新手の騎兵
門を守っている者たちが時間を稼いだため、公爵以下、宮殿内にいる兵たちも甲冑を着込んで完全武装することができた。
だが、ついに東門が破られた。
「公爵、東から敵兵が殺到してきます」
「皆の者、続け!」
イルセエルを筆頭に、守備兵が宮殿の東側に集結する。
「どうせ実戦経験もないひよっこどもよ。マイツァーデイン公に屠られること、名誉に思うがいい」
何かが扉を激しく打ちつける音がする。
扉が破られた。
人一人がやっと通れる穴。
その穴から敵兵が侵入を試みる。
そこに、イルセエルが槍を突き入れる。
「素人め。思ったより楽な戦になりそうではないか。この穴で一匹ずつ始末してくれる!」
イルセエルは大声を張り上げて有利をことさら誇張し、大笑いした。
――戦は、怯えたら終わりよ。勝っていると思い込んでいるうちは負けぬのだ。たとえ勘違いでもな。
「それ者ども。巣穴から出てくるネズミを刈り尽くせ!」
◆
「ガンデ、キリがない!」
「んなこたあねえよ。一〇〇人しかいねえんだから、そのうち終わる」
――フェーンの緊張が切れたか。
緊張も悪いことばかりではない。
集中力を高める効果もある。
疲れていることを忘れることもできる。
緊張が解けると、疲れがどっと押し寄せてくる。
守備兵も何人かやられて、負担も高まっている。
広い範囲を守り切れない。
壁を乗り越える敵兵が視界の隅に見えた。
まずい状況なのは分かっている。
だが、目の前の敵も放置できない。
剣が重い。
足も重い。
疲れていることに気付いた。
壁を乗り超えた敵兵が、門のかんぬきを外した。
――これまでか。
「ガンデ、新手が!」
「新手だぁ?」
段々どうでもよくなってきた。
ダメだ。疲労で頭が回らない。
かすむ目で遠くを見渡す。
新たな騎兵が迫ってくるのが見えた。
――終わった、な。




