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私のスキルは【毒反転】。なので、劇毒しか食べない配信やってます  作者: 狐白
第一巻

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第47話

「ガキ、お前……何する気だ? 自傷か?」


 赤髪の筋肉男が、獰猛な笑みを浮かべながらこちらへ歩いてくる。


 私は黙ったままだった。


 男はさらに一歩、踏み込む。


「そんなガキみてぇな脅しで、まさか――」


 びりっ――


 その瞬間。


 空気の中から、微かな裂ける音が響いた。


 まるで布をハサミで切り裂いたみたいな音。


 赤髪の筋肉男の表情が、一瞬で凍りつく。


 次の瞬間には、まるで天敵でも現れたみたいに、十メートル以上後方へ飛び退いていた!


 男がさっきまで立っていた場所。


 そこへ、一本の白杖がゆっくりと虚空から突き出される。


 まるで暖簾を持ち上げるみたいに、周囲の空間そのものを静かにかき分けながら。


 そして――


 空間の裂け目から、白杖を手にした老人がゆっくりと姿を現した。


「会長……!?」


 金髪の女が、慌てて姿勢を正す。


 その目には、はっきりとした敬意が浮かんでいた。


 老人の背後には、鎧姿の警官が一人。


 さらに、外側に魔法ローブを羽織り、その下に警察制服を着た若い警官が二人いた。


 三人は私の前へ立ち塞がり、安心しろというように軽く手を上げる。


「間に合ってよかった。ほんとギリギリだったな」


 青野はスマホを下ろし、鎧姿の警官へ向かって手を振った。


 私は困惑したまま青野を見る。


「……この人たち、誰……?」


「道で堂々と強盗してる連中いたら普通は通報するでしょ!? まさか本気で私がお前を置いて逃げたとか思ってたの!? 私そんな薄情に見える!?」


「……うーん……ちょっと見える……」


「……」


「ジジイ!? あんた、俺を殺す気か!?」


 赤髪の筋肉男が、老人を見ながら青ざめた声を上げる。


 老人は白い眉と髭を蓄え、垂れた瞼がほとんど目を覆い隠していた。


 手には白杖。


 反対の手には、盲導犬のリード。


 どこへ放り込んでも目立たなさそうな、ただの老人にしか見えない。


 なのに――


 赤髪男は、全身から冷や汗を噴き出していた。


「……なんで“会長”って呼ばれてるの?」


 私は小声で青野へ尋ねる。


「はぁ!? お前、冒険者協会の会長も知らないの!? アメリカ大統領知らなくても、この人くらいは知ってるでしょ普通!?」


「だって教科書に載ってないし……」


「いやそれより、ただ通報しただけでなんでこんなラスボスみたいなの出てくるの!?」


 確かに。


 冒険者協会の会長って、そんな暇なの……?


 私はこっそり老人の背中を見る。


 すると――


 老人の盲導犬も、じーっと私を見ていた。


 大きなゴールデンレトリバー。


 ……かわいい!


 なんか笑ってる気がする!


 一瞬で、胸の奥がふわっと軽くなった。


 なんだか、ふっと癒やされた気分になる。


 そのとき。


 老人が白杖を、どんっ、と地面へ叩きつけた。


「配信中の少女を公然と脅迫し……


 その上、危害まで加えようとしたか。


 ラオ。お前、最近ますます度が過ぎておるな」


 赤髪の筋肉男――ラオは、頭をぼりぼり掻く。


「……別に脅かしただけだろ。AI端末ぶっ壊したなら、代わりくらい弁償するって」


「愚か者がァッ!!!」


 轟音のような怒声が炸裂した。


 その瞬間。


 目に見えない衝撃波が爆発し、ラオの体が吹き飛ぶ!


 何本もの木をへし折りながら、森の奥へ叩き込まれた。


「この件は、ここまでにしておけ」


 老人は静かに言う。


「真司。その娘はお前が連れていけ。お前にも用件があるのだろう」


「はい、会長殿」


 鎧姿の警官のおじさん――真司さんは深く一礼すると、こちらへ歩いてきた。


「おいおいおい! なんでだよ!? ただのG級ガキだろ!? なんで会長自ら庇う必要があるんだよ!?」


 瓦礫の中から這い出してきたラオが、血を拭いながら不満げに叫ぶ。


 老人はわずかに顔を向け、冷ややかに笑った。


「わしが来なければ……


 明日には地球のSSS級冒険者は五人になっていたところじゃ」


「……は?」


「まさか……」


 金髪の女の瞳が激しく揺れる。


 遠ざかっていく少女の背中を見た瞬間、全身が汗でびっしょりになった。


「そ、そんな……ありえない……!」


「ラオ」


 老人は静かに告げる。


「その娘の怒りが収まったら、きちんと謝罪へ行け」


「はぁ!? 俺が!? こんなG級の雑魚に!? ジジイ、頭おかしくなったのか!?」


「冒険者協会内での私闘は禁止だ。従わぬなら……協会から失せろ」


「……ッ」


 ◇


「“脅威度はカピバラ以下”か。修一、お前あとで始末書を書け」


 帰り道。


 鎧警官のおじさんが、急に冷たい声で言った。


「……はい」


 魔法ローブ姿の男性警官が、しょんぼり肩を落とす。


「?」


 私と青野は三人の警官の後ろを歩きながら、何の話なのか全然分かっていなかった。


 鎧警官のおじさんは振り返ると、兜を外した。


 現れたのは、あの見慣れた社畜っぽい疲れ顔。


「申し訳ありません、顧問。少し到着が遅れました」


 私は慌てて両手を振る。


「い、いえ! 本当に助かりました! あのままだったら、私ほんとどうしていいか分からなくて……」


「それが警察の仕事ですから」


 そう言ってから、彼はふと思い出したように口を開く。


「そういえば……まだ配信、つけたままですよね?」


「え? はい、そうですけど……」


「でしたら、そのままでお願いします。ちょうど広報にも使えますので」


 話しているうちに、私たちは旅館の前へ戻ってきていた。


 鎧警官のおじさんの表情は、少し真面目だった。


 どうやら大事な話らしい。


「新しいダンジョンが開きました」


「……?」


 それ、G級の私に関係ある話……?


 新ダンジョンの調査とか攻略って、普通S級冒険者の仕事じゃないの?


 彼は軽く息を吸い込み、事務的な口調で告げる。


「明日の飯テロ配信なんですが――


 彼岸花を食べてみませんか?」


「……は?」


「それと、可能であれば三途川の水も。


 あと、できれば三途川で釣りもしてみてください」


「?????」


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― 新着の感想 ―
あの世一歩手前ダンジョンwww 企画案 ·毒物図鑑作成 ·闇きのこ錬金鍋(闇鍋、魔女鍋、シチュー、カレー) ·ペロッ…これは猛毒!犯人はお前だ! ·腐海の森サバイバル ·A5ランク熟成肉のトリミングさ…
おじいちゃん(会長)ヤバそうなぐらい強そう。頼んできたダンジョンは特殊なタイプっぽそう。配信チェックしてイケそうって判断したんだろうし。 猛毒の骨をカルシウム取れるって思って齧ってら面白い
確実に1人減ったのかぁ…やろうとしたことはパルプンテ級だったのかな 毒の定番でキノコやクラゲ等を
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