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一目惚れ伯爵令嬢と下僕たち ~イケメンを探していたら陰謀を暴いてしまいました~  作者: 中里勇史
最後の戦い

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死の感触

 宮殿に残ったイルセエルは、宮殿内の指揮を始めた。


「女子供は奥へ。宮殿内にいる男は扉を塞ぎ、よろい戸を閉めよ」


 そして、扉の前で佇んでいるリリーメルを一喝した。


「そんなところに居ても役には立たん! 今のお主にできることは、皆の無事を祈ること。危険な所に居ても何の足しにもならん」

「しかし……」

「彼らが戻ってきたとき、お主が死んでいたのでは意味がない。彼らの献身を無駄にするな。やれることをやれ」

「心得違いをしておりました。教えに感謝を」


 イルセエルはふんと言って、他の箇所の指揮に向かった。


「さあ姫様、行きましょう」


 アディとエーメレイアに促されて、リリーメルは宮殿の奥に向かった。



 ガンデは、南門に走りながら周りの兵たちに付いてこいと叫んだ。


「南門だ! まずそこを守れ!」

「あれが南門だ」

「全く、疲れるぜ!」


 南門に居た兵士たちと協力して、南門を閉ざす。かんぬきをかけて封鎖すると、門の上の立哨台に上った。


「来たぜ、敵さんだ……一〇〇はいるな」

「一〇〇!?」

「この門を守るのは一〇……か。ちっとキツイな」

「でも、やるしかない」

「ふん、覚悟がキマッてきたじゃねえか」


 騎兵では門や壁を突破できない。敵は下馬して攻城戦の態勢に移った。


「攻城戦の準備してきたのか。用意がいいことだな」


 壁に梯子をかけ、兵が次々に上ってくる。ガンデとフェーンは梯子を落とし、上ってくる兵に剣を突き刺した。

 二、三人はどうにかなる。だが、敵は数が多い。次々に上ってくる敵兵にいつまで対抗できるか……。


「敵の攻撃地点はここだけなのか。他の門は大丈夫だろうか」

「知るか! 増援が来ねえところを見ると、他も攻撃されてるのかもな」

「ロルセエルはなぜそんなに兵を持っているのだ!?」

「俺に聞くな!」


 フェーンは、梯子を上ってくる敵兵の顔や首めがけて剣を突き立て続けた。

 剣を通して、肉に突き刺さる手応えを感じる。その一撃一撃が人の命を奪っていく。

 きっと次は自分の番だ。

 敵の剣が自分の体にザクリと突き刺さって、動脈や心臓や肺を傷つけ、人生が終わる。

 これが戦。

 これが殺し合い。

 これが……。


「ーン! フェーン! おい! フェーン」

「えっ!?」

「ボケッとするな。死にてえのか。死にたくなければ殺せ」

「殺せ……」

「良いとか悪いとか、考えるな。生き残ってからのんびり考えろ」


 ガンデの大剣が、敵兵の首を跳ね飛ばす。頸動脈から吹き出した血がガンデに降りかかる。続けて上ってきた敵兵の顎を蹴り飛ばす。


「こんなところでくたばったら、姫さん泣くぞ」

「姫様……」

「それとも泣いてほしいか? フェーンって」

「姫様は泣き顔より笑顔の方が美しい」

「なら笑わせるんだな!」


 フェーンは、新たに掛けられた梯子を蹴り落とし、その横の梯子を上り切った敵兵の腹に長剣を突き立てる。さらのその右の梯子に飛び付いて、梯子を横に蹴って倒した。


「周りがよく見えてるじゃねえか。上出来だ」

「……」


 フェーンの答えはなかった。余裕がないのか、集中しているのか。

 ガンデは、視界の端にフェーンの無事な姿を捉えると、フッと笑いながら大剣を敵兵の頭にたたきつけた。


「後は……持たせられるかどうか、だな」


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