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一目惚れ伯爵令嬢と下僕たち ~イケメンを探していたら陰謀を暴いてしまいました~  作者: 中里勇史
帝都に向かって

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愚行の代償

 ストルン街道をひたすら進む。とにかく、距離を稼がねばならない。追い付かれたら、私の旅はそこで終わってしまう。


 帝都は遠いという。どれだけ遠いのか。

 小腹が空いたので、ちょっと休憩。

 街道の脇にルルーをつなぐと、荷物を開けた。


 焼き菓子は、無残に粉砕されていた。

 ほとんど粉だ。粉みじんだ。木っ端微塵だ。

 ちょっと涙が出た。


 まさか!

 お茶の道具も割れていた。粉々だった。

 なぜこんなことに!?

 ……。

 そうか、自室の窓から投げ落としたからだ。

 荷物はしっとり湿気っていて、中身は粉々……。

 結構涙が出た。


 初っ端から、心が折れた。

 ガッカリして力が出ない。

 萎えた心を奮い起こして、私は立ち上がった。

 お茶の道具を捨てた分、荷物は軽くなった。

 悪いことばかりじゃない。


 再びルルーに揺られて街道を進むと、三人組の男たちと行き会った。こちらをじろじろ見ている。高貴さがにじみ出て注目を集めてしまうのだろうか。

 これは困ったことだ。貴族はつらいよ。


 気にせずすれ違おうと思ったが、男たちは下卑た笑みを浮かべながら近づいてくる。

 段々怖くなってきた。

 以前の旅ではこんなことはなかった。旅とは、大変だけれども安全なものだった。


 そうか、父上や兄上、家臣たちが居てくれたからだ。

 ガンデやフェーンが居てくれたからだ。

 彼らの存在が私を守っていたのだ。

 あのような男たちを、彼らが排除していたのだ。


 それに気付いた瞬間、呼吸が止まるような恐怖が背中を走り抜けた。震える手で手綱を操り、ルルーを全速で走らせた。

 後ろから喚声が聞こえる。下品な笑い声だ。


 追ってきた!


 ルルーで逃げ切れるのか。

 どこまで追い掛けてくるのか。

 恐怖で体がこわばった。

 体が硬くなって、ルルーの動きに合わせられない。

 私の異変を感じたルルーが、速度を緩めて私を見ている。

 「どうしたの?」という顔をしている。


 そして、男たちに囲まれた。


「おい姉ちゃん、一人旅は危ないぜ」

「俺たちみてえなのがいるからな」

「ちょいと、楽しませてくれりゃいい」

「おとなしくしてりゃ、命までは取らねえよ」


 私も子供ではない。彼らが何をしようとしているのかは分かる。でも、完全に囲まれてしまった。

 どうすることもできない。

 涙がこぼれる。

 全身がこわばって、息を吐き出すこともできない。

 叫んで助けを呼びたかったが、声が出ない。

 わめくことすらできない。


 私は……愚かだった。


 なすすべもなく、ルルーから引きずり下ろされ、茂みに突き倒された。

 手足を押さえつける力に絶望した。

 両足を無理やり広げられた。

 目の前の男が履き物を脱ごうとしている。

 でも、声も涙も出せない……。



 私は、愚かだった――。

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