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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
44/235

協力する理由

「あ~美味しかった!」


 里奈は出された食事を全て綺麗にたいらげた。

 アンジェリカが、花柄のカップに紅茶を注ぐ。

 そんな彼女をじっとテーブルの端から見つめているアルフォードは、さっきから一言も言葉を発しない。


「ねぇ、何で黙ってるのよ? あ、もしかして私が協力するって言ったことが、うれし過ぎて言葉がでないとか?」

「……お前、本当におめでたい奴だな。お前の頭はお花畑なのか?!」

「はぁ? 何なのよ! 気を使って聞いてあげてるのに!」


 里奈は注がれた紅茶に砂糖を入れ、ぐいぐい飲む。

 一方の王子は長く息を吐きながら、さらに深く椅子に腰かけ言った。


「じゃあ聞くが、なんで急に協力するなんて言い出したんだ? お前何か企んでるんだろう?」


 真剣な青い目が里奈をじっと見つめる。

 

「企んでるって失礼ね。まぁ、そういわれても仕方ないか……。でも私は何も企んではいませんから、ご安心を」

「何も企んでいないのなら、この足にお前は同情したからなのか?」


 両手でカップを持ったまま、今度は里奈がアルフォードの青い瞳を見つめた。

 そして、自分の心を彼に伝える決心をした。


「そう。同情したの。あなたの身の上話とか、その足とか。それが何? 同情するなら出ていけと言うの?そんな余裕があなたにあるの?」


 ちょっと言い過ぎかと思ったが構わない。

 きっと彼にはこれぐらい強く言わないと伝わらない――

 

 その言葉に怒りを覚えた王子は、里奈にすぐさま噛みつき大声を上げたテーブルを叩く。


「歩けない俺を見下してるのだろ!?」

「あのね、同情っていうのは、他人の不幸や苦悩を、自分のことのように思いやることなの。あなたを見下すとかそういう話じゃないの……。そうやって、一匹オオカミでいても何も変えられないことに早く気づきなさいよ……」

「は? お前誰に向かってそんな――」

「お前じゃなくて私は『宮下里奈』よ。ちゃんと名前で呼んで。これから一緒に国づくりする同志なんだから!」

「誰か同志だ?!」


 ぎゃんぎゃん言い合う二人を、遠くで見ているリチェは、彼らをしばらく放っておくことにし、部屋を後にした。

 とりあえず、今はまだ王宮が襲撃されることはないだろう。

 彼は二人を残し、ある場所に向かって廊下を歩いていった。



「とにかく、私はあんただけじゃなくて、暴力で解決しようとしているこの国全体に同情してるの。私のお母さんが生まれ育ったこの国がなくなるのは嫌だから。国民側につくことも考えたけど、私はあなたに協力するってことに決めた。自分の世界に帰るのは、あなたがちゃんと指導者として、皆をまとめ引っ張っていく姿を確認してからにする」

「何をエラそうに……」

「うれしいくせに~魔法使いである私の力が必要なのでしょ? 正直にうれしいって言ってよ」

「誰が言うか!! 馬鹿!!」

「あ~、またバカって言ったわね!!」


 

 痴話げんかをする王子を微笑ましく見ているアンジェリカは、一方でほっと胸を撫で下ろしていた。


 今まで彼は、この広い王宮で一人ぼっちだった。

 ずっと一人で、大人でも解決できない難しい問題を抱え、安らぐ場所も安らげる人もいなかった。

 そんな彼に、自ら協力すると言い出した彼女の存在は、きっと彼にとって支えになる――


 前国王と王妃が亡くなって五年――

 やっと彼が前へ進もうとしている。



 ふと緩んだ涙腺から、一粒二粒と涙がこぼれ頬をつたう。

 アンジェリカがハンカチを取り出し、涙を拭っているのを見たアルフォードが「おい、お前! なぜ泣いてるんだ!?」と問いただす。


「こういう時は、『大丈夫?』って聞いてあげてよ。そんな怒鳴るような感じで言われても……。アンジェリカさん大丈夫ですか?」

「お前はいちいち、うるさいな!」

「教えてあげてるんじゃない」

「殿下、リナ様申し訳ございません。私は大丈夫です。すみません、なんだか楽しそうな殿下を久しぶりに見たのでついうれしくなりまして……」


 アンジェリカは笑顔で二人を見て言った。

 

 そして、密かに心に誓った――

 自分はアルフォード殿下とリナ様にどこまでもついていくと――





 








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