次の作戦
「つまり……俺に演説をしろと?」
ミネストローネ風のスープを飲む手を止め、アルフォードは眉間に皺を寄せる。
「そう。当たって砕けたらまた何か見えるかも。国民の皆さんは、アルフォードが目の前に現れず、引きこもって豪勢な生活を送っていることが腹立たしいって言ってたし、アルフォードの現状も知らないから誤解が生まれてる部分があると思うのよ。まずは、誤解を解いて、信頼を得ないと前へ進めない」
「で、全国民の前に出て、俺のこの姿を晒せというのか?! お前……本当に、俺のことを貶めようとしてるんだな……」
なんとも言えない表情を浮かべ、里奈をじっと見つめるアルフォードなんか気にせず、里奈の食は進んでいく。
里奈の綺麗になくなったスープ皿をアンジェリカが下げ、次の料理の魚のフライを目の前に置いた。
毎回ちゃんとコースのように何品も出てきているのをみると、豪勢な生活と言われても否定できない。
「じゃあどうしたらいいと思うの?」
里奈はフォークとナイフを皿に置き、隣の椅子に置いた参考書を広げ、アルフォードに見せ自信満々に言い放つ。
「私が知る偉大なる指導者は、やっぱり素晴らしいスピーチをしているのよ! ヘレン・ケラー、キング牧師、松下幸之助、スティーブ・ジョブズのこの名言を見て! 言葉の力でこの国の人たちの意識を変えるのよ。魔法なんかじゃなくてね」
「……魔法使いが、魔法なんかなんて言うな……」
「私は魔法使いなんかじゃない! 確かに使ったかもしれないけど、あんな不確かな力で、これから何かしようとか今のところ考えてないんで、私の魔法はあてにしないこと! いい?」
強く宣言した里奈の言葉は聞き流すことにして、アルフォードは話を元に戻す。
今の彼女に『魔法』の重要性を説いたところで無意味だと、彼もやっと学習したようだ。
「俺は、嫌だからな! 国民の前で演説なんか!」
「なんで? カンペ作れば問題ないでしょ? 演説原稿は一緒に考えてあげるから」
「そういう問題じゃ――」
「じゃあ何が問題よ? 腹くくったから私のところに来たんじゃないの? そんなこといってたら、また王宮が襲われて命狙われるかもしれないよ?」
「演説中に攻撃される事の方が確立が高いだろ!」
「…………」
そこは盲点だった。
確かに、演説中は無防備で城に引きこもっている時より襲いやすい。
それに、演説をする日時などはちゃんと事前に知らせるものだから、彼らも事前準備ができてしまう。
(確かに……それは一利あるかも……。かといって、このまま引きこもりしててもどうしようもないし……)
しばらく唸りながら、腕を組んだまま目を瞑って考えていた里奈が、目を開き――
「ま、襲われたらドンマイってことで!」
「…………」
アルフォードは、能天気な彼女に言葉も出なくなった。
ちょっとは、評価できる部分があったと思ったがそれは勘違いだった――
王子は溜息をつく。
冷めかけたスープを口に運びながらアルフォードもまた、考えを巡らせてみるが、打開策が見つからない。
里奈もまた、「おいしい! この魚何ていうの?」などとアンジェリカに質問して食事を楽しむのに集中しだす始末――
このまま平行線のまま食事が終わろうとしていたその時――
「僭越ながら申し上げます。演説ですが、私は名案だと思います。今は国民の前に出られるのが一番の打開策ではないでしょうか? 演説中は襲われないよう、兵力を強化したり、場所を考えたりすればよいのではないでしょうか?」
イリヤの一言で次の一手が決まったのだった。




