ある青年の叫び
最後に連れてこられたのは、アルフォードや里奈よりも少し年上ぐらいの若い青年だった。
(私たちとあんまり年は違わない感じよね……? そうだ……大人だけが王宮に反発してるわけじゃないんだ……)
その青年は座らされるなり、ずっとアルフォードを睨みつけている。
その眼差しには、殺意も感じられるほど強い。
むき出しにされた闘争心や殺意を目の前にして、里奈はたじろいでしまうが、王子はそうではなかった。
「何だ、その態度は。お前礼儀を知らないのか?!」
(おいおい……それはまずいでしょ! こちらも戦闘態勢に入っちゃ意味ないんだって!)
里奈は一番始めのエドガーの時と同じように、王子を肘で小突こうとしたが、彼は身体をすかさず横にスライドさせたので空振りに終わり、里奈は椅子から転げ落ちそうになった。
体勢を立て直し、アルフォードを睨みつけようと首をひねると、彼は挑戦的な態度で目の前の青年を見つめている。
「ちょっと、アル――」
里奈が言いかけたその時、目の前の青年が里奈たちに向かって、冷ややかな声で言い放った。
「礼儀を知らないのはお前だろう? アルフォード殿下。お前に礼儀などと言われる覚えはないし、俺らに指図できる立場ではない」
「お前! 無礼だぞ!!」
「無礼なのはお前だ。この人殺しが! お前たち王族のせいで一体何人の国民が死んだと思っている! 国民が貧困で喘いでいるというのに、お前はこの宮殿から一歩も出ずに、何不自由なく暮らしている。誰のおかげで飯が食えてるのか、考えたことはあるのか!? お前は国民の税金のおかげで息をすることができているんだぞ?!」
今までの人たちもアルフォードのことを責め立てたが、ここまで心に刺さるような言葉を浴びせた者は一人もいなかった。
里奈もまた、目の前の青年を睨み返す。
「ちょっとあんた、人殺しなんて簡単に言わないでよ!! アルフォードだって色々大変な――」
「魔法使いのお前だって同罪だろう!? この国がこんなになるまで、放っておいて、いいご身分だな!」
「何なのあんた! そういうあんたは、どうなのよ!? この国のために何かしたわけ?!」
黙ったままでいるアルフォードの代わりに、里奈が噛みつくが――
「税金払ってるだろうが! なけなしの金でな!」
「うっ……そうでした……」
里奈はそれ以上何も言えなくなってしまう。
そして、そんな里奈に助け舟も出さないアルフォード……
これを皮切りに攻撃を受け始める。
「お前らは国民の前で出るのが怖いんだろう? だから、一度も人前に出てこない。こんな生活を送っておいて堂々と国民の前に出れないよなぁ? アルフォード殿下?」
「うるさい……黙れ……」
「お前、やる気ないだろう? お前の父親が魔法使いを売ったせいで、こんなことになったのに、お前は立て直すどころか、城に隠れてるだけか?」
「黙れと言ってる……」
(アルフォード……)
「お前は何も知らないくせに、わかったような口を聞くな! おい、お前たち、こいつを今すぐ連れ牢獄に連れていけ!」
怒りを耐えられなくなったアルフォードは、ぐっと拳を握りしめ、部屋の外まで聞こえるくらいに叫ぶ。
兵士はすぐさま、彼を繋いでいる鎖を取り始め、強制的に立たせ部屋から出そうとしたが、彼の怒りもまた収まっていなく――
「じゃあ説明してみろよ! 何も知らないでいる国民の前で、お前の知っていることをよ! それもできないなら、今すぐ俺らでお前をこの国から追放してやる!!」
兵士に羽交い絞めにされても、青年は部屋を出ていくまで叫び続けた。
そんな彼をアルフォードは、唇を噛みしめ、冷ややか目で見つめている。
その表情は、里奈が今までに見た中で一番冷酷に見えた。




