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一目惚れ伯爵令嬢と下僕たち ~イケメンを探していたら陰謀を暴いてしまいました~  作者: 中里勇史
旅の終わり

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私の騎士

 私の旅から一カ月が過ぎた。

 私はあの旅でほんのちょっと大人になった。アディに言わせると、〇・五セルくらい大人になった。


 フェーンは私を無事に守り切った功績が評価され、少し責任ある仕事を任されているらしい。騎士の仕事はよく分からないので、詳しいことは知らない。多分、「○○係」と言われても私には理解できないだろう。

 アディは、フェーンの仕事を多少理解しているらしい。ちょっと腹が立つ。


「アディ。やはり、見た目が美しくとも、心が美しくなければダメですね。私はこの旅で多くを学びました」

「姫様……成長なさって……」

「ですから、見た目が美しく心も美しい殿方を探しましょう。ああ、どこかにいらっしゃらないかしら」

「成長……」


 ふと庭を見下ろすと、フェーンが居た。声を掛けようとしたら、彼に女官が話しかけた。二人は何か、楽しげに話をしている。

 なぜだかとても不快な気分になった。胸の奥がむずむずする。イライラしてじっとしていられない。

 やり場のないこの気持ちがとても嫌だったので、フェーンに八つ当たりすることにした。彼に平手打ちでもしたらスッキリするかもしれない。


 庭に駆け下りて、フェーンに詰め寄った。


「今の女官は何ですか? お知り合い?」

「知り合いというほどでは……何度か話をしたことがある程度です」

「な、何度か! そ、それはまた、親しいのですね」

「親しいというほどでは……」

「でも随分楽しそうに話をしていたように見えましたが?」

「え、ご覧になっていたのですか?」

「一体何をお話されていたのかしら。さぞかし楽しいお話だったのでしょうね」

「いえ、ゾルベン卿がどこに居るか知っているかと尋ねられただけです」

「それなら『知らない』『あっちに行け』とでも答えれば済むことではありませんか。あんなに長く話す必要などないのでは?」

「無茶苦茶な……。姫様、一体何をお怒りなのです?」

「怒ってなどいません!」

「怒ってますよね」

「怒ってないったら!」



 私、ソド・マークマエン・アディーメは四の姫様の侍女をしている。

 これからもきっと侍女をする。

 それを望んでいる。


 フェーンに向かって駆け出した姫様を見送った。

 相変わらず、遅い。

 あんなに一生懸命手足を動かしているのに、あまり前に進まない。

 不憫だ。


 「見た目が美しく心も美しい殿方」、か。

 まあまあいい線いっている男性が割と近くにいるような気がするのだが。


 窓の下でフェーンに詰め寄る姫様を眺めた。

 二人を眺めていると、胸の奥にチクッとした痛みが走る。

 この不快な感じは何だろう。

 すこしイラッとする。

 妙な流行り病にかかってしまったのではないだろうか。姫様にうつしたりしたら一大事だ。後で城館の医師にでも相談しよう。

 ああ、イライラする。



 再び、城館の庭。


「ところでフェーン、あなたは私の騎士であることを忘れたのですか?」

「えっ、それはウグナペリン伯領行きに限定した役職で……」

「父上が役職を解いたら、もう私のことはどうでもよいと言うの?」

「そういうわけではないのですが……ああ、面倒な」

「め、面倒!? 聞き捨てなりません。フェーンあなた――」


15歳編 おしまい

『一目惚れ伯爵令嬢と下僕たち ~イケメンを探していたら陰謀を暴いてしまいました~』15歳編は以上で完結です。ご笑覧いただき、ありがとうございました。

気が向いたら、ブクマや評価(★)していただけると励みになります!


「少しだけ」成長したリリーメルたちの物語、17歳編もぜひご高覧ください。

最終話まで執筆済みですので、エタりなし保証付きです。

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