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Anpomo tape  作者: Nuo
4/5

silence

話し合った結果、バルブボディを交換することにした。


半々の確率で直ると言われた。


まるで人間の治療みたいだ。


直っても、直らなくても、

十二万円は私が払う。


高い出費だ。


一週間後に連絡が来るらしい。


ディーラーの人は、

CVTを丸ごと載せ替えるか、

乗り換えた方がいいと言っていた。


半々の賭けに十二万使うのは、

正直どうなのか。


そんな感じで、

とても親身になって考えてくれていた。


そこから、私たちは必然的に

親の伝手で近くの祖父を頼ることになった。


普通なら当然その考えになるのだが、私にとっては大事だった。


私は祖父と、ほぼ絶縁していた。


いや、これは一方的なものかもしれない。


高校までは、

よく可愛がってもらっていた。


しかし大学受験がうまくいかず、

結局入った大学も辞めてしまった。


それ以降、徐々に顔を合わせなくなった。


社会人として普通の道を歩んでほしかった祖父にとって

今の私は、あまりにも乖離していた。


故に、見せる顔がなかった。


しかし、名古屋で孤立した私たちに頼れる人は祖父しかいなかった。


もちろん、

私が直接助けを求めたわけではない。


親と相談して、

そういう形になった。


「これからどうするの? 予約した宿とか。」


「私の祖父が来てくれるらしい。」


「気まずいなぁ。」


少し間があく。


「とりあえず、みかん散歩させてくる。」


そう言って瑠璃はみかんを迎えに行く。


しばらくして窓を見ると、

瑠璃がみかんに散歩させられている。


そうこうしているうちに、ディーラーに

祖父が来た。


暫くディーラーの方の話を聞いて、


終わったあと祖父が私に言う。


「あんな車はやめて、

おじいちゃんがお金出してあげるから。

新しい車を買いなさい。」


久しぶりに会った祖父の、

第一声だった。


私は吐きそうになった。


父も、今回は祖父の考えに賛成だった。


極めて合理的だ。


二十一万キロ走っていて、

車はただの機械で。


私にはまだ、

愛が残っていて。


でも私は、

吐きそうだった。


理由は自明だろう。


私たちは血縁なのに、

なぜここまで思考が乖離してしまうのだろうか。


学歴の違いか。


もしかしたら、

私は何かの精神疾患か、

障害でもあるのかもしれない。


最近、ふとそう思うことがあった。


そして今、

それが少し現実味を帯びる。


「とりあえず、私の車を使いなさい。」


私と瑠璃はお礼を言って、乗せてもらうことにした。





「良かったね。京都行けることになって。」


「そうだね。」


迎えに来てくれた祖父を家に送る前、

私たちは一緒にご飯を食べる事になった。


「旅行はいいよな。私も色んな所に行ったぞ。

京都のどこに行くつもりだったんだ。」


「特に決まってないです。」


「宿は?」


「京都御所の近くです。」


そんな世間話をしていた。


そして祖父が言った。


「いいか。何でもやってみるんだぞ。

行動しなきゃ、何も分からんからな。」


九十近いのに、祖父は元気だった。


でも、その言葉は

遺言になってもおかしくない重さがあった。


私は行動していたつもりだった。


その一つが旅行だった。


いろんな土地を見て、

知見も広がった。


ただ、祖父の言う「行動」とは

少しベクトルの違うものだったのかもしれない。


祖父は金持ちで、私は貧乏だ。


いつもならドリンクバーなんて頼まず、

水だけで済ませるか、祖父がドリンクバーにしてくれたので、

私はオレンジジュースを両手で飲みながら、静かに彼の話を聞いていた。


しばらくして、

私たちは京都へ向かう。


瑠璃の膝の上には、みかん。


私はアクセルを踏んで車を出す。


でも、そこにいつもの感覚はなかった。

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