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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
72/235

リチェーヌの作戦①

「この国の一部は、貴族の自治で成り立っています。自治を任せる報酬として税の一部を、彼らに委託という形で渡しているので、それをなくすのは難しいのです」


 イリヤが地図の一部を指しながら説明する。

 アムステール王国全体が描かれた地図だが、よく見ると、薄っすらと境界線のような赤い線が引かれていた。

 その線こそが『自治区』を示す線なのだろう。

 それは大きく4つに分かれている。


「でも、今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ? 国全体がピンチなのに……」

「確かにそうだが、言った途端今度は貴族らの暴動に代わるだけだ」

「確かにそうだと思うけどさ……。じゃあどうすんのよ。払えない税を取り立て続けるの? 払っても払ても自分には見返りはない税を?」


 ソファに深く体を沈めながら里奈はムッとした顔をし、アルフォードを責めたてた。

 

「そんなこと言われても仕方がないだろ!」

「仕方がないって、あんたこの国の王子でしょ! 何か考えないと、演説の意味がなくなるんだから。チャンスは一度きりなの。この人ならアムステールを任せられるって、皆に思わせないとまた同じことになっちゃうよ」

「言われなくてもわかってる!」


 にらみ合いをする二人の間に、イリヤが奇跡の一言を投げかけた。


「あの、リナ様の国ではどうしているのですか? 同じように貴族たちに報酬を与えてはいないのですか?」

「いや、日本は王政じゃないよ。国会議員を選挙で選んで、その中から内閣総理大臣を選出し政治をしてるの」

「王政ではないのか?!」

「だから、そうだっていってるでしょ。そういえば、この国って国会ってあるの??」

「あることはあるが……」


 歯切れの悪いアルフォードは、助けを求めてイリヤを見上げてる。

 まあ、あったところでまともに機能しているとはとても思えないが、一応確認の意味も込めて尋ねてみる。


「ちゃんと、国民が選挙で選んだ人で構成されているのよね?」

「構成員は全員貴族、もしくは領主たちだ。一般市民はいない」


 その言葉を聞いた瞬間、里奈は彼らに聞こえるように、わざと大きく溜息をつく。

 

「なんだ!? その大きな溜息は!!」


と吠えるように王子は言うが、どこから手をつけたらいいか、高校生の里奈にはお手上げだった。


 

(そうだ……ここはフランス革命前のフランスだった……)


そして、頭を抱えながら「もう、どこから改善したらいいかわかんない!!」と叫ぶ里奈を、

「まぁ、ずっと俺らが再建できなかったこの国を、お前が一日で再建案を出せるわけがない!」

とゲラゲラ笑うアルフォード。


(おい、笑っている場合じゃないだろ、このチャランポランのクソ王子!!)


 喉まで出かかったが、相手にするのはやめて、イリヤに話しかける。


「イリヤさん、この国には選挙制度もないの?」

「ええ……。貴族議員も領主も、代々跡継ぎに権利が引き継がれていきますから。誰かを選ぶ必要がないのです」

「でもそれじゃあ、すっごく優秀な農民の人がいても、政治に参加できないってことだよね? 国民たちには直接何も変えられないってことだよね? それじゃあ、不満もたまるわよ! 私がその立場だったら、税金だけ払わされて何もしてくれないアムステールから、さっさと出ていく!」

「だから、国民の半分が亡命したんだろうな」

「はい??」


 まるで他人事のように話すが、それってかなり最悪な事態ではないか?!

 なんで、この馬鹿王子は危機感がないのだろうか?


 里奈には、彼の余裕さが理解できず、そしてまた、ネガティブモードに突入しそうになる。

 と、そこで、ずっと黙って扉前で立っていたリチェーヌが、静かに里奈に近づいてきた。


「リナ様、いきなり全てを変えることは不可能です。まずは、明日の演説を成功させることが重要ではないでしょうか?」

「そんなのわかってるって! どうしたら皆を納得させられるかを考えてるんじゃない。そんな事言うなら、リチェも一緒に考えてよね」


 昨日の件からのモヤモヤもあり、口調が自然と強くなったが、リチェはそんな里奈の言葉も気にせず、自分の考えを淡々と述べていく。

 

「とりあえず、明日は『それなりのこと』を言えばいいのです。理想でも、夢物語でもいい。とりあえず、民衆が不満に思っていることを殿下が真剣に受け止め、これから変えていく姿勢を、皆に見せることが最も重要なのですから」

「つまりそれって……ハッタリをかませってこと?」

「ええ、まぁ、そういうことになります。なので、指導者としてカリスマ性を見せつける演出を加えます」

「カリスマ性を見せつける演出!?」


 黙って聞いていたアルフォードが、里奈より先に声を上げた。

 そして、アルフォード、里奈、イリヤの三人は、リチェーヌを見る。

 

 彼の表情からは読み取れないが、何かとてつもないことを腹の内で考えている……

 里奈はそう確信した。

 


 そして、彼は視線を里奈に合わせ、衝撃的な一言を発した。



「まずは、リナ様に『青薔薇の魔法使い』になってもらいます」




 

 



 

 





 



 

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