表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
90/235

運命の日①

 とうとう演説当日を迎えた。


 アルフォードは、緊張のあまり、一睡もできなかった。

 原稿もこれでもかというくらい、何度も何度も声に出し練習したし、立ち振る舞いもイリヤたちに見てもらった。


 自分にできる準備はすべてやった……

 あとは、ちゃんと皆の前に出て行うのみ……



 本番の自分の姿を想像すると、始まってもいないのに、手に汗がにじみ気持ち悪くなる。

 

(本当に、皆の前に出てちゃんとやれるだろうか?)


 鏡に映る自分の姿を見つめる。

 こんなに緊張するのは初めてだ。

 そして、五年ぶりに民衆の前に立つことになる。



「殿下、お目覚めになられてますか?」


 ノックと共に、イリヤが扉外から声をかけてきた。

 

「ああ。起きてる」

「昨夜は眠れま……眠れるはずありませんよね……」


 イリヤは軽食と共に部屋に入っていきて、アルフォードの顔を見るなり言葉を詰まらせた。

 目の下には大きいくまが出来ている。

 誰が見ても、体調は良くなさそうに見えた。

 

「殿下……大丈夫ですか……? 今、医者を呼びましょうか?」


 イリヤはかなり心配になった。

 こんなげっそりしている彼を見るのは初めて。

 

 アルフォードは、医者を呼ぼうとする彼を制し、準備されたお茶へ手を伸ばした。


「大丈夫じゃないが、大丈夫だ。体調が悪いなんて言っていられないだろう。何か状況に変わりはないか?」

「はい。特に城外に怪しいものはいないようです」


 カップを机に置き、一呼吸おいて、一番気になることをイリヤに尋ねる。


「リナは……どうだ? 目を覚ましたか?」


 真剣に見つめてくる王子に、イリヤは本当のことを述べていいか戸惑う。

 演説まであと数時間。

 彼には『自信』が必要だ。


「リナ様は、峠は越えたようですよ。だから、殿下は集中してください」


 青い澄んだ瞳はイリヤをじっと見つめる。

 そして、彼から視線をそらして、「そうか……よかった」と小さな声を漏らした。


 

 何がたとえ起きても、これだけはやり遂げないといけない。

 迷っている場合ではない。



 アルフォードは、歯を食いしばり原稿を握りしめた。



         


                  ******



 昨日の作戦のスケジュール通り、警備隊や、設営も着々と進められていた。 



「いいか、お前たち、殿下の寛大な御心のおかげで、牢獄から解放されたのだ。そのことを忘れるでないぞ! そして、必ず殿下の演説を聞きに来るように!」


 騎士団隊長のジャックが、解放した民衆たちに叫ぶ。

 民衆たちは、久しぶりに浴びる太陽に手を伸ばし伸びをしていた。

 緊張感もなく、あるのは解放感だけ。


「おい! お前たち聞いているのか!?」

「聞いてるよ。演説を聞きにこりゃいいんだろう? だいたい、今更、皆の前に出て、何を話すというんだ? 話をしたって俺らは簡単に、あんたらのことを許すつもりはない!」


 そうだ! と民衆が声を張り上げ、ジャックらを睨みつける。

 彼らが危害を加えないよう、副隊長のカールや他の兵士が急いで、民衆を制した。


「それは、話を聞いてから決めてくれ! とにかく、皆呼んでくるのがお前たちの使命だから頼むぞ!」

「もし、演説に来なかったらどうするんだよ?」

「…………」


 質問にジャックは言葉を失った。

 それは、完全に盲点だ。

 

 確かに、演説を民衆がボイコットする可能性について誰も話していない。

 ボイコットこそ、彼らのもっとも有力な作戦ではないか?



「来ないなら私が民衆のもとに行く!」


 ジャックがすぐさま振り向くと、車椅子姿のアルフォードがいた。


「殿下?!」

「私には、ちゃんと国民に伝えないといけないことがある。だから、頼む。今日正午、この城門前の広場へ来てほしい」


 深々と民衆に頭を下げるアルフォード。


 その姿を皆はじっと見つめた。

 今までジャックに食ってかかっていた者も、何も暴言を吐くことなくただ、王子を見つめている。

 リーダー格の男が、フンと鼻を鳴らし、



「おい、みんな、行くぞ!」


 

 そう言って、捕えられていた民衆たちを引き連れ、王宮から去ってった。



 運命の時は着々と近づいている。

 

 


 




 





 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ