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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
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今後について

 急に黙ってしまった里奈に対して、アルフォードは何も声をかけられないまま、時間が過ぎ去っていく。

 里奈扉付近で、アンジェリカが何か言いたそうにこっちを見つめているが、全く伝わらない。


「アンジェリカ、何か言いたいことがあるのか?」

「いえ! わたくしは別に……」


 慌てふためくアンジェリカに首を傾げつつ、視線を里奈へと戻した所で、急にノックと共にイリヤが入ってきた。


「どうしたんだ?」


 イリヤは王子の側まで行くと緊迫した声で告げた。


「殿下、たった今、放火犯を捕えました」

「本当か!?」



 その報告に俯いていた里奈もはっと顔を上げる。

 

「現在地下牢へ移送中です。どうされますか?」


 イリヤが、淡々とそして機械的に王子へ次の指示を仰ぐ。

 それは聞かなくても分かっているかのよう。

 そんな彼らを見て、里奈は嫌な予感がする。


(もしかして……処刑するつもりなんじゃ……)


 そして、里奈の予感は的中した。


「放火犯も、奴に加担した者もすべて処刑しろ!! 二度と反逆をする気がなくなるよう民衆の前でな!!」


 確かに、殺人未遂を犯したのだから、処罰されるのは当然だ。

 でも、これで本当にいいのだろうか?

 

 里奈は一人、アルフォードとイリヤのやり取りを黙って見ていた。

 すると、リチェーヌもいつの間にか戻ってきたようで、里奈の側で待機していた。

 それに気づいた里奈は、そっとリチェに声を掛ける。


「ねぇ、捕まった人ってどれくらいいるの?」

「放火した本人合わせて十数名ほど……」

「少ない……あの教会で集まった人は三十人以上いたと思う……」

「実際にこの計画を企てた張本人たちは、おそらく捕まっていないかと」


 リチェを見上げながら、里奈は眉を潜めた。

 それはつまり、また同じことが起こるということだろう。

 そう思うと、犯人を捕まえることが解決策ではない。

 

「う~ん、イタチごっこしてる場合じゃないのよ……どうしたら……」


 一人腕を組みながら必死で考える。

 彼らの願いは、王宮からアルフォードを追い出し、彼らの望む国をつくること。

 アルフォードが王座についていると、彼らの望む国にはならない……


(あれ? ちょっと待てよ……)


 いい考えを思いついたとばかりに、里奈は両手を合わせながら、アルフォードやイリヤ、リチェーヌに向けて――


「ねぇ! 国民が思い描いている政治をアルフォードがすればいいんじゃない?」


と、笑顔で自信たっぷりに言った。

 ドヤ顔の里奈を見て、性悪王子は「お前は馬鹿か!?」と悪態をつく。

 そんは王子を睨みながら里奈続けた。

 

「あなたの方が馬鹿なのよ。どうして、あなたは殺されかけたと思う? 皆、あなたに王座を退いてほしいからよ! あなたの政治に国民はうんざりなのよ。つまり、ちゃんとアルフォードが国民の望む政治ができれば、 国民の不満もなくなるし、あなたも命を狙われなくなる」

「失礼なことをづけづけと……」

「あなただって、この先ずっと誰かに怯えながら暮らすのは嫌じゃないの? だから、あなたはとりあえず、捕まえた犯人から順番に国民が今どう思って、この国をどうしてほしいのか、聞きなさい!!」



 アルフォードは、唇を噛みながら、じっと一点を見つめて黙り込む。

 確かに、彼女の言っていることは正しい。

 たとえここで力で彼らをねじ伏せても、また新たな恨みを買うだけなのは理解しているのだが……。


「国民の望む政治をしたいとは思っている。でも、民衆の前で話を聞くなんて無理だ。この姿を見せられない――」

「なんで?」

「お前……なんでって、俺の足は動かないんだぞ!? 国民の前で、立てないこの姿をさらせるものか!? 王子としての立場がなくなるだろうが!」

 

 アルフォードが、これくらい理解しろと言わんばかりに必死に里奈に訴える。

 しかし、それは里奈には響かなかったようで――


「いやいや、別に皆の前で立って歩く必要なくない? 必要なのは、皆の声を聴くための『耳』と、自分の思いを伝える『声』だけよ?」

「うっ……確かにそうだか……」

「じゃあ、決まりね。イリヤさん、犯人たちはを一人ずつ部屋に呼んで。」

「今からなのか!? お前ちょっとは、作戦をだな」

「作戦って別に戦うんじゃないんだし! 早く始めないと何日経っても終わらないわよ! そうこうしてるうちに、また主犯格に作戦を練られて襲撃されるわよ!」


 それ以上何も言えなくなった王子は黙って、テキパキとイリヤとリチェ指示する彼女を見つめる。


 この世界に来て間もない上に、関係ないことなのに、どうしてこうも一生懸命にできるのか……

 アルフォードには理解できなかった。

 そして、自分の国のことなのに何もできない自分が情けないと、彼女を見て思う。




  国だけでなく、自分も変われるだろうか……




  アルフォードは、ここは彼女に託してみることにした。

 

 



 

 




 




 



 


 


 

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