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Anpomo tape  作者: Nuo
3/5

Coma

しばらくして、琵琶湖側から京都に入ろうかと考えた。


あまりそっち側を通ったことがなかったからだ。


そして、もうすぐ事故渋滞らしい。


とりあえず、飛島インターで降りる。


「これ、とびしまって言うんだね。飛鳥かと思ってたわ。」


そう言って左を見る。


2人とも寝ていた。


片方は首が心配になるぐらい曲がっていて、もう片方は膝の上で丸まっている。


とりあえず、この独り言はなかったことにして、

そのまま飛島を降りてバイパスへ向かった。


順調に進んでいた。


赤信号に差し掛かり、車を止める。


青に変わり、アクセルを踏む。


その瞬間、確実に違和感があった。


エンジンの回転数だけが上がり、速度が出ない。


もう一度踏む。


回転だけ上がる。


車は、少ししか進まない。


そのとき、わかった。


──────ベルトが滑っている?


運よく、左にガソリンスタンドが見え、私はそこに車を入れることにした。


するとガススタの中央で、車は動かなくなった。


「どうしたの? 動かないの?」


「うん。壊れた。」


私たちは車を押すことにした。


私はこの車に関する知識を得るのが好きだった。

構造も半分くらいは理解しているつもりだった。


だから、きっと分かっていた。


死んだことを。


でも、知りたくなかった。


私はスマホを取り出して調べた。


知っているのに。


もう分かっているのに。


それでも、車の中で調べ続けた。


ただ、CVTの中のバルブボディ。

あれが油圧を作れていないだけなら、

ベルトを挟み込めず、

動力が伝わらない可能性も、まだある。


私はそう思うことにした。


そう思いたかった。


だから、


「これ、CVTのバルブボディが壊れたのかもね。

まだ直せるわ。」


平気を装って瑠璃に言った。


「そうなんだ。」


寝起きなのか、

状況が飲み込めていないのか。


瑠璃は、いつもの調子でそこにいた。


とりあえず、JAFを呼んでレッカーしてもらうことにした。




しばらくしてJAFの人が到着し、診断機をつなぐ。


「CVT異常って出てますね。」


「近くのディーラーまでレッカーしますね。」


二件目で、ようやく受け入れてくれるところが見つかったらしい。


私たちはレッカー車に乗り、ディーラーへ向かった。




レッカー車の中、瑠璃はなぜか楽しそうだった。


多分、レッカー車に乗れることにワクワクしている。


そしてJAFの人と駄弁っている。


「京都に行く途中だったんですよ。」

「これで金沢とか新潟とか京都とか行ったんですよ!

しかも何回も!」

「洗車とかもして、めっちゃ綺麗にしてたんですよ。ね!」


「そうだね。」


すごい饒舌だ。


JAFの人も、ちゃんと会話に付き合ってくれていた。


優しい人だ。




しばらくして、ディーラーに着く。


話を聞いてくれた整備士の胸には、一級整備士のバッジ。


知識量なんて、きっと私は足元にも及ばないだろう。


そして、たぶんこの人が受け入れを許可してくれたのだと思う。


私はいろいろ質問する。


「やっぱりベルトが滑ってるんですかね。」

「バルブボディだけじゃダメですか。」

「CVTFとか、定期的に交換してて……。」


そう言いながら、

自分で作った整備記録の紙を渡す。


そのときの記憶は、あまり残っていない。


もう治らないのだろうか。

という考えが、頭の大半を占めていた。


ただ、話していくうちに


「おぉ。これは結構大事にしてたんですね。

じゃあ、このままという訳にはいかないか。」


笑いながらそう言っていた。


私にとって、この言葉が頭にこびりついて離れなかった。


どれ程、この言葉に救われただろうか。


どれ程、この言葉を望んだだろうか。


誰も、私の車のメンテナンスなんて興味を示さない中で、

最後にこの人だけが理解してくれた。


それが、たまらなく嬉しかった。


涙が出るほど嬉しかった。


でも泣いてはいけない。


私は平静を保ったふりをしていた。

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