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一目惚れ伯爵令嬢と下僕たち ~イケメンを探していたら陰謀を暴いてしまいました~  作者: 中里勇史
黒幕は誰だ

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ゾルアーデン殺害事件

「ガンデ、ダガベの姿が見えませんが、どこに行ったのですか」

「どっかで寝てんじゃねえか?」


 リリーメルは、「ふ~ん」と言いながら去っていった。

 そのとき、エーメレイアの甲高い悲鳴が響き渡った。絹を引き裂くような「ビリビリビリ」という悲鳴ではなかった。


「ゾルアーデン! ゾルアーデン! 誰か! ゾルアーデンが!」


「姉上!」


 リリーメルとガンデは、エーメレイアたちの客室に向かった。


「姉上、どうしたのですか?」

「リリー。ゾルアーデンが!」

カプテディーン伯(ゾルアーデン)がどうしたのですか!」

「奥……奥の部屋で……」

「えっ!?」


 リリーメルとガンデは奥の部屋に飛び込んだ。そこで二人は、床に倒れているゾルアーデンを発見した。脇腹の部分の服が引き裂かれ、服と床が真っ赤に染まっている。


 マイツァーデイン公イルセエルは激怒し、下手人を何としても挙げよと命じた。

 徹底した捜索の結果、血だらけの短剣がカルアーデンの部屋で発見された。彼は「こんな短剣など知らない」と主張したが、凶器が発見された理由を説明することはできなかった。


 カルアーデンは一日中部屋にいたわけではない。彼が部屋を空けているときに何者かが凶器を持ち込んだ可能性は否定できない。だが、誰が持ち込んだのかを特定することもできなかった。


 イルセエルは、カルアーデンに冷淡に言い渡した。


「せめて苦しまぬようにしてやる。残念だ」


 イルセエルはカルアーデンを省みることなく、謁見の間を後にした。実の子に死を与える決断は、彼に多大な負担をもたらした。

 ロルセエルは助命を求めたが、イルセエルの怒りを解くことはできなかった。


 カルアーデンは即日処刑されたという。


 宮殿は騒然となった。嫡子カプテディーン伯(ゾルアーデン)が殺害され、三男ダルテルン卿(カルアーデン)が処刑された。残るは次男のシルテン副伯(エレアーデン)のみとなった。

 マイツァーデイン公(イルセエル)は立て続けに子を失った心労からか、自室に籠もって出てこなくなった。

 エーメレイアも部屋に閉じこもり、家臣たちはさもありなんと目頭を押さえて伯妃の不幸に同情した。


「是非もなし。公爵(イルセエル)が立ち直られるまでに限り、私が政務を見よう」


 ロルセエルは、公領に関する諸問題のうち、早急に解決すべき事項に限って家臣団に指示を与え、棚上げ可能な問題については公爵(イルセエル)の決裁に委ねるとした。


「これから、どうなるのでしょうか」


 リリーメルは、フェーンを見上げながらつぶやいた。


「……分かりません」

「全ては、これからですね」


 フェーンとアディは、リリーメルを左右から支えるように立って宮殿の様子を見つめていた。

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