あなたの強み
少しでも彼に届かないだろうか……
里奈はそう願いながら話を続けていく。
「私は確かに両親を亡くして周りからは、可哀そうだと見えるかもしれないけど、私は可哀そうなんかじゃなかったの。だって、私にはおじいちゃんも、いつも一緒に遊んでくれる他の友達もいたから。私自身が、可哀そうだって思っちゃいけないって思った。それに、私は両親を亡くしている分、皆よりも家族の大切さを知ることができたし、同じ境遇の人の気持ちが他の人よりも分かるようになった。全てがマイナスなんかじゃないってね」
今までなら茶々入れをしてくるアルフォードが、里奈の話を黙って聞いている。
だから、彼が何を感じているのか分からない。
(どうしよう……私アルフォードに何が言いたかったんだっけ……?)
そして、里奈は話しているうちにだんだん話が収集つかなくなっていっているのを感じてきた為、アルフォードに話が分からないと罵られるのを覚悟しながら、心に浮かんでいる言葉を放出した。
「だから、つまり……その……何が言いたいかっていうとね、周りのことを気にしすぎるなってことよ! 確かに立場上気にしちゃうと思うけど、逆に世の中には足が不自由な人、目が見えない人、耳が聞こえない人は沢山いる。その人たちの気持ちを感じることができるのは、同じ境遇になったアルフォードだけなのよ! これってすごい事よ? どんな国もそんな王様いないよきっと!! これは『強み』なのよ!! アルフォードの助けを待ってる人は絶対いるの!」
「はぁ!?」
あまりにあきれ返ったので、アルフォードの声は思わず裏返る。
「……何その素っ頓狂な声は……こっちは一生懸命話してるのに!」
「お、お前が変なこと言うから!」
「変なことって……。あんたね!」
こんなに人が嫌な過去まで引っ張り出して伝えているというのに、鉄の心の彼には全く届かないようだ。
もう自分にできることはないと悟った里奈は、扉の方へ向かって歩き出す。
「おい、どこに行くんだ?」
「うるさいな! 私がなんと言おうと無意味なことがよくわかったから、部屋で休ませてもらうのよ! 勝手に国の再建やればいいでしょ! もう私は知らない! あんた一人でやれば!」
「おい! ちょっとま――」
アルフォードが止めるよりも先に、里奈は大きな音を立てて部屋から出て行ってしまった。
すかさず彼女の後を、リチェーヌが追っていく。
その二人の姿を見送るしかできなかったアルフォードは、イリヤと共に部屋に取り残された。
「殿下? リナ様を連れ戻しますか?」
そんな彼を気遣い、イリヤがそっと声をかけてくれたが、彼は首を横に振る。
「長時間拘束してしまったから好きなようにさせてやれ」
「かしこまりました。では、私は、何か変わったことが起きてないか兵士たちに確認してきます」
「ああ、頼む」
そして、イリヤもまた一礼して部屋から出ていった。
さっきまで賑やかだった部屋に静寂が訪れ、アルフォードはこの部屋が広く感じた。
そして彼は目を閉じ、深く椅子に持たれ天井を見上げる。
「この足が『強み』か……。追いかけたいのに追いかけることが叶わないこの足が強みだと……? あいつみたいに考えを変えられたらどんなにいいか……」
自分にできることがあると彼女は言った。
自分にしかできないこともあると教えてくれた。
でも、できないことが多すぎて、できることに目を向けられない。
今の自分を受け入れるだけの心の余裕と勇気が今の自分にはない。
変わりたいと思っても、一歩が踏み出せない。
駄目な自分を皆に曝して、これ以上自分自身を傷つけたくない。
「彼女のように俺はは強くはないんだ……」
誰にも聞こえない声で王子は呟く。




