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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
43/235

そばにいること

「おじいちゃん、そんなに餃子つくっても食べられないよ~」


 皆に見られているとも知らず、里奈はむにゃむにゃ言いながら、夢の中にいた。


「こいつの頭は大丈夫なのか?」

「医者曰く、どこも頭は打っていないとのことですが……」


 あの火災から丸一日、里奈は眠り続けていた。

 とりあえず、寝言を言えるぐらい体力は回復しているよう。

 

「おい、早く起・き・ろ~!!」

「殿下!?」


 アルフォードが、寝てる里奈の鼻を容赦なくつまむと――


 ふごっ!


 何が起きたのか分からない里奈は、夢の世界から飛び起きた。


「えっ!? あれ? あたし――」

「やっと起きたか、馬鹿娘……」


 目の前には、いつもの態度悪い王子とイリヤ、そして扉近くにはリチェーヌとアンジェリカが控えていた。


「バカバカいわないでよね! 馬鹿王子!!」

「お前――」

「命の恩人に向かって馬鹿なんて言えるのぉ~?」

「…………」


 睨みつける王子に里奈もまた睨み返す。

 すると、イリヤが咳払いをし、食事を用意すると言って部屋から出ていく。

 ふんと鼻を鳴らしながら、王子はくるりと方向を変え窓の側へ移動した。

 彼が乗っているのは、間違いなく車椅子――

 あの時、彼が言ったことを思い出す。


 『俺は元々、歩けない……』


 彼の姿を改めて目の当りにした里奈は、彼の足について聞きたくてもなぜか聞けなかった。

 そんな、里奈の様子を察してか、王子が珍しく気を利かせ、口を開く――


「火事の時、お前をびっくりさせたな。この足は、五年前の事件から動かなくなった。別に、今に始まったことではないから、お前に同情してほしいとも思っていない」

「その事件で怪我したの? 治せないの?」


 じっと窓の外を見つめるアルフォードに向かって、里奈は静かに問いかける。

 あんなことがあったのに、彼の見つめる窓の外には、青空が広がっている。


「両足を派手に刺されたからな……いろんな医者に見せたが、治せる者はいなかった……」

「…………」


 

 ふと、里奈は自分が祖父をなくした直後の自分と今の彼の姿を重ねた。

 

 あの時、親友の彩花は自分に何て言ってくれたんだっけ……?


 まだ、そんなに経っていないのに、彼女の声が懐かしい。

 そして、悲しそうな顔をしている彼に向かってゆっくりと言った。


「どうせ一人でこの国を立て直すなんて無理だから、あんたの世直しに付き合ってあげる。その代り、ちゃんと皆のための国づくりをやってよ?」


 窓を見ていたアルフォードは、里奈の言葉に目を見開き、振り返る。

 その顔があまりにも、間抜けな顔だったので、里奈は思わず笑ってしまう。

 アンジェリカも同じように驚いている一方で、リチェはこうなることを予想していたので、大きく溜息をついていた。

 


(なんだ……そんな顔もできるんだ……)


 笑うな!とアルフォードが言いながら里奈の近くへやってくる。

 里奈はそんなの構うもんかと笑い続けていた。



『里奈がつらい時にいるために、私がそばにいるんだよ……里奈が笑っている時は笑顔でいたいし、一緒に泣いてほしい時は一緒に泣きたい……。里奈だって逆の立場だったらそうでしょう?』



 彩花、本当にありがとう。

 いつも彩花に助けられてばかりだね。

 だから、今度はあたしがこの性悪王子を助ける番だと思うんだ。

 あたし、もうちょっとこっちの世界で頑張ってから、日本へ戻るね。

 それまで忘れないで、待ってて――



 里奈は笑いながら、見えぬ親友へと誓いを立てた。



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