朝練とクラス代表
ラゴゥバルサ国が滅び、近くの国の残党狩り、同盟の話を持ち掛けるようにローケンス達に頼んだ大成。
大成はニラミス国と同盟を組み、ユピアは大成の専属のメイドを懇願し、了承した。
【ラーバス国・屋敷の外】
早朝、日が昇る前。
「ハァハァ、お兄ちゃん…。もう無理だよ」
「ハァハァ、修羅様…。ユピアもです」
エターヌとユピアは息を切らせていた。
大成、エターヌ、ユピアの3人は屋敷の周りを走っていた。
「どうした?まだ走るぞ。体力が1番大切だ」
先頭を走っている大成は、走りながら後ろを振り向き、後ろにいるエターヌとユピアに声をかける。
近くでは、ジャンヌとウルミラ、マキネとイシリアが1対1の手合わせをしていた。
なぜ、こうなっているかというと…。
【ナイディカ村】
ユピアを連れて、ニラミス国を出国した大成達は、エターヌの村ナイディカ村に寄り、ラゴゥバルサの件を報告することにした。
「あっ、お兄ちゃん。お帰り。お久しぶり」
村の入口の近くで、大成達は薪を運んでいるエターヌに遭遇した。
エターヌは薪を地面に置き、大成の傍に駆け寄り抱きついた。
「ただいま、エターヌ。おばさんは何処に居るか知ってる?」
エターヌの頭を撫でながら大成は尋ねた。
「家にいるよ。それより、その子誰?」
ジーっと初めて見るユピアをエターヌは見た。
「ああ。まずは自己紹介しないとな。この子は、遥々ニラミス国から来たユピアだ。僕の専属メイドになりたいということで、これからは一緒にラーバスの屋敷に仕えるんだ。仲良くして欲しい」
大成は、苦笑いしながら説明した。
「ふ~ん。エターヌはエターヌだよ。ヨロシク、ユピアちゃん」
「ユピアはユピアです。ヨロシク、エターヌちゃん」
(何だ?魔力とは違う、この威圧感…)
2人は握手して友好的に見えるが、なぜか2人の背後に龍と虎が見えている気がした大成。
大成達は、エターヌの話を聞きながら、おばさんの家に向かった。
【ナイディカ村・おばさんの家】
大成はノックをした。
「大成だけど。おばさん居る?」
ドアが開いた。
「おや、大成君。大丈夫だったかい。ラーバスに行った時、ラゴゥバルサに乗り込みに行ったと聞いて心配していたんだよ」
大成が魔王となっても、おばさんは接し方が変わらないので接しやすく、大成にとっては嬉しかった。
「見ての通りだよ。あと、そのラゴゥバルサのこと、なんだけど…」
「ここで話すのも、なんだから中に入りな」
「わかった。ありがとう、おばさん。お邪魔します」
「「お邪魔します」」
大成の後を追って、中に入るジャンヌ達。
リビングに案内し、おばさんはお茶を出した。
「はいよ。それで、話しとはなんだね」
「ありがとう、おばさん。ラゴゥバルサのことなんだけど。昨日、ラゴゥバルサは滅んだよ」
大成はお茶を啜りながら説明した。
「大成君。間違っているわよ。正確には、滅んだじゃなく滅ぼしたでしょう。大成君1人で」
大成の後ろにいた、イシリアが訂正した。
「確かにイシリアの言う通りだね」
「そうね」
「ですね」
マキネ、ジャンヌ、ウルミラも工程した。
「アハハハ…」
苦笑いする大成。
「フフフ…。そうだと私も思ったよ」
おばさんは、口元に手を当て笑った。
それから、今までの経緯など、お互いに話し会話が弾んだ。
「あっ、そうだ!ジャンヌ。相談したいことがあるんだけど」
「何?」
「ユピアも学園に通わせても良いかな?」
「良いわよ。でも…」
「でも?」
ジャンヌは戸惑ったので、大成は意味がわからず首を傾げた。
「あのですね。ラーバス学園は、実力主義の学園なのです。大成さんなら問題なかったのですが、正直に言いますと…。言いにくいのですが、ユピアちゃんの実力だと入学が出来ないと思います。ラーバス学園でない、他の学園なら大丈夫ですが…」
ウルミラは、複雑な顔をした。
「う~ん、仕方ないか。なら、普通の学園に通ってみる?ユピア」
「いや!修羅様と同じ学園に行きたい。修羅様、ユピアを鍛えて強くして欲しいです」
懇願したユピア。
「良いけど、キツイよ。それでも訓練する?ユピア」
「します!」
ユピアの顔を見たら強い意思を持っているのが、大成に伝わった。
「わかったよ。なら、明日の朝から始めるとするか」
「はい」
笑顔で頷くユピア。
その時、近くにいたエターヌが何か言いたそうな雰囲気を醸し出していた。
「どうした?エターヌ」
聞いてみることにした大成。
「お兄ちゃん、エターヌも訓練に参加する」
「「え!?」」
エターヌの発言に皆は驚いた。
「エターヌも、お兄ちゃんと同じ学園に行きたいの」
「おばさん、ジャンヌ…」
大成は2人の意見を聞こうとした。
「エターヌの分の学費は大丈夫よ。ただ…」
先に答えたのはジャンヌだった。
ジャンヌは、おばさんの方に視線を向けた。
「エターヌの好きにしなさい。私は止めないよ。あなたの人生だもの」
おばさんは、両手をエターヌの両肩に置いて頷く。
「ありがとう。おばさん、お兄ちゃん、お姉ちゃん」
エターヌは涙目になり、おばさんに抱きついた。
時々、村に帰る約束をし決定した。
「なら、私も朝練に参加するわ」
ジャンヌが言い出した。
「そうですね。私も参加させて下さい。大成さん」
「私も参加するよ」
「わ、私も」
ウルミラ、マキネ、イシリアも次々と参加を希望した。
「別に良いけど。朝4時から朝練をするから参加は自由で。参加するのもしないのも各々で決めてくれ」
「「わかったわ!」」
「わかりました!」
「わかったよ!」
「「うん!」」
ジャンヌ達は頷いた。
そういうことで、ユピア、エターヌ、マキネは屋敷に移住し、ジャンヌ達も大成と一緒に朝練をしているのだ。
マキネは、勉強は嫌いなので学園には興味がなかった。
「エターヌ、ユピア。僕が学園に行っている間は、このスケジュールをこなす様に」
大成は1枚ずつメモを2人に渡した。
「「えっ!?」」
メモを受け取った2人はメモを見た瞬間、ハードな内容に驚いた。
「訓練の途中でエターヌは村の手伝い、ユピアはメイドの見習いがあるから、テキパキとこなす様に」
大成は、2人の頭を撫で屋敷に戻った。
「じゃあ、頑張れ2人とも。学園に行ってくる」
「「行ってきます」」
「「いってらしゃい!」」
マキネは大成から渡された本を読みながら練習をし、エターヌとユピアは大成から渡されたメモに書かれてある体力強化メニューを必死にこなした。
練習をサボるのは、大成を裏切ることで絶対嫌だった。
エターヌとユピアは誤魔化さず、一生懸命にスケジュールを励む。
【ラーバス学園・教室】
大成達は学園の教室に着いた。
「おい!そろいえば、今日からクラスマッチの練習が始まるな」
「そうだな」
「日が経つの早いな」
廊下から男子達の声が聞こえてきた。
「「おはようございます」」
「「おはよう」」
「おはようございます」
お互いに挨拶し、男子達は教室に入った。
「さっき、廊下でクラスマッチとか聞こえたけど、クラスマッチって何?」
気になった大成は首を傾げながら尋ねた。
「クラスマッチは、クラスで代表者を数人決めて、クラス対クラスで競技するイベントです。勿論、成績に関係します」
隣にいるウルミラが答えた。
「へぇ~。どんな競技?」
興味が湧いた大成。
「色々あるわよ。男子と女子別々の競技、共闘、個人戦、団体戦など。魔法カードバトル、サバイバル、射的、バルーン、ペア戦などあるわ」
イシリアが指を立て、左右に振りながら説明をした。
盛り上がっているところで、教室のドアが開いた。
「お前ら席につけ」
マミューラが出席簿を手で叩きながら、教室に入ってきた。
「今日からクラスマッチの練習が始まる。出る種目はお前達が勝手に決めろ!司会は…。そうだなイシリア。お前に任せるぞ!」
マミューラは辺りを見渡し、イシリアに決めた。
「わかりました」
イシリアは、了承して席を立ち教壇に向かった。
マミューラからメモを貰い、黒板に種目と人数を書いていく。
今年は、魔法カードバトル、サバイバル、射的、バルーン、ペア戦だった。
黒板をよく見たら疑問になった大成。
「あれ?何で魔法カードバトルとバルーンに丸されているんだ?」
「それはね。私、ウルミラ、イシリア、マーケンが出れる種目よ。私達が強過ぎて他は出れないの」
「そうです」
答えるジャンヌ、ウルミラは少し残念な顔をした。
「そうなんだ…。ってか、僕は大丈夫なん?」
大成も落ち込んでいたが、フッと自分もアウトなのではと思った。
「大和は、そもそも魔力値2だから関係ねぇよ。だから、安心して好きなのを選びな。最大2種目まで出れるからな」
近くの席のマーケンスが答えた。
「そ、そうか、ありがとう。マーケンス」
マーケンスにお礼を言ったが、内心は出ない方が良いなと思った。
「サバイバル、ペア戦には大成君に出て貰いたいけど」
大成の気も知らず、イシリアは推薦した。
「いや、僕よりも出たい人を優先にして欲しいけど…」
もし出た場合、魔力値2で抑えて戦うが、せっかくの祭みたいなイベントなので大成は心が痛んだ。
「それは、良いな。なぁ皆!」
「「だな!」」
「「うん!」」
マーケンスがクラスの皆に呼び掛け、皆が賛同し決まった。
結局、魔法カードバトル(男女)男女3人ずつ。
男子はマーケンスと他2人。
女子はジャンヌ、ウルミラ、イシリア。
バルーン(女子)
2組ジャンヌ、ウルミラ組、イシリアとルネル組。
男子ペア戦(男女混合)2組
男子・大成と女子・ルネル。
男子・マルチスと女子・ユニ。
サバイバル(男子)10人
大成、マルチス、他8人。
射的(混合)2人ずつ
男女2人ずつ決まり、全てが無事に決まった。
決まるまでの間、マミューラは寝ていた。
「マミューラ先生。決まりました」
「ふぁ~。ああ、そうか。頑張れよ、お前達」
イシリアに起こされたマミューラは、欠伸をしながら起きた。
選手が決まり休憩時間になった。
「ん?ところで、マルチスって誰?」
大成はフッと思い、首を傾げた。
「そうでしたね。マルチスさんは魔王を決める大会が終わった日に、メモ紙を拾たみたいなんです。そのメモに技が書かれていたみたいで、試したら全身軽い火傷負い入院してます。明日か明後日には退院するみたいです」
ウルミラは、苦笑いしながら説明をした。
「確かその技名が、ファイア・ダイブ・アタックだったか?」
「違うわよ。ダイブ・ファイア・アタックだったわよ」
マーケンスが言い、イシリアが訂正した。
その技名を聞いた大成は動揺した。
「確か、大きなファイア・ボールを先に放って、そこに身体強化した術者が突っ込み、炎を纏うという技だったよな」
「そうそう。放ったファイア・ボールが、あまりにも速く飛んでしまい、マルチスは慌てて身体強化して突っ込んだから、強化の強さが足らず全身軽い火傷して病院送りになったんだよ」
「こんな、馬鹿なことをする奴もする奴だが、考える奴も相当の馬鹿だな。考えた奴の顔が見たいな」
「それは言えてる。アハハハ…」
クラスの皆が意見を述べ、笑っていた。
「大成、あなた気になったの?確か、マーケンス。あなた、マルチスが運ばれている時、そのメモ紙を渡させたでしょう?今、持っているの?」
「は、はい!ここにあります!」
ジャンヌから話しかけられ、元気よく返事をしたマーケンス。
マーケンスは、ズボンのポケットからメモ紙を取り出して、大成の傍に歩み寄る。
「ほら、大和。これが、そのメモ紙だ」
マーケンスは大成にメモ紙を渡した。
ジャンヌの時と大成の時のテンションが、あまりにも違ったマーケンス。
大成は、折り畳まれたメモ紙を開いて見た。
「~っ!!」
大成は見覚えがあった。
いや、これは…。
「この字、何処かで見たことがあるような…」
大成が驚いている時、大成の横からイシリアがメモ紙を覗いた。
「あっ、これって、大成君の字よ。ほら、ここの字、同じ間違いをしているわ」
思い出して、大成からメモ紙を取り上げ、大成のノートを取り出して比べるイシリア。
「う、うん。これは僕が書いたメモ紙だよ。面白いアイディアだったから、忘れないようにと思ってメモに書き留めたんだ…。その時、ズボンのポケットに入れていたんどけど。いつの間にかポケットから落ちて無くなっていたんだ」
大成は、気まずくなった。
なぜなら、少し前に友達が、考えた奴の顔が見たいと言って、皆で賛同したばかりだったからだ。
その張本人が目の前に居た。
「「………。」」
教室は静まり返り、かなり気まずい空気が流れた。
次回、クラスマッチです。




