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一目惚れ伯爵令嬢と下僕たち ~イケメンを探していたら陰謀を暴いてしまいました~  作者: 中里勇史
貴族として

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どんぶらこ

 キルエルト伯家の捜索隊は、川沿いに馬を走らせていた。だが、リリーメルの姿を発見する前に木材集積地にたどり着いた。

 水面近くに頑丈な柵が設けられており、全ての木材はここでいったん塞き止められる。


 柵には死体が引っ掛かっていることもしばしばあるそうだが、


「貴族の姫様? さあ、ここ一カ月は人間は流れてこなかったな」


と言って、集積地の男は笑った。


 捜索隊の隊長は、しばし考えてから両岸の周辺に捜索範囲を広げて川をさかのぼることにした。


「途中で川から上がった可能性に懸ける」

「この水温では、そもそも長くは……」

「だから、可能性があるとしたらもっと上流だ」


 目隠しをして森を歩くかのような捜索だったが、彼らの努力は奇跡的に報われた。それらしい三人を知っているという農民に行き当たったのである。

 彼らは小銀貨一五枚を残して、傭兵と共に「何とかって領地」に向かって旅立ったという。


「何とかとは何だ?」

「貴族様の名前なんて覚えられねえよ」

「まあいい。そなたたちの献身に感謝を。これはキルエルト伯からの礼である」


 捜索隊の隊長は、農民に三枚の金貨を渡して去っていった。金貨一枚は小銀貨五〇枚分の大金である。農夫はしょうべんを漏らし、農婦は仰天して卒倒した。


「四の姫は生きておられる。行くぞ」


 捜索隊の隊長は、初めて笑顔を見せてキルエルト伯領の方角を眺めた。


 この話は、後に「どんぶらこと川を流れてきた貴族の姫君が、騎士と傭兵を従えて山賊を討伐し、財宝を持ち帰る。姫君を助けた農民は大金を得て幸せに暮らしたとさ」という童話に形を変えてこの地に残る。


 「どんぶらこ」は、「貴族の姫が川を流れるとき」だけに使われる極めて特殊な擬音として帝国語に定着した。

次回から新章が始まります。

リリーメル一行は、木の筒を開けて陰謀の存在に迫ることに。

リリーメルたちの前に現れたある貴族の妻に纏わり付く陰りとは?


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