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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
14/235

目覚めると……

「ん……」


 ゆっくり目を開けると、なにやら豪華すぎる装飾の天井が目に飛び込んできた。

 それもやたら近く感じる。

 

「は?」


 里奈は飛び起き、一体どうなっているんだとキョロキョロ部屋を見回した。

 その部屋は、里奈の部屋ではもちろんなく、全く身に覚えのない部屋だ。

 

「ちょっとまって……たしか、馬車で王宮に向かっていて……リチェーヌさんと話しながら寝てしまったところまでは覚えてる。その先って――」


 ベッドから飛び降り、部屋をぐるぐる回る。

 ベッドは豪華な天蓋てんがいつき、天井からはシャンデリアがぶら下がり、壁には美しい絵画がかけられ、カーテンとベッドカバーは真紅で統一。

 大きな鏡の前のテーブルには花瓶に真紅のバラが飾られていた。


(まるで、ベルサイユ宮殿の一室……)


 あまりに見事な部屋に、自然と溜息が出る。

 こんな知らない世界の、知らない部屋で何も臆せず、ぐうぐうと寝ていたなんて……

 里奈は自分の神経の図太さに呆れた。

 

 

 そっと、真紅のカーテンを開けてみると、まばゆい光が部屋に差し込まれ、蝋燭の火だけの薄暗かった部屋が一気に明るくなり、暗くて気づけなかった装飾品の数々が、もっと里奈の目に飛び込んできた。

 お姫様にでもなった気分にさせられた反面、ますます現実から遠ざかっていく自分の身の上の危険を感る。



「入ってもよろしいでしょうか?」


 ノックの音と共に、女性が扉の外から声がした。


「あ、 はい、どうぞ!!」


 里奈は近くにあった鏡で自分の寝癖を整えながら、返事をする。

 しかし、くせ毛の髪はちょっとやそっとでは綺麗にはまとまらず、努力するのを止め、扉近くで待機。


「失礼いたします。わたくし、この度リナ様の身の回りのお世話を仰せつかることになりました、アンジェリカ・コーエンと申します。宜しくお願いいたします、リナ様」


 自分のことをアンジェリカと名乗った彼女は、里奈と同じくらいの背丈の丸いふちなしメガネを掛けた三つ編みのかわいらしい女性だ。

 年は二十代ぐらいだろう。


 彼女は、えんじ色の大きいリボンのついた紺色のロングワンピースに白いフリル付のエプロンを身にまとい、黒いタイツにしっかりと磨き上げられた黒のブーツ、胸元には金色のバラのバッジと紋章がついていた。


 (オタク男子が萌える系ね……ってか、この人胸デカい……! どうしたらそんな豊満なお胸が手に入るのだろう――?)

 

 里奈は、深々と頭を下げるアンジェリカに顔をあげてくださいと言いながら、揺れる胸元を観察しそんなことを考える。

 意外と心には余裕があるようだ。


「こちらこそ、よろしくお願いいたします。あの、里奈と呼び捨てで構いませんから!! 私の方が年下だと思いますし!」

「それはできません!! アルフォード殿下からの命令ですので」

「アルフォード殿下??」

「ええ、さあ、お着替えしましょうか?」


 にやりと笑みをこぼしながら、アンジェリカは手をパンパンと叩き、自分の部下である侍女3人を部屋に招き入れる。

 彼女たちの腕には、ドレス、バス用品、化粧道具、装飾品などが抱えられて、それらをテーブルの上やベッドの上に置き、並べた。


「さあ、みなさん。リナ様を変身させますわよ! まずはお風呂場へお連れしてちょうだい!!」

「え!? ちょっと待って!! 」

 

 里奈は、強制的に風腕と肩を掴まれながら風呂場へ連れて行かれ、衣類を彼女らにもぎ取られる。


「ぎゃ――――――っ! やめて――――!!」


 おしとやかそうな彼女たちは、別人へと変貌し目が必死だ。

 そんな彼女に負けじと、里奈も必死で抵抗する。

 

「ちょっと待って、ほんと自分でできるから!! 」

「大丈夫ですよ。ここにいる者たちは王宮侍女試験を突破した精鋭でございますので」

「いやいや、そういうことではなくて、お風呂は自分で入るから、皆さん出て行ってほしいってことで」

「何をそんなに恥ずかしがるのです? どんな姿であってもリナ様はお美しですよ」

「もう、本当に出て行ってよ~。じゃないとお風呂はいらないから!! 」


 里奈が頑固として拒否してくるので、しぶしぶアンジェリカたちは折れ、部屋で待機することに。

 かなり侍女たちも肩を落とし、がっくりとしている。


「ああ……なぜそこまで拒否なさるのでしょう? これでも少し手加減をしてますのに……きっとシャイなお方なのでしょう……ああ、早くあの美しいお肌をさらに磨きあげたいですわ……」


 目をつぶりながら何やら想像し顔を赤らめ、ふふふふ…というかなり怪しい笑いを浮かべてアンジェリカは扉の前で行ったりきたりしている。

 部下の侍女三人は、また始まった……というように特に驚きもせず、アンジェリカを見つめる。

 

 これさえなければ立派な上官なのに……


 三人は溜息をつく。


 

 一方、里奈は、彼女らが出て行ったことをしっかり確認し、扉の鍵をかけた。

  

 これで好きに入ってこられない。

 ふうと一息つき、これまた高級そうな椅子に腰かけた。


 かなり広い脱衣所で、金の装飾がされた大きな鏡、棚にはバスローブやふわふわのバスタオルがきれいに並べられ、化粧台には化粧水や美容液らしきものがたくさん並べてある。



「一体なんなの……あの人たち変態なの……?」


 その時は全く気づかなかったが、よく考えれば、高貴な身分の者ほど身の回りの世話はすべて侍女や侍従がするものだということを、昔歴史の授業で聞いたような記憶が蘇る。

 

 

 そう考えると、やはりここは王宮なのだろうか――?



 里奈は頭を抱えうなりながら風呂場へと向かった。

 

 

 



 




 

 




 

 


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