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一目惚れ伯爵令嬢と下僕たち ~イケメンを探していたら陰謀を暴いてしまいました~  作者: 中里勇史
最後の戦い

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勝利の女神

 新手の騎兵は、約一〇〇騎。

 速歩(はやあし)常歩(なみあし)の間のような速度で接近してくる。

 彼らは、門まであと一〇〇メルというところまで近づくと、駈歩(かけあし)に増速して突っ込んできた。


 これに最も驚いたのは、南門を攻撃していたロルセエルの兵たちだった。

 新手の騎兵は一瞬で彼らを粉砕すると、ロルセエルの兵たちがこじ開けた門から突入してきた。


「兄貴! 遅くなってワリい!」

「上出来だ!」


 ダガベが、乗っていた馬から飛び下りる。

 ガンデは立哨台から駆け下りると、ダガベが乗ってきた馬に飛び乗った。


「さて、楽しい時間の始まりだ!」


 ガンデは、ダガベが連れてきた騎兵を率いて走り去った。


「ダガベ、これは一体……」


 フェーンは、まだ事態がのみ込めなかった。

 この騎兵はどこから沸いたのか。

 どんな魔法を使ったというのか。


「川で姫さんたちを拾う前に、騎兵の招集を命じられてた。で、オイラたちは騎兵の集合地に向かってる途中だった。その騎兵を連れてきたってワケ」

「それで突然騎兵が……」

「ああ。先に招集かけてなかったら騎兵なんて用意できねえよ。運が良かった」

「またダガベに助けられたな。礼を言う」

「えっ、いや、別に……当たり前じゃねえか。何だよ。騎士様が平民に礼とか言うなよ!」


 耳まで赤くなったダガベはそっぽを向いてしまった。


「では、私たちも行こうか」


 フェーンは、ダガベの肩に手を回して引き寄せると戦場に向かって歩き出した。



 イルセエルが守る宮殿の一角は、切迫していた。

 敵は扉をまず徹底的に破壊して突入口を広げることを優先した。さらに、よろい戸を破壊して窓からの侵入も試みている。


「ふん、やっとそこに気付いたか。ひよっこの成長を眺めるのは悪くない気分だ。その学びを生かせず死んでいくと思うと不憫よの」


 イルセエルは槍をしごいて敵兵を次々に討ち取る。

 言葉とは裏腹に、長くは持たないことも痛感していた。家臣たちはよく戦っているが、数的劣勢は戦場において絶対的だ。

 彼は、「少をもって多を滅す」などたわごとに過ぎないと知っている。奇策をひねりだす前に、敵より多くの兵をそろえる方法を考えるべきなのだ。

 そして今、イルセエルは敵よりも少ない兵士しか用意できない。

 イルセエルは、家臣たちに向かって叫んだ。


「お前たちは、女子供を連れてどこかで突破口を開け! ここは私だけでいい」

「しかし公爵(イルセエル)!」

「女子供を道連れにしたなど末代までの恥よ。最後くらい格好を付けさせよ!」


 大笑いしながら、破壊された扉に向き直ったイルセエルは怪訝な顔をした。


「ん? 敵はどうした」


 敵の攻撃がやんでいた。

 突然、静かになった。


 イルセエルが扉から外に出ると、二〇騎ほどの騎兵の一団が近づいてきた。だが、全く敵意は感じない。

 騎兵たちからは、むしろ戸惑いの雰囲気が漂ってくる。


 隊長格の騎兵が、下馬してイルセエルの前に近づいてきた。


「その甲冑、名のある方とお見受け致す。我はキルエルト伯の家臣デルベーレンと申す。我が主君の姫がこちらにいらっしゃると聞き及び参上仕ったが、これは一体……」

「ここにいた兵どもはどうした」

「我らを見ると、一目散に逃げ散り申した。彼らは一体……。いや、何が何やら」


 イルセエルは、大笑いした。

 おかしくておかしくてたまらない。

 腹の底から笑った。


「またキルエルト伯の姫に救われたか! 我が公爵領の勝利の女神だな!」


 イルセエルは腹を抱えて笑った。

 デルベーレンは、あ然として立ち尽くしていた。

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