう調査済みだし、そこまで怯えなくても……」


 幽霊いない?


 ……いるに決まってるでしょ!!


 冥界に幽霊がいないわけないでしょ!!


 騙されないからね! 絶対!!


「先輩、なんでずっとパンダ風船に話しかけてるんですか?」


 若い警官二人が、なんとも言えない顔で先輩を見ていた。


「はぁ……」


 警察のおじさんはため息をつき、リュックから二本の竹を取り出した。


 ……竹!?


 思わず視線が動いた。


 でも、すぐ戻す。


「ほらほら〜、降りてきたら新鮮な竹食べ放題だぞ〜? G172ダンジョン産の朝採れだ! 柔らかくてめちゃくちゃ美味いぞ〜?」


 ごくり。


 思わず唾を飲み込む。


「現実逃避はやめろって……頼むから信じてくれ。というか、その変装、お前以外誰も騙せてないからな!?」


 やだ。


 ごくり。


「降りてこないなら、この竹、動物園に寄付するけどなぁ……」


「青野が白状したぞ。薬を渡したのはあいつだって」


 なにっ!?


「ガウ!!(くっそぉぉ!! 青野ォ!! また私を売ったなぁ!!)」


 私は腰に巻いたロープを両手で掴む。


 一段ずつ。


 ぐい……ぐい……


 必死に身体を引き下ろしていく。


「何言ってるか分かんないけど、絶対悪口だろそれ……ちなみに私は売ってないから」


 欠伸をしながら、青野が歩いてきた。


 売ってない?


 ……しまったぁぁ! 騙された!!


 私は勢いよく警察のおじさんへ飛びつき、そのまま竹を抱え込む。


 ……竹まで失うわけにはいかない!


「じゃあ、ダンジョン行きは了承ってことでいいな」


 やだぁ!!


「ポチ、配信を開始してください。視聴者のみなさん、ずっと待機してますよ……今や紗和さん、日本一の人気配信者ですからね」


 ……いやだぁぁ!!


「ガウ!(ポチ! こいつらの言うこと聞いちゃダメ!!)」


【「配信開始」の指示として認識しました。開始します】


「ガウ!?(勝手に解釈しないでぇ!?)」


【承知しました。『パンダ風船に擬態して任務から逃走を図った一連の映像』も公開設定に変更します】


「ガウゥゥゥ!!(だから勝手に解釈するなぁぁ!!)」

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― 新着の感想 ―
笹が好物みたいでますますパンダが馴染み過ぎでは(笑) このままパンダで現実逃避してもポチの翻訳(解釈)で物事はすんなりと進むことも出来るし動物?化が増えても安心だね
「パンダ風船に擬態」なんて聞いたことの無いパワーワードで腹筋痛いw
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