カプテディーン伯に死を
「んで、これが解読文ってわけか」
今回出番がなかったガンデは、与えられた部屋でいびきをかいていた。フェーンたちが潜入作戦を行っていたことも、先ほど知らされたばかりであった。
アディは、フェーンたちが持ち帰った文を不思議そうな顔で眺めた。
「今回は直接的な表現ばかりですね。頭を捻らなくても理解できます」
【一の若鷲を天の門へ。血塗られた剣は三の若鷲の巣に眠る。三の若鷲も天に飛び立ち二の若鷲は鷲として戴冠す】
「何とか副伯のおつむに合わせたんじゃねえかな」
ダガベは鼻をほじりながら言い放った。
意外に核心を突いているのかもしれない。
「つまり、シルテン副伯にカプテディーン伯を暗殺させ、凶器をダルテルン卿の部屋か何かに隠して罪を着せる。こうしてシルテン副伯は公位継承者になる、と」
フェーンがざっくりと文意を提示した。
少し正常に戻ったリリーメルは、両手を腰に当てて言った。
「他に読みようがない。同じ方式の暗号で指示されていることで、媚薬事件ともつながった。少なくともシルテン副伯は潔白とは言えない」
「だけど……」と彼女は続けた。
「何これ。この暗号文の送り主は何がしたいの? シルテン副伯を公爵にしたいの? なんで?」
「確かに。黒幕の目的が分かりませんね」
「これじゃ黒幕が誰だかも全然分からない。シルテン副伯を告発したとしても、姉様たちの安全は保証されない。どうしたらいいの?」
リリーメルはがくりとうなだれる。
「ああ困った。誰かこんな私を支えてちょうだい。そうだ、あの素敵なダルナー副伯に相談するというのはどう?」
「段々病が重篤化してきた」と察したアディは、今にも部屋から飛び出していきそうなリリーメルを羽交い締めにした。
「お待ちを。ダルナー副伯はまだ味方と決まったわけではありません。敵に通じているかもしれないではありませんか」
「あら、美男に悪い人はいないわ。私の直感がささやくの。『彼は大丈夫』と」
「姫様の直感、殿方については外しっぱなしではありませんか」
「アディはときどきひどいことを言うのね」
フェーンとガンデとダガベは顔を見合わせた。「アディは結構ひどいことをちょいちょい言っているではないか」と。
まあ、本人が平気なのであればそれでいいか。
三人は、肩をすくめて苦笑した。
一同の話を黙って聞いていたエーメレイアは、両手をぱんと打ち鳴らした。
「面倒です。この際、私の夫には死んでもらいましょう。そうすれば黒幕も出てくるでしょう」
ぼう然とする一同を眺め渡して、エーメレイアはほほほと笑った。




