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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
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たった一つの願い事 

 里奈は、しゃがみ魔獣と目線を合わせる。

 魔獣はそんな里奈の側に寄って、


「お別れだよ。リナがちゃんと主になってくれてる間は、僕の存在は消える。だから、よろしくね、ミストルティンのこと」


と少し寂しげな表情を浮かべる。



「ちょっと、待ってよ! この使い方とか説明してくれるんじゃないの?! 契約させたのに放置プレイってひどくない!?」

「仕方ないじゃないか……。ボクはこの空間から出られない。契約者を探して、契約させることがボクの使命だから、それが完了すれば、存在できない理になっているんだよ。ちゃんとキミのこと見ててあげたいんだけどさ」

「そんな……でも……」

「こんなに誰かと話したのは久しぶりだ。すごく新鮮で楽しかった。ありがとう」


 

 そして、魔獣は里奈に背を向け、だんだん消えていく下の階段へと進み始める。

 

 

 昔飼っていた猫によく似ているからか、なんだか不思議な気持ちになった。

 その飼っていた猫も突然どこかへ消えてしまった。

 そして、数日後、庭の隅の木の脇で横たわっていた。


(また一人ぼっちになるんだ……)



 出会いがあるから、別れがあるのだと頭では分かっている。

 そして、自分は一刻も早くここを出て、アルフォードたちの元へ行かないといけない。



「リナ、さっきも言ったけど、ミストルティンは対価交換できみと繋がっている。だから、リナは元の世界へ戻れなくなってしまう代わりに、きみの願いは一つだけだけど、大抵なんでも叶うから! だから、何があっても諦めないで! 絶対、アムステールを再建して」


 里奈からずいぶん離れた魔獣が、下から叫んだ。



「無責任なこと言わないでよ!ちゃんと魔法使いになるか、見張っててくれるんじゃないの?」


 

 いくら待っても、下から返答はない。



「名前……ちゃんと聞けばよかった……」


 

 遠くから何かが崩れる大きな音がした。

 この空間が崩れ始めているのは本当らしい。



 そして、とうとうこの白い空間で、里奈はたった一人になった。

 手には剣になったミストルティン。

 なんでも一つだけ願いが叶う聖剣……



「私が望むたった一つの願いごと……」



 ミストルティンをギュッと両手で握りしめる。 

 これから先、きっと魔法が今よりも必要になるだろう。

 魔法がどういうものなのか、、リチェから簡単に教えてもらったが、それだけではきっと足りない。

 知識がないのが私の強みだと言ったが、知識がないから現に黒魔術にかかってしまった。


 アムステール再建するといいながら、皆の足手まといにはなりたくない。



 今まで心の中で渦巻いていたものが、一本の糸になるように、これからの自分のすべきことが理解できた。

 そして、里奈は目の前の聖剣に向かって語りかける。



「ミストルティン、私の元の世界をつなぐ道を差し出す代わりに、私の願いを叶えて」


 刃が白い優しい光を放ちだす。

 そして、その光は里奈を包み込んだ。


『ネガイヲ……ノベヨ……』


「私のたった一つの願いは――――」






 





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