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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
61/235

里奈の頼みごと

 雲の多い昼下がり――

 里奈は小さな紙袋を携え、あの教会に来ていた。

 リチェーヌが「入られますか?」と里奈に尋ねる。


「うん。借りたこの服返さないとだし、私の大事な制服も回収しないと……」


 その紙袋には、洗濯してもらって綺麗にアイロンがかけられたワンピースが入っている。

 それは、あのオネエの神父が貸してくれたものだ。

 借りたものは返す主義の里奈は、教会の扉を叩いた。



「どちら様ですか?」


 中から、一人の若い女性が出てきた。

 首にはロザリオ、黒い修道服を着ているので、彼女はシスターだろう。

 

「あの……この間、神父様に服を貸していただいたので、お返ししたいのですが」

「…………少々お待ちください」


 そう言ってシスターはまた中に入っていった。

 一応今回は無難な膝下ぐらいのフリル少な目ワンピースを着ているのだが、不審者に思われたようだ。

 

 里奈は、しばらく扉の前で待ってみる。


「会えると思う?」


 いつもの無表情で隣に立っているリチェに話かける。

 

「どうでしょう。向こうは我々を警戒していると思うので、確率は低いかもしれません」

「そうだよね……明らかにスパイだもんね……」


 すると、再び扉が開き、さっきのシスターが「どうぞ」と二人を招き入れた。

 里奈とリチェは顔を見合わせ、指示に従い中に入る。

 この間連れて行かれた時とは違う通路を歩いていくと、突き当りにきれいな装飾が施された扉があった。


 その扉をシスターが軽くノックすると、中から「どぉぞ~」と緊張感のない、無理に高くした声が返ってきた。

 里奈とリチェーヌが中に入っていくと、


「こんにちは。スパイのお嬢ちゃん。元気にしてたぁ?」


(出た……オネエ神父……)

 

 この間の神父が目の前に立っていた。


「こんにちは……。この間は服を貸していただき、ありがとうございました。あの、借りてた服をお返しに」


 里奈は低姿勢で紙袋を神父に渡す。

 

「あら、わざわざどうもね~。で、本題はこれじゃないんでしょ? あ、フリン、お茶三つ持ってきてくれる?」

「かしこまりました」


 そう言ってシスターは出て行ってしまった。

 部屋には、オネェと里奈とリチェのみ。

 とりあえずお掛けなさい、と目の前のソファに二人を誘導し、自らも一人がけの椅子に座る。


(うっ……鋭い。さすが聖職者は違うわ……バレてるなら仕方ない……)


 里奈は腹をくくって神父を見つめる。


「はい、そうです。お願いがあってきました」

「お願い? どうしようかしらぁ~それを聞いたらあなた何が私にしてくれるわけ?」


(聖職者なのに見返りを期待するわけ? このオネェ……本当にこの人は神父なの?)


「じゃあ何をしてくれたら、私のお願い聞いてくれますか?」

「そうね、あなたの願いに見合う対価を要求するから、まずはあなたの願いを言ってちょうだい」


 神父は里奈の鼻に指を当て、にやりと笑う。

 完全に里奈はおちょくられていた。

 なんだこのイラッとする感じは……

 里奈はムッとしながら自分の頼みごとを言う。


「エミリアっていう人が、あなたたちのリーダーですよね? あの人に会わせてもらいたいんです」

「エミリア様に? どうして?」

「直接伝えたいことがあるので」


 腕を組み首を傾げ、里奈をじっと眺めるオネェ神父。

 一体この子は何をしようとしているのか?

 彼の目はそういう目だった。

 一方、側についているリチェは、黙って彼をじっと監視するように見つめている。


「直接伝えたいこと? 王宮を襲うなって言いにきたの?」

「それもあるんですけど……ちょっと違います」

「ふうん。ま、いいわ」


(ま、いいわって……聞いといて何なのよ!)


 里奈は心の中で一人つっこむ。

 なんか、さっきからこの人と話しているとペースが狂う。

 里奈は視線を足元に下げて深呼吸をし、ペースを立て直そうとしたその時――


「会わせてあげる」


 さらっと神父が言った。


 対価がどうとか言ってたのは一体なんだったのか?

 里奈は首を傾げて彼を見つめる。


「ほんとですか?」

「ええ、いいわよ」


 よし!と一人ガッツポーズしながら里奈はうれしそうにリチェを見る。


「でも~私はついていかないし、そこのイケメンの彼も一緒に連れて行けないけどいい?」


 神父は出した条件は、里奈一人で敵地に赴くことだった。




 

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