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黒うろこと白もふと銀おたまと

■この小説は平日18時更新予定です■


ついに…ついに…!ブクマが30件を超えた…!(T_T)

妖怪お気に入りはずしが出ませんように!出ませんように!(←切実)

「何でいるのよ!」


 ムッカが呆れたように叫ぶ。ユエはなんと言うか、溜め息しか出てこなかった。森に聞こえるようにと叫んだあの言葉は何だったのか。


「オレも、行く」


 ティハは役人たちの好奇の目線にさらされているのも意に介さず、堂々と道を塞いでいた。ユエの家から持ち出したのか、人間の姿で旅装一式を着込んでいる。バルバの家に見張りが集中しているのを良いことにこっそり忍び込んだのだろう。


「……森から離れて大丈夫なの?!」


「この二日、少し離れたところにも行ったが、他の木からも力が吸収できると分かった。だから、大丈夫だ」


 ムッカとティハが周囲に聞こえないよう小声で話す。ユエは胡乱な目付きでその様子を眺めていたが、このままでは埒が明かないとギードを振り向いた。


「すみません。取りあえず、バシリカまで同乗させても構いませんか。少し、話がしたいので」


「あ、ああ……」


 ギードは狼狽えながらも頷いてくれたので、ユエは霊代のふたりを馬車の幌に引っ張り込む。しばらく役人とギードの間で交わされる会話が聞こえていたが、問題ないと判断されたのか馬車は再び走り出した。




「……じゃあ、本当に王都まで付いてくる気なのね?」


「ああ。絶対に、霊代だとばれないようにする。だから、お願いだ」


 ガタゴトと揺れる馬車の中、ティハは真剣な面持ちでユエの答えを待っている。その隣のムッカは例のごとく諦めたような顔をして馬車の床に足を投げ出している有り様だ。


 ユエはこれからの苦労を想像してこめかみを押さえた。ティハのその気持ちに嘘は無いのだろうが、「人間らしいふり」が正しく実行できるかと言われると話は別だ。きっとまた色々な失敗をやらかすに違いない。それに、元はと言えばティハを庇ったのに、霊代研究の総本山である王都に彼を連れていったのでは意味がない。もし霊代だということが明るみに出れば追われることになるのは必須だ。


「旅の資金は充分だし、迷惑はかけない!」


 悩むユエの首をなんとか縦に振らせようと、さらにティハは腰の鞄から大金の入った袋を取り出す。じゃらり、と重そうな音を立てたそれを見たユエは、現金にも心が揺れたのを自覚した。


 旅費としてバシリカの役人が用意してくれた額は微々たるもので、後は領主様に相談してほしいと言われてしまったのだ。つまり、それまでは自分の財布から都合してくれということだ。好きで王都に行く訳でもないし自費で負担するのは嫌だったが、何せユエが召喚に応じなければ莫大な罰金を取られると言うのだから頷くしかなかった。


 というわけで、旅の準備で財布の中身がすでに心許ないユエにとって、現金を持ったティハはかなり魅力的に見えてしまった。たかるつもりはないが、何かあったときにお金の心当たりがあるのは非常に安心できる。

 ちろり、とお金の入った袋を見やってユエは口を尖らせた。


「大人しく、していてくださいね」


 結局ティハの同行は許されることになった。



 *****



 バシリカの街まで、馬車で揺られること四日。その間、ユエは慣れない固い床に悲鳴をあげていた。恥ずかしいが、街に着いたら宿でお尻に湿布を貼るはめになりそうだ。今は水が貴重でそう簡単に使えないので我慢するしかない。


「ユエちゃん、大丈夫か?」


 野営の度によろよろと馬車から降りてくるユエに、ギードは心配そうな顔をする。しかし、ユエもいっぱしの乙女なのでまさか「お尻が痛いんです」とはっきり言うこともできない。言わなくてもギードは察していそうな気もするが、自分の口から言うのは無理だった。


 柔らかそうな草地に敷物を敷いて、そっと腰を落ち着けた。馬車から降りてすぐの今は、まだ体がふわふわと揺れている感じがする。

 ぐったりしているユエとは対象的に、霊代ふたり組はぴょんぴょんとその辺りを跳ねている。ムッカは本で見た野営料理の実践だとはりきり、ティハは薪を集めに行くと野営地脇の森に飛び込んでいった。ついでに英気でも養うつもりなのだろう。


「しかし、まさかティハが待ってるとは思わなかったな」


「……まったくです」


「結局、王都まで付いてくるんだろう?」


「面倒をかけてすみません。何にでも興味を示すので……」


「いや、まあユエちゃんも親戚が一緒の方が心強いだろうし、一人増えたところであまり変わらないから気にするな」


 実は酒場で相席していたらしいティハとギードはすぐに馴染んだ。馬の轡を外してやりながら、彼は苦笑している。


「水場があったぞ!」


 一度は森に飛び込んでいったティハが再度現れて、森の奥を指差す。


「じゃあ、馬たちを任せてもいいか?」


「ああ。任せてくれ」


 その一言で、ギードだけでなく役人たちまでもが我も我もと馬を預けはじめ、結局ティハは総勢五頭もの馬を連れて森に入っていく。

 元々森のトカゲだから危険を感じないのか、馬たちはティハの言うことを驚くほど良く聴くのだ。手綱を引かなくても嬉々として後を付いていく様を一度見てからは、役人も手間が掛からなくていいと思ったのかティハに小金を握らせて世話を任せるようになった。

 お金が無くなっても、馬の世話で食べていくことができそうだな、とユエはその様子を見ながらぼんやり思った。




 その夜。幌馬車の中で、ユエは蝋燭の明かりを頼りに古地図を広げていた。


「ええっと……シュトカ村はここだから……」


 一度も村を出たことが無いので地理感覚が掴めない。地図をくるくると回しながら、ユエは頭を悩ませていた。大部分がユエの知るこの国の言葉で書かれているが、ところどころ理解のできない崩れた文字でメモが書かれているのも原因のひとつだ。


 お父様、昔は字が汚かったのかしら。


「うーん……」


 ユエが唸ると、隣で寝ているムッカが身じろぎする。「おたま」だった時は睡眠を必要としなかった彼女だが、元の姿に戻れなくなってからは力を節約するためかよく寝るようになった。今もすやすやと気持ち良さそうに寝息を立てている。その幼い見た目にふっとユエは頬を緩め、また地図に目を戻した。


「誰か地図の見方を教えてくれればいいのに……」


 眺めるのに疲れて、溜め息混じりに切々とこぼした。そのとき。


「なに?!」


 かああっと身体の中が熱く、苦しくなっていく。はあ、とユエが苦痛の息を漏らすと、その痛みは唐突に消えた。


「……何だったの?」


 怪我の後遺症だろうか。肌に傷は残っていなかったが、内臓は触診でしか確認できていないので不安になる。憂い顔で腹の辺りを撫でていると、たしたし、と何かに膝を叩かれた。

 ムッカが起きたのかと顔を上げ、予想とは違うものにユエは目をしぱしぱと瞬かせた。


 森でよく見るイタチに似た動物。

 それが、きらきらと目を輝かせながらユエの膝頭に小さな手を乗せていた。いつの間に幌馬車に入り込んだのか。夏にも関わらず奇妙にも真っ白な冬毛に黒い襟巻き模様のイタチは、そよそよと髭をそよがせていた。


「……か……っ」


 可愛い……っ!


 ユエは叫びそうになった口許を必死に押さえた。夜も遅いし、外で天幕を張っている男性たちももう眠りについている。

 ふかふかの毛並みに、もみじのような手をちょこんと乗せている様子は目にも愛くるしい。しかし、しかしだ。腹でも空かせて馬車に忍び込んで来たのだろうが、餌付けしてしまうとこの子にためにならない。そうユエは心を鬼にして、イタチを追い出そうと腰をあげた。


「あれ?地図の見方を教えてほしいんじゃなかったの?」


 不思議そうな声がして、ぴきり、とユエは固まる。……まさか。さっきの痛みって。

 恐る恐る下を見ると、イタチの五本指が器用に地図を指差し、本体はユエを見上げている。


「これだよ、これ。見方知りたいんでしょ?教えてあげるよ」


 そう聞こえた声と同時にイタチの口も動く。これでは疑いようもない。


 今度こそ、本当にユエは叫んだ。




「どうして……っ?ねえ、どうなっているの……?!」


 涙目のユエはさっきから壊れたようにつぶやき続けている。自分では恐れて近寄ってこない役人たちに「ムカデが出てユエが驚いたようだ」とティハに説明させたムッカが、それをなだめようと背中をさする。地図の上では白イタチがのんびりと身つくろいしていた。


「一応、皆納得してくれた」


 ティハが幌馬車に戻ってくる。どんよりと疲れた雰囲気の中、白イタチだけが「おつかれ!」と小さな手をあげ、陽気にその労をねぎらった。


「……やっぱり、ユエの霊代、だ」


 目を凝らしてイタチを見ていたティハは驚きを隠せない。彼の目にははっきりとユエと白イタチを繋ぐ契約の糸が見えている。それを聞いたユエはがっくりと頭を落とした。


「私、また寿命が縮んだのかしら……」


「というか、霊代ってこんなに簡単に生まれるものなの?それだったら、もっといっぱい居てもいいわよね?」


 ムッカもしきりに首を捻っている。ティハにもわからないようで、困ったように眉を下げた。


「ところで、あんたは何ができるの?」


 ムッカの問いに、ごろりと寝転んでいた白イタチがしゅぴっと立ち上がった。


「聞いて驚けみなの者!地理ならボクにお任せ。今いる位置が地図上でわかる。あなたの旅にぜひ一体、とっても便利な霊代だよ!」


「……それだけ?」


「それだけってなんだよ!旅する上で自分の現在地を知ることはこのうえなく重要なんだぞ!」


 白々しい目を向けたムッカに、白イタチはぷんすかと怒ってみせる。尻尾を膨らませても実に可愛い姿だが、ユエはそれに反応する元気も無かった。


 結局、白イタチが生まれてしまった経緯は分からず仕舞いで、翌日ティハが森でなつかれたということで連れ帰った振り(・・)をした。馬たちもティハにすぐ慣れていたので、動物に好かれるということで特に怪しまれることはなかったが、白イタチが馬の背中で堂々と寝転がっているのを見たときはさすがに目を覆いたくなった。


 地図の霊代である白イタチは「テン」と名付けられ、霊代ということは伏せられたまま旅に同行することになった。

とうとう登場しました白もふ。うふふ。

いやいや、好きだからって安易に登場させた訳じゃありませんからね。

…ええ、ホントウデストモ(・3・)


果たしてイタチに需要はあるのか?!笑

今日もご覧いただきありがとうございます。

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