朝早くに……
「あ~今日もいい汗流せた! 皆ありがと~!」
「いえ、お嬢、こっちこそ稽古ありがとうございました!」
「お嬢の剣さばきは、惚れ惚れしやす! あの演説でも凄かったっす!」
「マジですごいですよ! 俺らよりセンスあると思いますよ。お嬢が女じゃなかったら、騎士団団長も夢じゃなかったですよ」
騎士団のメンツが里奈を取り囲み、里奈を褒め称えた。
里奈は照れ臭そうに「そんなことないよ~」とまんざらでもなく、頬を赤らめヘラヘラ笑う。
と、その時、彼らの背後から、
「お前ら……リナ様になんてことをさせてるんだ!! ちょっとは身をわきまえろ! 殿下になんて申し上げたらいいんだ!?」
「ひぃぃぃぃ―――――」
「ちょっと、カール、誤解だって。私が頼み込んで、無理やり一緒に稽古させてもらってるの! だから、皆を責めないでよ!」
「お嬢!!」
「姉様~!!」
里奈の背後に隠れる騎士団の部下たちを、睨みつけたカールは、キョロキョロと団長の姿を探す。
「団長!」
斜め後ろにいた団長を見つけた瞬間、ツカツカとジャックの元へ行き、怒りの矛先を団長ジャックに向けた。
「しっかり部下を監督してくださいよ! こんなところに椅子に座って、見てるだけじゃ意味ないですよ! ってうわ……酒くさ……」
「そう、カリカリするなよ、カール。血管切れちゃうよ~ん」
「よ~んじゃないです! 団長! また、朝まで飲んだっくれてたんですか!? いい加減にしてくださいよ、ほんと!!」
ギャーギャー叫ぶカールが、なんだか可哀そうに思ってきたリナは、隣のエリックに声をかける。
「ねぇ、止めなくていいの?」
「ええ……。いつものことですから。今日も平和ですね」
「いつもああなのね……。カール……将来、剥げちゃいそうね……」
「それより、お嬢、時間大丈夫ですか?」
「え!? やば! 早く部屋戻って、シャワー浴びて着替えないと!!」
そう言うなり、リナは手に持ってた竹刀のような木刀をエリックに渡し、全速力で走った。
「みんな~ありがと~また明日~!」
元気よく走り去る里奈の姿を眺めながら、 残された騎士団のメンバーたちは、互いの思いを打ち明けた。
「あんなにハツラツとした女の子は初めてだ。いや~この国も変わったな」
「いやいや、お嬢ぐらいだぞ。あそこまで気が強いのは、俺はちょっと……」
「まぁ、そうだな。ぶん殴られたら、ただじゃすまされないだろうな」
「先輩、俺はああいう女に殴られたいんすけど。ああいう人も、うちの騎士団には必要じゃないっすか?」
「おまえ~変態だな~。お嬢が入ったら間違いなくお前は下っ端のままで、こき使われるだろうよ、ガハハハ」
里奈という存在は、いろんな場所で新たな風を巻き起こそうとしていた。
アムステールは今日もいい天気だ。




