表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
73/235

リチェーヌの作戦②

「はぁ!? なんで私が魔法使いになるって話になるわけ!? 嫌だから! 絶対、人前でそんなの!」


 思わず立ち上がり、リチェに詰め寄る。

 しかし、リチェも負けてはいない。


「失礼ながら、はっきり述べさせていただきます」


(はっきり述べさせていただくって……さっきからハッキリ言ってる……)


 その場の三人は心の中で同じことを思ったが、ツッこむことをせずに、黙って彼の話を聞く。


「殿下の演説だけでは、国民を納得させるのは不可能です。あちらには、エミリアがついている。彼は、かつての国家魔法使いで、何度もデュエロへ赴いているいわば国民の戦士。エミリアに匹敵する存在を、こちらも用意していかないと、国民は話も聞いてはくれないでしょう。笑われるだけです」

「でもあの人は、肝心な時にいなかったじゃない! それをばらせばいいでしょ!」


 冷ややかに話す彼を睨みながら、里奈は反論を試みる。


「リナ様、それは逆です。肝心な時に『戻ってきた』と国民は思っているのです。彼は、今この国の唯一の魔法使いだと思われている。エミリア派はそれを利用しているに過ぎません」


「確かに、リチェーヌのいっていることは一利ある。エミリアを信じる国民の説得は厄介だ。奴をこの国の王にしようとしている一派に、ほかの国民が影響されているからな」


 アルフォードは、空になったティーカップを脇へ置きながら、リチェの話に賛同した。



 思っていた以上にエミリアという存在は厄介だ。

 昨日話してちょっといい人かも……と思った自分が情けない。

 ここにきて、また「魔法使いになれ問題」が浮上するとは……


 里奈は唇を噛み、眉間にしわを寄せた。

 そして――


「やる、やらないは別として、一応そのリチェの案を聞かせて」



 リチェから視線をそらしつつ、強気な態度で言ってみる。

 一方のリチェーヌは、じっと里奈を見つめている。



「青薔薇の魔法使い、別名ブラウエ・ローゼンと呼ばれている、黒髪の女性はこの国の……いえ、世界を救ったと言われている偉大な魔法使いです。この世界が大洪水やひどい干ばつに襲われ、水や食料を奪う為に各地で戦争を長年続けていました。彼女は、魔法で災害から土地を守り、貧困や戦争にあえいでいた民衆を一つにまとめ、世界を平和へと導いた救世主。リナ様には、その役をやっていただきます」

「は?! 無理だよ! そんなの、こないだアルフォードが私にやれって言ってきたことと、ほとんど同じじゃない! 国民を騙すなんてできない」


 バチバチとバトルするリナたちをよそに、王子は机の上で優雅に紅茶を飲んでいる。

 そして、隣のイリヤに、長引きそうだから食事はここに持ってくるよう指示する。


 一番の当事者をそっちのけで、話はどんどん進んでいる模様――


「同じではありません。あの時と違うのは、あなたは、もうすでに魔法が使える『魔法使い』だということ。そして、実際、あの火災を消し止め私と殿下を救った救世主です」

「…………。でも、ほら、私はこの国の人じゃないし……」


 リチェが急にふっと笑った。

 それは嫌味だとすぐ分かる笑いだった。


「あなたは、殿下に覚悟を決めろとか何とか言っているのに、あなた自身逃げていらっしゃる。結局、あなたこそ、口だけなのでは? そして立場が悪くなったら、自分の国に帰ればいいとか思っているのでしょう?」

「そんなこと……」


 否定しようとするが、うまく言葉が出てこない……

 何か言わなきゃ、反論しなきゃ、と思うが頭が動かない。


「おい、リチェーヌ……急にどうしたんだ?」


 いつもは、嫌味を言う立場のアルフォードが、今回はすかさず仲裁に入ってくれたが、心臓がバクバクいって彼の言葉も耳に入ってこない。

 代わりに、目に涙が溢れだした。


(だめ……ここで泣くな、里奈!)


 懸命に涙をこらえようとするが、コントロールできない。

 耐えられなくなった涙が、ぽたぽたと膝に落ちていく。


「リナ? おい……えっと……大丈夫か?」


 アルフォードが「泣いているのか?」ではなく「大丈夫か?」と聞いてくれたことに感動することもできず、里奈はすぐさま立ち上がり、扉を急いで開けた。



「おい、リナ!!」



 折れかけていた心が、音を立てて崩れていく。




 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ