里奈、王宮へ行く
紺色のマントに、羽のついた帽子、白いズボンに茶色のロングブーツ。
腰には剣らしきものを下げた長身の男が、じっと自分のことを見てくる。
(歴史博物館とか、歴史の教科書しかみたことない衣装……かなり怪しいわ)
こげ茶色の髪に茶色の瞳、顔立ちも整っていて背もかなり高い、少女マンガに出てきそうな男は、いきなり腕をつかみどこかへ連れて行こうとした。
「ちょっと、あんた何するのよ!! 変態!!!」
里奈はその手を振りほどき、急いでその男と距離を取る。
「っちょっと! あなた一体なんなの!? さては、また誘拐犯か新手の詐欺師ね!! 言っとくけど、私本当に魔法使いなんかじゃないわよ!? 誘拐して売り飛ばすつもりだって無駄だから!!」
一歩ずつゆっくりイケメン男は距離を縮めてくるので、一歩ずつこちらも後退する。
「怪しいものではありません。あなたを王宮へお連れするよう、アルフォード殿下言われております。近くに馬車を用意しておりますので、どうぞお乗りください」
「いや、十分怪しいんですけど!」
「あの~」
そんな二人のやり取りを見かねた、女性が里奈に向かって思ったことを伝える。
「その人のいうこと本当だと思います。マントに王家の紋章があるので、きっとこの方は王宮からの使者だと思いますよ」
「え!?」
里奈が目を瞬かせた一瞬、男はぐいと里奈の腕を肩に回し、里奈を抱え上げた。
「な、なにすんの!! スケベ変態!!触るな~!!」
「足から血が……少し黙っていてもらえませんか? 」
その男は噴水の縁に里奈を座らせ、ポケットから取り出したチーフを裂き、里奈のそれぞれの足の裏に巻きつける。
里奈はその状況を黙って見つめる。
黙っていろと言われたのだから仕方ない。
(一体いきなり何なの!? こんな事されたって惑わされないわよ!)
その男が里奈の足を手当していると、同じような制服を着た男がやってきて、イケメン男に指示を仰いだ。
「そこの鞄を積んでくれ。これが終わったらすぐお連れする。あと、その女性に礼の金を渡せ」
短く返事をしたのち、里奈のトランクを持って部下らしき男が去っていった。
(私のトランク~)
男は里奈を抱きかかえ、馬車へ向かう。
「ちょっと、自分で歩けるから!! どうして私なわけ? 理由を説明してよ!」
里奈は男に向かって吠えるが、男は無言のままだ。
すると、
ぎゅるるる……
と大きなお腹の音が鳴った。
(なんで、こんな時に!!! 私の馬鹿~!!)
里奈の顔は見る見る真っ赤になっていく。
「中に、飲み物と軽食を用意しております」
里奈は仕方なく、男の言うとおりに馬車に乗り込み、王宮に向かってみることにする。
(まぁ、腹が減っては戦はできないしね……)
小さいころ、『知らない人にはついていってはいけません、知らない人からものをもらってはいけません』と教えられたことなんて、里奈には関係なかった。




