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一目惚れ伯爵令嬢と下僕たち ~イケメンを探していたら陰謀を暴いてしまいました~  作者: 中里勇史
キルエルト伯領

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練習

 遠乗りから数日後。

 姫様は何やら思案している。

 恐らく、ろくでもないことだ。

 私には分かる。


「ねえアディ。アディやフェーンも結婚するとなると、私も負けてはいられません。素敵な殿方を見付けたときの練習が必要だと思うの」

「練習!?」

「そうよ。何ごとも備えが必要じゃないかしら」

「……そうかもしれませんね」


 間違ったことを言っているわけではないのだが、相変わらず意味が分からない。


「こっちに来て。やって見せるから、うまくできているか確認してちょうだい」


 やって見せる?


 姫様は私を寝室に引っ張っていくと、寝台に潜り込んだ。


「姫様?」


 掛け布の下で、何らやモゾモゾしている。


「姫様?」


 モゾモゾ。


「姫様? 姫様!?」


 姫様がやっと掛け布から愛らしい顔を出した。


「姫様?」

「どう?」

「どう、とは?」

「寝台の中で、かわいらしく服を脱ぐ練習よ。うまくできていると思う?」


 そこ!?


「それとも、もっと妖艶な感じを出した方がよい?」

「残念ながら、凹凸が乏しい姫様には不向きかと……」

「アディ! 言ってはならないことを口にしてしまいましたね。自分でも薄々感じていたけれど。自分でも薄々だと思っていたけれど」

「申し訳ありません。ついうっかり」

「私の体が薄々なのを知られたからには、生かして帰すわけにはいきません」

「姫様の侍女は全員知っていますよ」

「何てこと……。まあいい。一人も大勢も、大した違いはありません」

「大昔の暴君みたいなことを言い出した……」

「アディ、あなた最近肉付きが良くなったから、少し調子に乗っているのでは? はっ! 〇・五セルしか大人になっていないとは、そういう……」

「そんなところを測ったりしていません」


 姫様はまだ口を尖らせて私を睨んでいる。


「そもそも、その練習よりも先にすることがあるのではありませんか?」


 寝台に引きずり込む殿方すら見付けていないではないか。


「だって殿方に巡り会わないのだもの。もう、男なら何でもいいような気がしてきました」

「どうせすぐスンとなるくせに……」


 姫様と私は、声を上げて笑った。

 楽しかった。


 この後、姫様のお母上に呼ばれるまでは――。

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