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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
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ローゼン家

「そこまでお前がいうのなら教えてやってもいい」


 アルフォードは満足げに言った。

 側近のイリヤが、近くに控えている侍従に向かって椅子を用意するように言ってくれたので、里奈はやっと座ることができたが、きっとこの性悪王子はそんなんことはお構いなしに、里奈を立たせたまま話し始めただろう。


 ほんとムカつく奴だ。


「お前の母親の本当の名前は、レイラ・ローゼン。代々国家魔法使いを出している名門貴族だ。レイラ・ローゼンは二十歳の時に家を飛び出し、お前のいた世界に行ってお前の父親に助けられ、そのまま夫婦のちぎりを結んだ」

「っちょっと待って!! じゃあ、私はハーフってことなの!? まあ、確かに、人より瞳も茶色いし若干茶髪で、よくハーフなのかと言われるけど……」

「本当にお前は、人の話を聞いていないのだな! さっきから言っているだろうが!お前の頭は単細胞か?!」

「……すみませんね、単細胞で!!」


 里奈は出されたお茶を飲んで、怒りを抑える。

 いちいちムカついていたら話が進んでいかない。

 ここは自分が大人にならないと――

 里奈は深呼吸し、話を促した。



「お母さんは何でこの国から出て行ったの? 簡単に二つの世界を行き来できるってことなの?」

「お前の母親が出て行った理由は定かではないが、当時からこの国の情勢は不安定だった上、ローゼン家には魔力を持った者がお前の母親以降生まれなくなった。ローゼン家当主はレイラ・ローゼンを国家魔法使いにするため厳しい教育を行っていたと聞く。お前の母親は国家魔法使いになりたくなくて、家を飛び出しお前の世界に行ったんだろうな……。まぁ、一度王宮に上がれば自由はなくなり家族とも会えなくなるし」


 さらっと、この性悪王子はすごいことを口にした。


「まるで遠い国のことのように、あんたは話しているけどあんたの国の話でしょ!家族と会えないなんてあんまりよ!! 」


 里奈は椅子から立ち上がり叫んだ。

 イリヤが、「落ち着いてください」と里奈を制止する横で、アルフォードが涼しい顔をして里奈を見つめている。


「まさか、あなた……今この城にいる人たちも家族に会わせないとかいっているわけ?! あなた何様なの!?」

「王子様だが?」

「………」



 開いた口がふさがらない――


(まともに相手するのが馬鹿馬鹿しくなってきた……いや、馬鹿な質問をしているのは自分なのかも……)


 言う気が失せた里奈は、溜息をつきじっと目の前のふんぞり返っている、王子を見つめる。


「なんだ? もう終わりか? 自分の馬鹿さにあきれてこの私に質問できなくなったのだろう? そうやってお前は我々の言うことを聞いて、おとなしくしていればいいのだ」


(ただお茶を飲んでいるだけの姿も本当に憎たらしい……一発、いや二発、竹刀しないであの頭を叩いてやりたい!!)


 里奈は鼻の穴を膨らませ、拳を握り自分の怒りと戦う。

 そんな二人のやり取りを、侍従たちは黙って見守るしかなかった。

 

「お前はその魔石によって導かれこちらにやってきた。お前のいた世界とこちらの世界を行き来するには相当な魔力が必要で、それができるのもごく少数の魔法使いだけだ。喜べ、教養のないお前にも取り柄が一つあったということだ。魔力があれば身分も地位も安泰だぞ」

「魔法なんて生まれてから、一切使ったことも見たこともありませんけど? よくもまあ、私がローゼン家の末裔とか見ただけで信じられるものよね。この石だって盗んだものかもしれないのに」


 里奈が正論を並べ、アルフォードに言い放つ。


 『そこまで自分が魔法使いだという周りの評価、信頼があるのはなぜなのか?』


 それはこの世界にきてからの一番の命題だ。


「魔法使いの血のにおいとでもいうべきなのか。もてあましている巨大な魔力がお前自身からあふれて出ている。魔術師や魔法使いはそれを感じ取ることができる」

「あなたも魔法使いなの?」

「魔法使いではないが、魔力はある。魔法使いというのは職業のことをこの世界で指す。自分の魔力を国家にささげる人たちを『魔法使い』。私利私欲のために負の魔力を使うものを『魔術師』という。この世界で魔法使いと名乗れるのは国家が認めた一部の人間に限るが……」


 里奈は首を傾げ、今教えてもらったことを頭で復唱する。

 話が思ったよりファンタジーの世界に走っていて、里奈の情報能力ではすぐに処理しきれない。

 こんなことになるなら、祖父の目を盗んでRPGのゲームをするべきだった。

 そしたかこういった話も少しはついてこれただろう。

 今はリアリストすぎる自分が悲しい。


 肩を落とし眉間に皺を寄せている里奈を見て、イリヤが助け舟を出す。


「殿下、そろそろお昼ですので、話は食事をしながらでいかがでしょう? リナ様も昨日から何も食べていらっしゃらないですし」

「そうだな、腹が減っただのうるさく言われそうだしな」

「………いわない…わよ……そんなこと」

 

 ぐぐぅぅ――



 里奈がごにょごにょと言葉を濁らせたのと同時に、腹の虫が鳴いた。

 里奈はあわててお腹を押さえたが、悲しくも間に合わず……

 この部屋は声もよく響くが、お腹の音もよく響く構造だった。



「なんだ、今の音は!! お前の腹の音はいつもそんなに大きくて変なのか!?」

 

 ゲラゲラと、アルフォードはお腹を抱え笑う。


 里奈はまたやってしまったと自分を叱りたい気持ちになったが、それよりもひどく笑い続ける、デリカシーのかけらもないこの性悪王子に、本当に殺意がわいた。



(絶対、こいつに三発、私の鉄拳をお見舞いしてから元の世界に帰ってやるんだから――!!!!)


 里奈の目標は少しずつ増えていく。

 

 




 


  

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