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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
71/235

具体案

 着替え終わった里奈は、ぐったりしながらアルフォードのいる執務室へ向かった。


(アンジェリカさん……絶対私をからかってる……)


 中に入ると、机の上で本を読んでいたアルフォードが、里奈に「やっときたか」と言いながら、目の前に置いてあった演説原稿を里奈へと差し出した。


「朝食も用意したから食べろ」


(ちょっとは優しくする気になったの!?)


 ぶっきらぼうに言うアルフォードを横目でみつつ、ソファに腰かけた。

 そして、彼の机の前にあるテーブルの上に用意されたサンドウィッチを片手に、差し出された演説原稿を読む。

 気分はいまいちだが、タイムリミットが迫っているので何とか気持ちを上げていく。

 

「どうだ? これで国民は俺を見直すだろ?」

「…………」


 自信たっぷりにアルフォードは言うが、演説文は昨日のレベルとたいして変わらない。

 昨日、あんだけ国民に寄り添う文章を考えろと言ったのに、この王子は理解していないのだろうか?

 里奈は何も言わず、二枚目の原稿を読み進めていく。


(あれ……? でも、前よりはよくなっているかも……)


 昨日見た文章はどれも、俺様オーラを感じさせるものだったが、今見ているものはちょっと違った。

 

「うん。昨日のよりは、よくなってると思う。特に、この『この危機的状況を一緒に打開しようではないか』とか」

「だろ? 俺もやればできるのだよ」


 得意げにペンを回すアルフォード。

 昨日のレベルが低いので、別にたいしたことではないのだが……


「でも、これだけじゃ『お前が一番頑張るべきだ』って言われかねないよ。なんだろう……国を良くするための改善案的なものを入れていかないと、国民の皆様は納得しないよね」

「改善案だと?」


 原稿を机の上に広げながら、里奈は思ったことを次々口にしていく。



「今皆が王政に求めていることってなんだと考えてるの?」

「う~ん……経済回復とか?」

「それもあると思う。あと私が聞いたのは、医療かな……。助けたくても薬代が払えなかったとか、医者に診せれなかったとかいう人が沢山いたの」

「そうなのか? じゃあそれを盛り込めばいいのだな」

「でも、実現できないようなことを演説しても無意味だからね」


 夢物語のような言葉を国民は期待していない。

 国民が望んでいるのは、現実を改善すること。

 絵に描いた餅では、逆に不信感を与えるだけだ。


「う~ん……実現できるようなこと……実現できるようなこと……」


 アルフォードは、目をつむり、うなり声をあげる。

 彼がうなっている間に、里奈はそそくさと、二つ目のサンドウィッチに手を伸ばした。


「この国には医者や看護師はいるんでしょ? 診せられないってことは医療費が高いの?」

「医療費というか、税金がほかの国よりも高いらしい」

「…………らしいって……その高い税金の行方は?」

「………………」


 アルフォードと里奈は同時に、近くにいるイリヤを見つめる。

 そんな視線を感じてか、イリヤは咳払いしつつ、税の行方を簡単に説明してくれた。


「アムステールの税率は二十五パーセントです。徴収した税の使い道は、公共事業や医療、福祉などに使われます」

「二十五パーセント!? ちょー高いじゃんそれ!!」

「やはり高いのか?」

「高いよ! その割に医療はだめだめなのは、何で??」

「それは……」

「何? なんなの??」


 イリヤが、とても気まずそうにこちらを見る。

 里奈にはさっぱりわからないが、アルフォードには通じたようだ。

 そして、言えないイリヤの代わりにアルフォードが口にした。


「どうせ、貴族への報酬だろ?」

「はい、殿下。その通りでございます」

「やっぱり……どこの時代も同じね……」


 お茶を飲みながら、はぁ……と溜息をつく。

 結局、一生懸命働いて税を納めても、貴族に着手され還元されることはない。 

 これでは暴動が起きるのも無理はないだろう……

 まずは、これをどうにかしないといけない。


「その貴族の報酬をやめるって、文章に盛り込もうよ。そしたら、福祉や医療にお金が使えるでしょ? お金がなくてもちゃんと医者に診てもらえるように医療費を安くするの」

「…………それは無理だな。貴族への報酬はなくせない」

「え? なんで?! 医療を改善する一番の近道よ? 国民のみんなも納得すると思うけど?」


 アルフォードに詰め寄る里奈の前に、イリヤが地図を広げた。









 



 



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