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一目惚れ伯爵令嬢と下僕たち  作者: 中里勇史
大人への旅路

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騎士の戦い

 フェーンは、「状況は」把握した。


 姫様が逃げない!? これではアディも逃げられない。

 三対一では勝ち目がない。

 まず一人を確実にしとめる。

 だが、その間に一人はポルメ、もう一人は私に向かってくる。

 せめてポルメが少しでも粘ってくれば、姫様が逃げる時間くらいは……。


 考えろ。

 姫様たちだけでも助かる方法は!?

 何も思いつかん!


 野盗の一人がフェーンに突っ込んできた。

 振りかぶった長剣をフェーンの頭上に振り下ろす。

 フェーンは、ポーディレン卿(ベデンズィード)から拝領した長剣を抜いた。

 野盗の剣を受け止めて、右下脇に流す。

 そのまま、右下から力任せに左上に切り上げた。

 斬撃は野盗の胸当てに阻まれたが、切っ先が相手の顎をかすめる。

 切っ先を避けるため、野盗は反射的に顎を上げた。

 隙!

 切り上げた剣を、振り下ろす。

 切っ先が野盗の顔面を切り裂く。

 野盗が悲鳴を上げて顔を押さえた。

 剣を引いて一気に突く。

 野盗の腹に突き刺さった。

 致命傷――。


 あと二人!

 姫様は!?


 ルルーの上で縮こまっている。

 アディが、ルルーの手綱を持って反対方向に誘導しようとしている。


 野盗は!?

 一人がポルメに襲いかかっている。

 ポルメは、長剣と短剣の中間の長さの剣で受けた。

 二合、三合……ポルメは、敵の斬撃を受け流しつつ防いでいる。

 この間にもう一人を……。

 もう一人は、姫様たちの前に回り込んでいた。


「ざ~んね~んでした~」


 笑いながら姫様たちに迫る。

 人質にされたら、全て終わりだ。

 だが、もう間に合わない。


「姫様! アディ!」


 叫んでも、どうにもならない。

 私と姫様たちの間には一〇メルほどの距離がある。

 野盗は、もうアディの腕をつかもうとしている。


 守れなかった……。


「げふっ」


 アディの腕をつかみかけていた野盗が、奇妙な声を出した。

 腹から剣が生えている。

 野盗が口から大量の血を吐き出した。


 何が起こったのか分からない。


「フェーン! 詐欺師さんを助けろ!」


 低い声が響いた。

 混乱していたが、体は動いた。

 ポルメと戦っていた野盗の脇に馬をねじ込んで、長剣を野盗の首にたたき込む。

 野盗は声もなく絶命した。


 三人の野盗は、かつては生きていた、ただの死体になっていた。

 勝った、のだろうか。


 姫様とアディの向こうに、知っている男がいた。


「ピーデ……なぜ」


 目付きが悪く、冷笑癖がある男。

 ピーデが無表情にフェーンたちを睨んでいた。

 ただ目付きが悪いだけかも知れないが。

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