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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
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国民の生活

「そうなんですね……。今も奥さんは病気で……?」

 

 里奈が優しく彼に声を掛ける。

 隣の王子は真剣な表情を浮かべたまま、黙っているだけだ。


「ああ……。薬も買うことができないからな……。ずっと寝たきりだ。せめて薬代だけでも稼げたら……」


(この前教会で会ったおばさんと同じだ……)


 病で苦しんでいるのを側で見ながら、何もしてあげれない自分を責めて、この作戦に加わったんだろう。

 あの集会に参加していた人たちのほとんどが、同じような境遇に置かれた人たちだった。

 怒りや悲しみをぐっと自分の中でため込んで、自分ではどうしようもなくなった結果の行動……


「じゃあ、お前は私がこの王座から退けば、景気が良くなると思っているのか?」


 今まで黙り込んでいた王子が急に口を開いたので、ぎょっと里奈は彼を見る。

 男は、薄笑いを浮かべ、そんな王子に向かって言った。


「さあな……。しかし、今の暮らしよりは、ましになるだろうよ。殿下が何もしてくれないこの現状よりはな」

「誰が、指揮をとるつもりでいるんだ? どうせ、私が退いても権力争いが勃発するだけだ」

「我々には、エミリア様がいらっしゃる。あのお方なら、この国を正しい方向へ導いてくださる!」

「エミリアだと!? あの老いぼれじじいに何ができるというんだ。笑わすな! あいつは五年前一番先に、この国を捨てて逃げた男だぞ!? お前がまんまと騙されているのに気付いていないのか?」


 里奈は彼らの話についていけず、首を傾げるしかなかった。

 エミリアという人は、教会で会った、いけ好かない老人だ。

 彼は里奈を地下室へ送り込んだが、周りの人は彼を慕っていたようだ。


 その人が五年前、この国を捨てた??

 里奈の頭には疑問符が次つぎと浮かび上がり、今度は里奈が黙り込む。


「エミリア様は裏切ってはいない! あの方はこの国の危機にお戻りになられたのだ!」

「つまり、お前たちは、あいつに王座を渡せと言っているのか?」

「……そうだ」

「もうよい、この者を連れていけ!!」


 里奈が「え!? 終わりにするの?」と立ち上がり、声を上げたがその言葉もむなしく、エドガーは連れて行かれてしまった。

 状況がさっぱり理解できない里奈は、横にいるアルフォードの様子を覗う。

 彼はじっと腕組みしながら、誰も座っていない椅子を見つめている。

 そして、イリヤに向かって次の者を呼ぶよう命令した。


(ちょっとは説明してくれたっていいじゃない……)


 里奈は溜息をつきながら、開かれた扉を見た。

 入ってきたのは、中年の女性だった。

 先ほどのエドガーと同じように椅子に座らされ、固定されていく。


「名前を述べよ」

「ハンナ・ヨハンネスと申します」


 この女性もまた、エドガーと同じように初めは躊躇っていたが、すぐ自分の身の上話を始め、自分たちの暮らしが悪くなったのはアルフォードや王宮のせいだと、責めた。

 

 その次も、そのまた次の次の者も、言うことは同じなので――


「おい、お前が言うように話を聞いた結果が、王宮や私に対する不満大会だ。私が皆から嫌われていることが証明されて満足か?」


と、性悪王子も里奈を責めた。



「あと一人いるわよ?」

 

 そんなことを言われてもひるむことなく里奈が、イリヤの帳簿を見て言った。

 

 こうなることは分かっていたし、アルフォードがどんどん責められて機嫌を損ねるのもわかっている。

 それでも、彼には国民が今何を思ってどういう生活を送っているのか、という生の声を聞いてもらいたかった。

 彼が、少しでも国民に寄り添わないと、この現状は打開できない……


 里奈は扉のむこうの最後の一人を待つ。 

 



 


 





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