悲しい結末
「私はメアリー様の付き人をしてました。その日も、メアリー様がお休みになるまで、傍に仕えておりました。しかし、何の前触れもなく、急に扉を蹴散らす音共に、炎が我々を襲いました。私が炎に気をとられていた隙に、メアリー様の背後を魔法使いが襲った……。それは一瞬でした。メアリー様は背中を刺されていたのに、魔法使いと交戦して私を守ってくださった。私なんか守っても仕方がないのに……。そして、私にすぐ王宮へ向かうよう仰った――」
真っ赤に染まる部屋で、真っ赤に染まる服――
こないだの火災と映像が重なる。
早く、王宮へ行きなさい! 私のことなんていいから――
その時の必死な彼女の声が、聞こえてくる気がした。
里奈はぎゅっと両手を組み、目を閉じる。
頬を涙がつたう。
「私は、そんなメアリー様を置いて王宮へ向かいましたが、遅かったんです。目の前には、兵士が何人も何人も血だらけで倒れていて、回廊を走り階段を駆け上がると、国王陛下の胸に剣が刺さったまま床に仰向けで倒れていました。隣の部屋に向かうと、そこには王妃様が陛下と同じように胸に剣を刺された状態で発見されました」
里奈は思わず口を両手で押さえる。
生々しい言葉に心が締め付けられていく。
「リナ様……すみません。このような話し方になってしまい……」
「……だい…じょうぶだから……。ごめん、ほんとに……話すリチェのほうが辛いのに。続けてもらってもいい?」
涙が止まらない。
思った以上にそれはひどい惨劇だった。
でも、最後まで聞くって約束したのだ。
リチェが言い終わるまで聞き届ける。
里奈は、自分の袖で涙をぬぐった。
「……ジークフリード殿下はたまたま別の塔にいらっしゃったので無事でしたが、アルフォード殿下は刺客に気づいて国王陛下たちの部屋へ行ってしまい襲われてしまった。そんな彼を守るために王妃様は盾になり殿下を逃がしたそうです。でも、相手は魔法使い……逃げる殿下を力で階段から突き落とし、足を剣で刺した。それが原因で殿下は歩けなくなってしまったのです。前国王陛下、王妃様、そしてメアリー様を助けることはできませんでした。」
「……犯人は……捕まったの?」
「いえ……。アムステールの全ての兵力を総動員して探しましたが、国外に逃亡してしまったので捕まえることはできませんでした」
「そうなんだ……」
「これが、五年前の事件の真相です。この日を境に、国家魔法使いという矛と盾、国王という柱を同時になくしてしまったこの国は、一気に不安定になりました。今まで盛んだった観光業や貿易産業も廃れ景気は悪化。隣国の援助もなくなり現在に至ります。リナ様、最後まで聞いていただきありがとうございました」
淡々と礼を言うリチェを見たらまた、涙が溢れてきた。
なんて自分は残酷なことをさせてしまったのだろう。
涙が里奈の膝に乗せられた拳に、ポトポト落ちていく。
「こちらこそ、辛いことを話してくれてありがとう」
それだけを言うので精一杯だった。
彼はそれ以上何も言わずに、ずっと里奈が泣き止むまで傍にいてくれた。
里奈の涙が止まるときには、すっかり日が落ち、空には一番星が輝き始めていた。




