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私は魔法使いなんかじゃない!  作者: いと・うさぎ
アムステール王国再建物語Ⅰ
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今までの話②

「ん? これが、あの聖剣ってことなのか?」


 アルフォードが鋭い指摘をした。

 その問いに紅茶を飲みながら、里奈はゆったりと答える。

 

「そうだよ。これは仮の姿なんだって。皆はミストルティンのこと知ってるの?」

「知っているもなにも、ミストルティンは、この国この世界で伝説の剣だと言い伝えられている。それも、お前の祖母であるメアリー様も行方を捜していたんだ。まさか、お前が見つけるとは……」

「お前、リナに対してほんと失礼な奴だな! お前なんか、リナがこっちに戻ってこなかったら死んでたんたぞ!」


 それまで里奈の膝で大人しくしていたフェイが、突然テーブルの上に乗ってアルフォードを威嚇。

 里奈はそんなフェイの首根っこを掴み、引き寄せた。


「こら! フェイ。テーブルに乗っちゃダメでしょ!」


 里奈にとってはフェイは魔獣というより、ペットのネコ。

 首根っこを掴まれているフェイに対して、アルフォードはいい気味だとフンと鼻を鳴らす。


「あの……リナ様。先ほどからフェイと呼んでいるこの動物は?」


 今度はイリヤがアルフォードにお茶を注ぎながら、質問する。

 やはり、彼もこの不思議な生き物のことが気になっていた模様……

 里奈は「ごめん、ごめん」と謝りながら、話を続ける。



「意識を失っていたとき、どうやら私はミストルティンの中にいて、そこでこのフェイに出会って、ミストルティンとの契約を持ちかけられたの。ミストルティンの主になる代わりに、一つだけなんでも願いを叶えてあげるって」

「なんでも!?」

「うん。で、契約しないとミストルティンから出れないみたいだったから、とりあえず契約して、めでたくこっちに戻ってこれたってわけ」

「その願いごとは使ったのか?!」

「うん。それが、この子フェイだよ」

「は?」


 アルフォード、イリヤ、リチェーヌが怪訝そうに、里奈の膝に乗っているフェイを見つめる。

 フェイはぷいっと皆から顔をそらした。

 もう彼らとは一言も口を聞くつもりもないらしい。

 話にも飽きたのか、目をつむり、ふて寝を始めた。

 

 フェイに構うことなく、里奈は話を続けていく。


「フェイはね、ミストルティンの主を見つけるために存在してたから、主が見つかったら消えてしまうんだって。さすがに、ミストルティンの使い方とか魔法のこととか、私は何も分からないから、フェイに側にいてもらいたくて、その願いごとを使って、フェイをミストルティンから切り離したの。で、名前もないっていうから、昔飼っていた猫の名前をつけてみたよ。いい名前でしょ?」

「ボクの名前は飼い猫の名前からだったのか!?」


 得意げに話す里奈とは裏腹にフェイは、急に起き上がり、悲しそうに彼女を見つめた。

 アルフォードは、信じられないと言った顔で、里奈に確認する。


「……じゃあ、もう願いは叶えられないと?」

「そうだね。終了だね」

「――――――!?」


 アルフォードは口を半開きにして絶句した。


 アルフォードだけでなく、この場にいる皆がなぜか、がっかりしている。

 何がまずかったのか、里奈には分からず、首を傾げた。

 


「リナ……ちょっとは考えて願いごとしたのか? 何でも叶ったんだろ? その為に、皆必死でその聖剣を探してたんだが……」

「失礼ね! ちゃんと考えた結果よ! フェイの何が悪いの? ミストルティンの使い方、この中に知っている人はいるの?」


 里奈は、皆をじろっと見回し言った。

 そんなに責められるべきことなのかと腹がたったが、自分が支払った『対価』についてはあえて、言わないようにした。

 もしこの場で言ったら、また責められそうな気がするし、皆を心配させてしまうだろう。

 里奈は口をとがらせ、皆の反応を待った。 


 そんな怒った里奈をなだめようと、意外にもリチェが一番に口を開く。


「悪いとは、だれも言っておりません。それに、願いの権利は契約者のあなたにありますし。リナ様がそれでよければいいんです」

「でも、みんな納得してないじゃん……」

「みんな欲深いのですよ。私を含めてね。それよりも、本当に良かったあなたが無事で」

「ありがとう……。皆に心配かけちゃったね……」


 しんみりと言う里奈に、アルフォードが、


「別に……そんなの……気にするな。それより、なんでもかんでも、与えられたものを食べたり飲むのは止めろ。ほんと食い意地が張ってるんだから」

 

と、照れ臭そうに言った。


「アル、ちゃんと約束守ってくれてありがとう。演説ちゃんと聞いてた」

「俺はやるときはやるんだ。別にリナに言われたからじゃない……」

「でも、殿下は、すっごくリナ様のこと心配していたんですよ~」

「多分一番心配されてたんじゃないでしょうか?」


 アンジェリカが、皿たちを片付けながら、事実を伝える。

 イリヤもそれに同意し、アンジェリカの言葉に付け加えた。

 

 その一言で、アルフォードの顔はますます赤く染まり、耳まで真っ赤になっていく。

 アンジェリカはもちろん、周りの侍女たちも口を覆いつつ、にやけていた。


「お前たち! 余計なことを言うなって!」

「あら、殿下、照れてるのですか?!頬が赤いですよ~」

「アンジェリカ! それより、リナ、お前どうして騎士団の制服を着てるんだ?!」


 話を無理やりそらそうと躍起になった王子は、今までスルーされてきたことに触れた。


「あ、これ? どう、似合ってるでしょ。セラフィードさん言って無理に用意してもらったの。演説会場に行くには騎士団の恰好していた方が都合いいかと思って」

「女であるお前が、ズボンをはくなんてありえない!! それも騎士団の制服を! いいか、アムステールでは女はスカートしか穿かないんだ」


 

 真剣な顔で里奈に真面目に説明するが、里奈には全く通じないようで……

「なんで? 法律があるの?」

「法律? そんなものは……ないが……常識だ!」

「何よそれ。別に女がズボンはいたっていいでしょ! この現代に女はスカート、男はズボンだなんて、そんなの古臭いわよ」


 

 ああいえばこういう里奈に対し、アルフォードは反撃する言葉が見つからない。

 里奈を言い負かすには、まだ修行が足りなかった。

 

 

 

 



 

 

 

 


 

 










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