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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
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雨の中

 一人王宮を飛び出した里奈は、行くあてもないまま城下町を歩いていた。

 出ていけと言われたからには、出ていくしかない。

 あんなに大声で怒鳴られたら、誰しも逃げ出すだろう。

 

 (ああ……何で、何も持たずに飛び出してきちゃったんだろう……最悪)


 いつも冷静さを欠いて、自ら窮地に落ちていく自分の性格を恨む。

 気分が沈むと、なぜか両足の傷がジンジンと痛んできた。

 せっかく、アンジェリカたちが消毒して手当してくれたのに、これではまた悪化する。


 里奈は花が何も植えられていない花壇に腰掛け、溜息をつき、辺りを見回した。

 城下町だというのに、人通りはほとんどなく、全く活気はない。

 道に沿ってお店が広がっているのに、ほとんどシャッターが閉められていて、やっているお店を数えた方が早かった。

 昨日見た景色と同じ光景だった。


(本当に、この国は崩壊寸前なんだ……)


 リチェーヌが言っていたことが、ふと頭によぎる。

 

『五年前に前国王と王妃は殺害され、半年前には第一王子も失踪した――』


 今にも崩壊しそうなこの状況とそのことは、きっと無関係ではない。

 でも、自分にはどうすることもできない、今は自分のことで精一杯。

 何度も心の中でつぶやく。


「私は間違っていない……そう、私は間違ってないんだ」



 『王子の言葉を民衆の前にたち代弁する』という行為は別に民衆を騙しているわけじゃない。

 それは、わかっている。

 でも、魔法使いとして皆の前に立つことが、どうしても受け入れられない。

 一度、人前で魔法使いとして立ってしまったら、もう後戻りは許されない。

 魔法が使えない魔法使いなんて皆は知らずに、きっとたくさんの膨大な期待を自分に寄せてくるだろう。

 元の世界に帰りたいと強く願っている自分には、彼らの願いを叶えることはできない。

 だから、窮地に立たされているアルフォードには協力できない。




 俯き、足元を見ると、首に掛かっているネックレスが大きく揺れ、きらりと光った。

 里奈は、首からネックレスを外し、魔石という青い石を手のひらに置いてみるが、うんともすんとも言わなかった。

 

「なんで私なのよ。普通の女子高生だったのに。お母さん、私はこれからどうしたらいいの?」


 里奈の目から涙があふれ、ぽたぽたと石に落ちていく。

 あんなに晴れていた空がいつのまにか、真っ黒な厚い雲に覆われ、ゴロゴロと遠くで雷が鳴っている。

 雷の音に気づいて顔を上げると、上から今度はポツポツと雨が落ちて、里奈の頬を濡らした。


(泣きっ面に蜂って、このことね……どこか雨宿りできるところ探さないと……)


 立ち上がり、誰もいない道を歩き出す。

 里奈を迎えてくれそうな温かい雰囲気の店も家もなく、どんどん制服は濡れていく。

 このままでは、凍え死んでしまう……

 冷たい雨は里奈の体力も気力も奪っていった。


 (せめて雨にあたらない場所に――)


 痛い足を引きづりながら、石畳の細い階段を上がると、教会のような建物があった。

 その教会には、十字架と色とりどりのガラスがはめられたバラ窓があり、建物自体は白を基調としていて、神聖な雰囲気をかもし出している。

 とりあえず、里奈は雨が上がるまでの間、扉の前で雨宿りすることにする。


(ここはきれいに手入れされているんだ……誰かいるってことよね)


 しゃがみながら、教会の周りを観察すると、色とりどりの花がきれいに色別に植えられていて、雑草もあまり生えていない。

 木もきれいに整えられているので、王宮の庭よりも美しい庭だった。

 

 通り雨かと思われた雨は止むどころか、どんどん酷くなっていく。

 ここまでくると、里奈は溜息しかでなかった。


(私が本当に魔法使いの血を受け継いでいるのなら、こんな雨も晴らすことができるのかな……こんな酷い自分の運命も変えることができるのかな……お母さんだったらどうするのかな……)


 石畳の道に溜まっていく雨をじっと見つめる。

 水たまりに映る自分の姿は、別人のように感じる。


「あ――もう! 雨よ止め――!!」


 ガチャッ――


「わぁ!」


 急に開いた扉は、里奈の背中を押し出し水たまりにダイブさせた。


「あんた、こんなこところでなにしてるのぉ?」


 出てきたのは、修道女……?

 ではなく、オネェの言葉を話す神父っぽい服を着た金髪の男だった。



 


 

 




 


 


 

 


 

  



 

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