表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
78/235

誘惑

「あれ……? ここって……」


 里奈が周りを見渡すと、地面はコンクリートで舗装されていて、電柱が立ち並び、車がびゅんびゅん走っている。

 見慣れた制服を来た人たちや、スーツを着た人たちが前を行き交っている。


 里奈は、ある方向に向かって走り出した。


(もしかして……私戻ってきたの!?)


 

「はぁ……はぁ……はぁ」


 目の前には、予想通り、自分の家があった。

 そして、急いで玄関の扉を開けると――


「おかえり、里奈。今日は早かったの」


 目の前には、いるはずのない人が立っている。

 信じられなくて、自分の頬をつねってみようとしたら、


「玄関に突っ立っていないで、早く入らんか!」


 と懐かしい声が返ってきたので、頬をつねろうとした手で玄関を閉めた。


(なんで、おじいちゃんがいるんだろう?)


 首を傾げつつ、居間へ向かうおじいちゃんに声をかける。


「おじいちゃん……胸……苦しくない? 大丈夫?」

「何を言っているんじゃ? わしはどこも悪くない」

「そう。ならいいんだけど」


 違和感を感じるが、そんな事どうでもいい。

 大好きなおじいちゃんにまた会えたのだから。


「おじいちゃん、今日のごはん何?」

「ギョーザだよ。早く手を洗っておいで」

「はーい」


 洗面所に行って、手を洗いながら鏡を見上げる。

 鏡にはいつもの制服姿の自分の姿が映っていた。

 

「あれ……今まで私どうしてたんだっけ……」


 蛇口をひねりながら、じっと考え込む。

 はまっていたパズルのピースが、一部無くなっていって、パズルの絵がなんだったのか分からない……そんな感覚だ。


 すると、胸にヒヤっと当たるものがあることに気づく。


「これ……」


 優しい光を放っている青い石……


 里奈は鏡をじっと見つめる。


(大切なことを忘れている気がする……でもなんだったか分からない、思い出せない)


「里奈~ギョーザ焼けたぞ~」


 おじいちゃんが呼んでいる。

 思い出しかけたことに蓋をし、台所へ向かう。




                 *******



「でね、久美子がいっつも彩花の雑巾がけ笑うんだよ。やっぱりお嬢はちがうねって言って~だから、彩花はもうやらないって言いだして、大変だったんだから」

「そうか。学校楽しそうでなによりじゃ。毎日は充実しているか?」

「うん。もうすぐ夏の大会近いから、みんな気合入ってる。今年も連覇しないとね!」

「よかった、里奈が幸せそうで」


 おじいちゃんが、目を細めじっと自分をみてくる。

 表情がいつものおじいちゃんではない。

 でも、目の前にいるのはおじいちゃん。

 

 里奈は気にせず会話を続ける。


「おじいちゃんこそ、幸せ? 私と一緒に暮らせて」

「幸せじゃよ。里奈はずっとそばにいてくれるじゃろう?」

「もちろんだよ」

「大切な人たちが待っていても? やるべきことがあったとしても?」

「おじいちゃん?」


 首からかかっている石が、熱を放っているようで熱い。

 おじいちゃんは、真剣な表情で自分を見つめる。


「わしとずっとここにいれば、何も怖くないし悲しくない。里奈、だから全て忘れるんじゃ。今まで出会った人たちのこと、自分がやったこと、起こった出来事すべて……」

「何をいってるの? 忘れるなんてできないよ。だって、すべて含めて私だって、おじいちゃん言ってたじゃない! 今まで出会った人を忘れろなんて、おじいちゃんどうしちゃったの!?」


 里奈は眉間に皺をよせ、立ち上がる。


(今までのおじいちゃんとは違う……おじいちゃんは、そんなこと言ったりしない人だ)


 胸の石が強く光出した。


『お前、ここから出たいか?』


 脳に直接知らない声が響く。

 

 


 



 


  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ