次の手
「なるほど。ここは私の負けのようだ」
「ダルナー副伯……」
「それで? 私をどうするつもりだね?」
「それは私ごときの出る幕ではありません。後は公爵に」
「ふっ。分かっているではないか。そう、君には権限もなければ力もない」
「ダルナー副伯のおっしゃる通りですね」
「言い換えると、力さえあればどうにでもなるのだ」
「ダルナー副伯?」
ロルセエルは、ゆっくりと後ずさりした。
彼の後ろには――玄関の扉がある。
「リリーメル殿。私は三兄弟を始末しようとした」
「はい」
「だが失敗した」
「はい……」
「ならば次の手を使うまでだ」
「次の手?」
「その小ざかしい頭で考えてみるがいい」
ロルセエルは、哀れむような目でリリーメルを眺めると、ふっと笑いながら扉を開けて飛び出した。
「ガンデ、フェーン! お願い。彼を捕らえて!」
ガンデとフェーンがリリーメルの脇を擦り抜けて扉に向かう。
「何をしている。お前たちも追え!」
イルセエルの号令に弾かれたように、ゾルアーデンたちも走り出した。
だが、扉の向こうにロルセエルの姿はなかった。
「クソッ、馬を回してやがったか!」
ガンデは耳を地面に押しつけた。
「……南だ!」
「南……ロルセエルの領地がある方向だ」
ゾルアーデンが近くにいた立哨に叫んだ。
「今この宮殿には何人兵がいる?」
「多分、五十人ほどかと」
「なぜそれしか……いやいい。とにかく兵を集めろ!」
カルアーデンらも自分の馬をつないだ厩舎に走った。
宮殿全体が臨戦態勢に切り替わりつつある。
「ガンデ!」
「姫さんは中に居ろ! 邪魔だ!」
「ガンデ、フェーン、お願いします」
厩舎に走ろうとしたガンデは、急に立ち止まって周りを見渡した。
「……」
「いかがしたガンデ」
「フェーンは何か感じねえか?」
ガンデは再び地面に耳を押しつける。
すぐに起き上がって周りに向かって叫んだ。
「騎兵多数! 南から接近中!」
「何だって!?」
「野郎、近くに兵を潜ませてたんだ」
「ここで全員を一気に亡き者にするつもりか」
「フェーン、武装してるな? とにかく南門を押さえる。中に入れなきゃ少しは粘れる」
ガンデとフェーンは南門に走った。
「これだけの宮殿に兵が五十って少なくねえか?」
「ロルセエルが意図的に遠ざけたと?」
「それに、宮殿の各所に配置されてんだろ。下手すると各個撃破されて全滅だ」
「ロルセエルがどれだけ騎兵を集めているのか……」
「嫌な予感がしてたんだが……本当に戦で全滅させる手に出るとはな!」




