プロローグ:王子の憂鬱
いつもなら、起こされるまで起きないが、ここ最近自ら起きるようになった。
そのおかげで、規則正しい生活が送れているのはいいが、やや寝不足……
目を擦りながら、上体を起こし伸びをすると、案の定、窓の外から不気味な叫び声が聞こえてきた。
「や――――――――――――」
「とぉ―――――――――――」
またか……
なんで、こう毎日毎日早朝からこう雄叫びを上げるのだ?
周囲を気遣う気はないのだろうか?
ゆっくり車椅子に腰を移し、窓へ向かった。
この奇声の犯人が、今日も威勢よく騎士団のメンツと素振りをしている。
「何度いったら分かるんだ……!」
朝から武術の稽古に、なぜ精を出す精神が理解できない。
騎士団に交じって武術を稽古してどうするのか?
魔法使いなのだから、ちょっとは魔法の勉強をすべきなのに……
頬杖をつきながらじっと様子を眺めていると、
「殿下、お目覚めですか?」
とイリヤが扉をそっと開けた。
「この雄叫び……なんとかしろ。ゆっくり寝てられないじゃないか……」
「リナ様ですね。相変わらず元気な方です。今日で一週間ですね。殿下の早起きも続いていて、私はうれしいですよ」
「……こっちは迷惑してるんだが」
「いいじゃないですか。殿下も散歩に出られてみては? 気持ちがいいですよ」
そういいながら、イリヤは手際よく分厚いカーテンを開けていく。
眩しい光が部屋に差し込み思わず目をふさぐ。
今日も実にいい天気だ。
「この風紀をなんとかしないと……」
「は?」
「だから、あいつがずっと騎士団の服を着て、騎士団のやつらと一緒に稽古してるのは間違っている! 一応、あいつは女だぞ!?」
拳を握りしめイリヤに向かって思いをぶつけた。
そう……もう一週間。
これ以上見過ごすわけにはいかない。
このままでは、アムステールの風紀が乱れてしまう。
アムステール第一王子として、このままにしておくわけにはいかない。
今日こそはガツンと言ってやらねば!!




