部外者の立場
エミリアや神父が座っている後ろの小窓から光が差し込んでいるのを見ると、どうやら雨は上がったようだ。
外の天気も、今何時かも、もはや民衆にはどうでもよい。
今重要なのは、明日決行される作戦の詳細だった。
「明日、作戦を実行する。今から呼ぶものはこちらで決めた作戦班だ。呼ばれたものはここに残り詳細を伝える。呼ばれなかったものは、明日の正午ここに再集合してくれ。一班、オリビア・アイザ、カール・ウェジ、ハンナ・エバンス……」
名前を聞き漏らさないように、皆が耳に神経を集中させている中で、里奈だけは俯き、首からかけてるネックレスを握り目を閉じる。
元の世界に戻りたい……
でも、知ってしまった以上、知らないふりをして自分はここを去ることができるのか?
身の危険を冒して、アルフォードにこの計画を伝えるか――
自分はこの国とは関係ないといってこの場を立ち去るか――
里奈の心の中で葛藤が生まれる。
俯く里奈の隣では、おばさんたちがお互いに励まし合っていた。
「これがうまくいけば私らの生活もよくなるよ。希望の光が見えてきたね。」
「ほんとほんと。あと少しの辛抱だ。皆で頑張って王族からこの国を取り戻そう!」
周りの声を聞いていると、部外者の自分がアルフォードにこの計画を伝え行くことが間違いなのでは? 部外者が口を出してはいけないんじゃ? と、思ってきてしまう。
遠くからも「これで夫と息子の敵が打てる」「病気の母に薬を買ってあげられる」などと、この作戦に賛同する声が上がっていた。
その声に満足しているかのように、エミリアは椅子に腰かけたまま笑みを浮かべ周囲を見ているが、隣に座る神父はというと、足と腕を組みあきれたように彼らを眺めている。
里奈は、これ以上心を掻き乱されたくないと、それぞれの耳に両手を当て、外部の声を遮断する。
(どうしよう……どうしたらいい……? 誰か教えてよ……)
里奈の心の叫びには誰も答えてくれるはずもないが、ふと、小学校六年生の時の出来事が脳内に浮かんだ。
(ずっと昔もこういうことがあった……)
あの日、祖父が言った言葉は今でもはっきり覚えていた。
『どんな時も後悔しないように生きなさい――』
里奈は、その時の祖父の強い眼差を思い出した。




