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私のスキルは【毒反転】。なので、劇毒しか食べない配信やってます  作者: 狐白
第一巻

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13/66

第13話

 私が夢を言い終えた、その瞬間。


 周囲は、まるで死んだみたいに静まり返った。


 そして——次の瞬間、空を突き破るような大爆笑。


 ……うん、完全に予想通りの反応だよね〜。


 だって、周りの同級生たちが冒険の話で盛り上がってるとき、私の頭の中にあるのは「今日の食事で人間の最低栄養摂取基準をどう満たすか」だし。


 みんなが恋愛を楽しんでるとき、私が考えてるのは「インフルエンザの季節にどう対策するか、もし感染したらどうやって一人で生き延びて回復するか」だし。


 誕生日パーティーで盛り上がってるときは、「どこの店なら誕生日特典で無料でもらえるか」調べてるし。


 ……だから、夢って言われても。


 私、たぶんちょっとズレてるんだと思う。


 でも。


 一人でここまで生きてきたんだから、私、めちゃくちゃ偉いよね!


「とにかく、最も正直な夢を言えって言われたので……これが、私の夢です」


 私はマイクを次の人に渡して、表情を崩さないまま、すっとその場を離れた。


 そしてそのまま、遠くの魔物の森まで歩いていって——


 ようやく。


 完全に表情が崩壊した。


 胸を押さえて、息を荒くする。


「うわああああ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!」


 笑われるに決まってるでしょこんなの!!


 あの引率の先生にしつこく突っ込まれて、うっかり本音が漏れた。


 まだ自分のクラスじゃなかったのが救いだよ……


 知り合いに聞かれてたら普通に死ぬ……!


[wwwwwwwwww]

[これは草]


 コメント欄も大爆笑。


[青春してない夢すぎる]

[高校生にしては現実的すぎるだろ!]

[もっとこう……壮大な目標とかないの!? 何かを倒すとか、頂点に立つとかさ!! この年齢はそういうのが青春だろ!?]


「ないです。全くないです」


 私は真顔で答えながら、深呼吸して心臓を落ち着かせる。


 そのとき。


 カラフルな名前に、公式認証マークがついたユーザーがコメントを送ってきた。


[非公開ID-S級冒険者:みんな笑うな。俺は50歳になって、ようやく「健康」がどれだけ大事か分かった。S級冒険者になったところでどうなる? 今の俺は、ただ健康な身体が欲しいだけだ]


[えっ!?公式認証のS級冒険者!?]

[同じ配信見てるの!?!?]


[非公開ID-S級錬金術師:私も同じ。三年間ずっと薬を作り続けたせいで、薬剤毒性が蓄積してね。肝臓がもう限界よ]


[え!?S級錬金術師も!?この国に三人しかいないやつ!?]

[ちょっと待ってこの配信どうなってんの!?]


[非公開ID-S級冒険者:今のすべてを捨てても健康が欲しい。でもな……もう一度やり直せたとしても、たぶん同じ選択をすると思う。それが青春だからな]


[非公開ID-S級錬金術師:ええ、私もそう思うわ]


[非公開ID-S級冒険者:だから少女よ。生きるためだけじゃなくて、遠い目標も持っていい。その過程だって、きっと楽しいものだ]


「遠い……目標?」


「うーん……」


 私は少し考えて——


 ポチに視線を向けた。


「ポチに嗅覚モジュールをつける!」


[???]

[それは確かに遠いな……]


 コメント欄から、なんかこう……ぐったりした空気が漂ってきた気がする。


[南無……]


「なんでまだ除霊されてるの!?」


 ◇


 私はG172の昼夜境界帯に立っていた。


 目の前には星空。


 背後には太陽。


 女剣士さんが、ふうと小さくため息をつく。


「まだ見つからないの?」


「うん……でも、見つかったところであんまり意味ないかも。そもそも私、申し込んでないし。クラスの行動予定にも入ってないから」


「同級生に会えたら、少しは嬉しいのかと思ってた」


「たぶん、そうでもないかな……別に、親しい人とかいないし」


 私は空を見上げた。


 気持ちよさそうに、すうっと目を細める。


[きれい……]


[これがG172ダンジョンか……。“光と闇の境界”って二つ名、めちゃくちゃしっくりくるな]


 ポチのカメラが全景モードへ切り替わる。


 くっきりと分かたれた、光と闇。


 そしてその狭間には、両者が永遠にせめぎ合う境界線が横たわっていた。


 恒星の重力によって、星全体の海は西半球へと固定されている。


 けれど、恒星に近すぎるせいで西半球はあまりにも灼熱で、海水は絶えず蒸発し、また降り、蒸発し、また降りを繰り返していた。


 そのため西半球の空は、いつも分厚い雷雲に覆われている。


 反対側は、まるで死の領域。


 冷たく、乾ききっていて、永遠の静寂だけが支配している。


 その中間地帯だけが、かろうじて生命に適した温度を保っていた。


 だからこの星では、あらゆる生命がその中間帯へと集まり、


 東西半球の境界に沿って、星をぐるりと一周する「生命の環」を形づくっている。


 紫色の森はその環に沿うように帯状に広がり、


 魔物たちはその中で息づいている。


 もし宇宙からこの星を見下ろしたら、


 きっと息を呑むほど壮観なんだろう。


[G172って最近解放された新ダンジョンだよな。まだ行ったことなかったから、こんな綺麗な景色を見せてくれて助かる]


[G172は白鳥座主星群にあるって聞いた。私たちの太陽系から60光年くらいしか離れてないらしい。見上げれば、こっち側の太陽も見えるんだよな。ただの星にしか見えないけど]


[同じく白鳥座主星群にあるE133ダンジョンもめちゃくちゃ綺麗だぞ。でも、あっちは空気そのものが猛毒だから、人類は奥まで全然入れない]


[いや他のダンジョンの話はひとまず置いとけって。気づいたか? G172の植物、全部同じ方向に傾いてるぞ!]


「ほんとだ。全部斜めになってる。木まで傾いてるね」


 私も、そこはずっと気になっていた。


[非公開ID-S級錬金術師:この現象のうち、七割は光の影響ね。向日葵が太陽の方を向くのと同じ。この星では太陽が常に西側にあるから、植物はすべて西側からエネルギーを受け取る必要があるの]


[非公開ID-S級錬金術師:残りの三割は暴風のせい。地表の風は東半球から西半球へ向かって吹き続けているから、植物は西側へ倒れ込むような形になるわ]


[待って、俺いま配信見て楽しもうとしてたんだけど、なんで急に授業始まってんの!?]


[話題変えてくれ!! 頭がパンクしそう!!]


[腹減った!! 配信者の飯が見たい!!]


「そういえば、たしかにお腹空いてきたかも……」


 少し離れたところでは、引率の先生が生徒たちに森の植物について説明していた。


「この手の色鮮やかなキノコは絶対に食べるな! 特にこういう赤いものは猛毒だ!」


「見た目も匂いも魅力的だが、ほんの少しでも舐めれば命を落としかねない!」


「絶対に、絶対に触るなよ!」


 ところが先生は、話しながら生徒たちの表情がおかしいことに気づく。


 全員、妙に引きつった顔で、


 先生の背後をまっすぐ見つめていた。


 ぎゅっ……ぎゅっ……


「……?」


 なんで後ろから、何かを噛む音がするんだ?


 ぎゅっ……ぎゅっ……


 先生が勢いよく振り返る。


「……ん?」


 私はぽかんとしながら、口の中のキノコを飲み込んだ。


「あれ? みんな食べないんじゃなかったの?」

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― 新着の感想 ―
性別不明な感じ、女性だと思って読んでたんだけど
ダンジョン出来てたった3年でS級だの何だのあるのか。
「触るなよっ!絶対に、触るなよっ!」 これはフリですか?
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