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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
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水龍

 炎によって暖められた空気が、すっとひんやりとしたものに変わり、里奈を包む。

 里奈の手に握られた魔石からは青白い光が放たれ、天まで届くぐらいの光の柱を作り出した。


 

 一体、何が起きているのか――?


 どこからともなくやってきた、水の粒たちが光の柱に吸い寄せられ、今度は水の竜巻が出来上がる。


「なんだあれは!」

「やばいぞ、降ってきたら大変なことになる!!」

「早くここから逃げないと!」


 火事を消そうと集まった侍従や兵士侍女たちが、それを見たとたん叫び声や悲鳴を上げて右往左往に走り出す。


 しかし、水の竜巻は里奈のすぐ側で膨張し続けているものの、待機しているかのように全く動く気配はない。


「これが魔法なの?」


 皆が逃げ惑う中、里奈だけはその場に立ち尽くしていた。

 そして、水の竜巻を見上げながら、里奈は次にどうしたらいいか考える。

 一歩間違えば二次災害になりかねない状況だ。

 

 

「え~っと、確か、魔女っ娘アニメではヒロインの女の子が、指をさしながら命令して魔法を使っていたよね……?」


 記憶にある数少ない魔女っ娘シーンを思い浮かべながら、里奈はそれを実践してみることに。


「リナ様!」

 

 後ろから知っている声が聞こえた。


「イリヤさん、こっち来ちゃだめ!!」

  

 そう言うなり、ごうごうと燃え盛る温室に向かって指をさしながら、水の竜巻に向かって叫んだ。


「あの炎を消し去りたまえ!!」


 ちょっと魔女っ娘っぽく叫んでみるが、たまえ~なんか言って何も起きなかったら、ただの変な人に見られるだろう。

 そんな心配をしつつ、恐る恐る上を見上げてみると、里奈の思いは通じたのか、水の竜巻がぐにゃりと曲がり、勢いよく温室へと進んでいく。

 

「竜!?」


 里奈が言うように、水の竜巻は炎に近づくと竜の形に姿を変え、大きな口を開けながら炎を飲み込んで中へと突き進んでいく。

 すると、外まで飛び出ていた炎が、バチバチと音を立て、白い水蒸気の煙を残しながら消えていった。

 

 水竜は口を開けながら、ぐるりと温室を一周すると、里奈の前に再び戻ってきて、大きな赤い瞳で里奈を見つめた後、こうべを垂れた。

 里奈は、自分よりはるかに大きい水竜から一歩、二歩と後ずさる。


『やっとお会いできましたね……この日をお待ちしておりました』


「み、水がしゃべった……」


 予期せぬことが次々と起こり、現実主義の里奈の思考回路はショート寸前である。

 そしてその声は耳ではなく、直接脳に伝わってくるので自分の体質が変わったのかと不安になる。


『私は水龍すいりゅうのウォーティでございます、リナ様』

「うぉーてぃ? えっと、あなたは私が?」


 躊躇ちゅうちょしている場合ではない、今は聞くべきことを聞かねば――

 里奈の強気な精神が彼女を前へ進ませる。


『あなたが強く願ったので私が参りました』

「確かに願ったけど……それより、二人は無事ですか?!」


 里奈は必死な顔で水龍を見つめる。

 

「ええ、火災は消しましたから……しかし、中はガスが充満しておりますので、早く救出された方がいいですよ」


 二人が無事だと言われて、里奈はほっと胸を撫で下ろす。

 どうやら、最悪の事態は回避されたようだ。

 そして、図々しいとは思いつつも水龍に向かって、次のお願いをしてみる。


「水龍さん、じゃあ、二人をここまで連れてきてもらえません?」

「残念ですが、今のあなたの魔力ではここまでが限界です。それでは失礼します」

「えっ?!」



 里奈のお願いをさらっと断り、水龍ウォーティは空高く舞い上がり、さっさと消えて行ってしまった。

 

 魔法とは融通が利かないらしい……

 



 


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