今までの話①
「リナ様~!大丈夫ですか!?」
部屋に着くなり、アンジェリカが目を潤ませながら、慌てて近寄ってきた。
リチェはベッドまで行き、里奈ゆっくり下ろす。
「アン、大丈夫だよ。ありがとう。ちょっとエネルギーが切れちゃって」
「何か食べたい物ありますか? すぐ用意させますので!!」
「あ、ありがとう。じゃあ……お肉が食べたい」
「お肉ですか?! かしこまりました! ではすぐに用意いたします!」
アンジェリカはそう言って、風のように部屋を去っていった。
あまりにも素早すぎて、フェイの分を頼むことができず……
「ごめん……フェイ。私の分あげるから」
「いいよ、別に。ごはん食べなくても平気だからさ」
「本当に?」
「うん。というか、ずっと眠ってたから忘れちゃった。でも大丈夫だよ」
自然に会話をする里奈とフェイ。
その様子を、リチェは眉間に皺を寄せ観察していた。
確か里奈は昨日から今朝まで、ずっとこの部屋で眠ったままだった。
この部屋で、アンジェリカやセラフィードがずっと看病していた。
どうやってあの聖剣を手に入れたのか?
魔獣というこの奇妙な生き物は、どこから現れたのか?
リチェーヌが口を開こうとしたその瞬間――
「リナ! ちゃんと説明しろ!!」
勢いよく扉が開き、頭に包帯を巻いたアルフォードが、イリヤに付き添われやってきた。
ひどく出血していたわりには、ずいぶん元気そうだ。
里奈はそんな王子の姿を見て、少しだけほっとする。
「ちょっと、病人の部屋なんだけど?」
「俺は怪我人だが?!」
「……あのね……怪我人っていうなら、大人しくしてなさいよ」
「うるさい。それより、いつどこで、お前はあの聖剣を手に入れたんだ!? お前はずっと寝込んでいただろ。黒魔術にかかって、瀕死だったのになぜ魔法が使えるんだ? もう本当に大丈夫なのか?」
いっきに自分の疑問を解消しようと、里奈に質問をぶつけてくる。
そして、アルフォードによって、自分の疑問も解消されそうだと思ったリチェは、アルフォードに自分の質問を託すことにし、黙って彼らを見守ることにした。
「そんな、いっきに言われても困るんだけど……。ちゃんと順番に説明するから」
「リナ、しなくていいよ。こんな奴ら、別に説明する必要はない!」
「フェイ……まだ怒ってるの?」
「ふん! 別に怒っていない!」
里奈の膝で、ヘソを曲げ顔を伏せるフェイを優しく撫でながら、里奈はどこから話せばいいのか考える。
そうこうしているうちに、アンジェリカと侍女たちが料理を持って戻ってきた。
アンジェリカたちは、手際よく料理を並べていく。
サラダにコンソメスープ、そして里奈のリクエスト通りのローストビーフはマッシュポテトが添えられ、食欲をそそう匂いが部屋いっぱいにたちこめた。
テーブルに並べられた料理を見た瞬間、里奈は説明どころではなくなった。
「説明の前に、ご飯食べさせて!」
そう言いながら、急いで椅子に腰かけ、ナプキンを手に取った。
アルフォードは口をあんぐり開け、里奈の食欲をただじっと見つめる。
「おい……もっとゆっくり食べたらどうだ? 一応お前はずっと寝込んでたわけだし……」
「だっておいしいんだもん!」
「リナ様……急いで食べると胃に負担がかかります」
あまり作法にうるさくないリチェまで、とうとう里奈の食べるスピードに苦言をさした。
でも、里奈はかまうことなく目の前の料理をどんどん平らげていく。
その食欲は、昨日まで高熱でうなされていた病人のものとは、とても思えないほど。
瞬く間に、テーブルに並べられた料理たちが消え、白いお皿が現れる。
メインディッシュのローストビーフを食べ終わるころには、食欲が満たされたようで、やっと話す余裕が生まれた。
里奈は注がれた紅茶を片手に、自分に起こったことを順番に話していく。
「えっと……どこから話せばいいかな。私もイマイチよくわかってないんだけど。私を黒魔術から助かったのは、この魔石ミストルティンのおかげみたい」
里奈はそう言いながら首からかかっている魔石を外し、手のひらに乗せて皆に見せた。




