里奈の秘密
「この国をお前の力で救えですって!? 何言ってるの? っていうか、なんで私が救わないといけないのよ。 あなた王様なんだからあなたがやるべきことでしょ!! 私を巻き込まないでよ!」
里奈は負けじと王子に言葉で噛みつく。
さっきから、とんでもないことに巻き込まれる予感がしてならない。
元の世界へ帰りたいのに、こいつの言うことを素直に聞いたら、ますます帰るどころではなくなるではないか――
里奈は心を強く持って対抗する。
そして、里奈が口を開くたびに、性悪王子の隣に控えている側近の顔は見る見る青くなっていく。
「ぎゃぎゃあとうるさい娘だな! お前がローゼンの末裔じゃなかったら、速攻で牢獄にいれてることを忘れるなよ。まぁいい、今日のところは大目に見てやる。寛大な私に感謝しろ」
そう言いながら、手に持っている里奈のネックレスを里奈に向けて放り投げた。
ネックレスの青い石は空中に投げ出され、弧を描きながら里奈のもとへ落ちていく。
「おっと!危ないじゃない!! 人の物を盗んでおいて投げ捨てないでよ!」
手のひらに収まったネックレスが無事なことを確認し、王子を睨みつける。
ネックレスの青い石は、部屋にいた時みたいに光っておらず、ひんやりと冷たかった。
「おい、それ魔石だから大事にするように。失くしたり売ったりするなよ? お前、それに導かれてここにきたのだろう?」
「え? そうなの?」
確かにこの世界に来る前、自分の部屋で急に空中に浮かんで光を放っていた。
そして、掃除機に吸い込まれここに来たのだ。
このネックレスがやはり原因とは……
(じゃあ、掃除機はいったいなんだったのだろう――?)
里奈がじっと石を見つめていると、呆れたように王子が溜息をついてきた。
「はぁ、ほんとにこいつで大丈夫なんだろうな、イリヤ。こいつにすべてかかっているなんて最悪だ」
「アルフォード様……この方をアムステールの国家魔法使いにすれば、隣国に対抗する糸口となります」
「たしかにそうだが…もっと他に方法を考えるべきではないか? こんなガキだぞ?」
「殿下、たしかに田舎臭い失礼な娘ですが、ローゼンの血は絶対ですよ」
「確かに……」
側近と性悪王子が勝手に会話を始める。
性悪王子の名前は、アルフォードというらしいが、里奈は全く興味がない。
彼のことを名前で呼ぶことはきっとない――率直にそう思った。
「さっきから、ローゼンローゼンって一体なんなの?」
「お前の母親の一族のファミリーネームだ。ローゼン家の人々は代々このアムステール王国の国家魔法使いで、国内でトップクラスの魔力の持ち主が多い家系だ。お前はそこの末裔ということになる」
「はぁ――?!」
里奈はありえないとばかり、再び叫び声を上げた。
日本人と信じてやまない自分、が魔法使いの末裔――!?
つまり亡くなったお母さんは、この国出身ということになるわけで……
そんな話聞いたことなんて一度もない。
亡くなった祖父からそんなこと、教えられていない。
(じゃあ、お父さんはどうなの??)
里奈の考えていることが読まれたかのように、アルフォードは「お前の父親は、お前のいた世界の者で魔法とかこの世界とは無縁だ」と言った。
それを聞いてますます訳がわからなくなっていく……
「ちょっとまって……ちゃんと順番にわかるように説明してよ」
「それが人にものを頼む態度か?」
性悪王子が里奈にむかって鼻を鳴らす。
(くぅ~!! ぜったいこいつをいつか締め上げる!!)
「お願いします、教えてください!」
里奈は深々とアルフォードに向かって頭を下げた。




