空挺団4
サンダリアは目覚めた。
サンダリアの瞳にギルバートが映る。
口元のゴツゴツした温もりにフッと頬が緩む。
『おはよ、ギル』
くぐもった声になったのは、ギルバートがまだサンダリアの口を押さえているから。
『大丈夫、もう魔力抑制できてる』
「本当だな? 手を離して屋根瓦が吹っ飛ぶことはないな?」
サンダリアは小さく頷く。
ギルバートの手が離れた。
ふぉーと息を吐き出す。
「おはよ」
サンダリアは身体を起こして、伸びをした。
ギルバートも立ち上がる。
「それでだ……、お前の取扱説明書は?」
サンダリアはうーんと悩む。で、一応確認を取ることにした。
「求婚?」
「ばっ、何言ってんだよ!?」
だよねー、と頷く。
貴族的言い回しかと勘ぐった。昨日のあれこれに律儀に応えたかもしれないから。
令嬢の肌に触れ、抱え、夜這いもどきを受けた責任を口にしたかも、と。
そういうことも、つい最近サンダリアは学んだ。王城に参内するために。
「莫大魔力持ち。毎日の魔力放出が必須。寝起き時注意。外暮らし推奨」
「だから、屋根で寝てたのか? そのー、屋敷が被害を被らないように」
サンダリアはニッと笑って応じた。
「今日の訓練は、ドラゴンに乗る?」
「空挺団の説明が先だ」
サンダリアは不満が顔に出る。
「今日明日にでも任務に出ていた団員らが帰還する。どんな危険な活動をしているか……確認してもらう」
どっちかな?
活動に恐れをなすと思ってる?
やっぱり、入団を望んでなくて辞退させようと?
サンダリアはギルバートの言葉を測りかねた。
「お遊びじゃねえからな。団員と同じ働きができるまで訓練だと思えよ」
「了解です!」
サンダリアは、ギルバートのそれが嬉しかった。
昨日とは違い、覚悟を求めていたから。
サンダリアは軽やかに屋根を下る。
そのまま、屋根の際でポーンと跳ねた。
「サン!」
ギルバートの焦った声と顔、伸ばした手を見ながら、バルコニーに着地した。
「早く、ドラゴンから降下したいなあ。イッタッ」
サンダリアに続いて、バルコニーに下り立ったギルバートからゲンコツをお見舞いされたのだった。
「ドラゴン空挺団は、四班に分かれて活動している」
朝食を終えたサンダリアは、第二班の訓練を横目にギルバートから説明を受けている。
第二班は大きな荷物を背負ってのランニング中だ。
「第一、第二が主力班。第三が見習い班。実戦に向けて修行中ってこと。で、第四が龍守。ドラゴンのお世話中心の班になる。主力を引退した団員が担っている」
「ふーん、じゃあ……私は、第三班行き?」
サンダリアは訊いた。
「本来ならな。だが、サンは例外。所属班はまだ決めていない。空挺団初の魔力持ちだから。それに、女だし。一応、公爵令嬢だし」
「第二試験もまだだし?」
サンダリアはギルバートの言葉に連ねた。
「第三試験もな」
「試験、いくつあんのよ?」
「第三まで。サンにとって、第三試験が一番難関だろう」
「試験内容は?」
そこで、ギルバートがおもむろに第二班の訓練を指さす。
「荷物を背負って一刻走り続けること。空挺団は落下傘を背負って敵陣に降下するから」
そこまで聞けば、意味はわかる。
着地後に、素早く落下傘を回収し移動するのが、通常の動きになるだろう。
「背負う荷物は落下傘だけじゃねえし」
敵陣に突っ込むのだから、武器も防具も道具も必要になろう。
地上部隊(本隊)が来るまでに、敵を一掃し陣地を作り上げるのが空挺団の役割である。
落下傘自体を天幕に応用したり、現地調達したりで拠点を作るのだと、ギルバートが説明した。
「何より、帰還は自力だ」
ギルバートが自身の足をポンポンと叩く。
ドラゴンは敵陣に団員を運ぶだけ。その後は、棲み家に戻ってしまう。
遠く下ろされた場で、龍笛を使ってもドラゴンは喚べないし、何より現地で何十体ものドラゴンが着地できる場を探すのも難儀だ。
集合場所と時間、予定が決まった偵察任務しか、ドラゴンでの帰還はできないわけ。
「今日、第一班が帰還予定。遠征実践してる第三班は明日帰還するだろう。第四は」
ギルバートが山を指さす。
「山の麓の森にいる」
サンダリアは目を輝かせる。
あそこに行けば、ドラゴンに会えるから。
今にも駆け出したい衝動を堪え、ギルバートをチラッと見た。
ゴツゴツの手をサンダリアの頭上で留めている。
どうやら、サンダリアの衝動が伝わっているようだ。一歩でも動こうものなら、ガシッと頭を掴まえられるはず。
「エ、ヘヘ」
サンダリアは笑ってみせた。
「第二試験も第三試験もやる。私は例外にならないから」
「野生令嬢って存在自体が例外この上ないだろ」
そう言って、倉庫群へとギルバートが歩き出す。
次はその説明をするようだ。
サンダリアはギルバートの後に続いた。
そうして、本部ーー基地の大半の説明に午前中いっぱいを使い、サンダリアは第二班と一緒に昼食をとっていた中、外が騒がしくなる。
「第一班『様』のご帰還だ」
横に座っていた団員が、サンダリアにコソッと教えた。
言い方に引っかかりを覚え、サンダリアはその団員の瞳を探った。
団員が肩をすくめる。
「偉そうな奴の集まりってこと」
「ふーん、じゃあ実力者なんだ」
空挺団において、実力がない者が偉そうにはできないだろう。
「まあな。俺は第二班班長のハイク。よろしくな、サン嬢ちゃん」
「うん、よろしくです、ハイク班長」
第二班の団員から初の言葉かけだった。
朝食時は、昨日の今日でギルバートが横にピッタリついていたし、声をかけづらかったのだろう。
今、ギルバートはサンダリアから離れて、食堂の片隅でロゴスと何やら話し合っていた。
「サン嬢ちゃん、第一班は少々粗野な者が多い。気をつけてくれ」
ハイクが続けた。
「荒くれ者?」
「そう、そのとおり。だが、腕っぷしも度胸も一流だ。で、第二班はサン嬢ちゃんを歓迎する」
ハイクが団員らを見回す。
団員らがサンダリアに笑顔をみせた。
「ヤッタッ、嬉しい! 皆様、よろしくですわ」
サンダリアは立ち上がって、膝を折った。最近覚えたばかりのカーテシーである。
と、そこで、食堂にガヤガヤと集団が入ってくる。
「腹減った! 飯だ、飯!」
ハイクが『な? 粗野な連中だろ』と言わんばかりの視線をサンダリアに向けた。
「おおっと!? なんで、女がいるんだ!?」
立っていたサンダリアに注目が集まってしまった。
第二班の団員がいっせいに席を立つ。
サンダリアを囲むように陣取った。
「おうおう、女の独り占めかよ、第二班は?」
ドスドスと第一班が近づいてくる。
が、ロゴスとギルバートが第一班と第二班の間に立ちはだかる。
「みっともないぞ! 任務後の興奮した様は獣ばりにたちが悪い。そこら辺の魔物と変わらん。任務完了報告をせずに何をやっている!」
ロゴスが第一班に一喝した。
「お前らもすぐに血気立つな」
ギルバートが第二班にも注意を促すが、小さく頷きその目は『よくやった』と褒めているようだ。自身が離れたせいであるから。
副団長のギルバートがサンダリアの横にいれば、この対峙は起きなかったことだろう。
「いやあ、すんません! ロゴス団長。でも、そこの女を紹介してくれませんかねえ」
『あれが、第一班班長スタック』
ハイクが小声でサンダリアに教える。
「念願の洗濯女っすか、飯炊き女っすか、それとも……妓女でも歓迎っすよ」
『下品も追加』
ハイクが絶妙に付け足す。
サンダリアは、ふーん、と第一班長を眺めた。
サンダリアを新入りだと、頭の片隅にも思っていないのだろう。
「彼女はルデンヌ公爵がご息女サンダリア嬢だ。空挺団配属の王命が下った。だが、本人希望で入団試験を受けている最中。第一試験はすでにクリアしている」
ロゴスが告げた。
「こ、公爵……令嬢?」
スタックが一瞬怯んだ後、険しい顔になる。『お貴族様かよ』と、吐き捨てた。
「お遊びに付き合う義理はないんで、第一班はノータッチを宣言しますよ」
スタックはどうやら貴族嫌いのようだ。
「ロゴス団長。我ら第一班は、お貴族様の安全な狩り場(遊び場)を確保し、帰還しました!」
なるほど、スタックが貴族嫌いなのは頷ける。
「ご苦労だった。後で詳しく報告してくれ。とりあえず、昼食を」
「はっ!」
スタックはロゴスに対しては従順である。きっと、スタックよりロゴスが強いに違いない。
強者に対する敬意というやつだろう。つまり、スタックの基準がそこ。強いかどうか。
だから、サンダリアに辛辣なのだ。否、眼中にない……眼中にしない。そう、判断したわけ。
「お貴族様の御前で、飯は食えねえ。外で食うぞ、野郎ども!」
第一班は食事を手に食堂から出ていった。
「サン嬢ちゃん、スタックを悪く思わねえでくれよ」
ハイクが言った。
「うん、ぜーんぜん」
サンダリアは腰かける。
普通の感覚だと思う。貴族、女、どう見ても弱者。
空挺団の任務上、弱い者を班に入れては足手まといになるものだ。団員の命を背負う班長ともなれば、そう判断するのが普通。
初見のギルバートだって、ロゴスだってそうだったから。
それこそ、洗濯女や飯炊き女の方が、スタックにとっては価値ある存在のはず。
ついでに繕い女も。
第一班の制服は、ボロボロだった。
それだけでも、任務の過酷さがわかる。
「第一班と第二班は、別に険悪じゃあねえから。これが野郎どもの通常だ」
ハイクが付け加える。
「ライバル関係でしょ」
「ああ。で、こっちは、サン嬢ちゃんを味方につけたい」
「魔力持ちだから?」
「そうだ」
サンダリアは悪い気はしなかった。
王太子妃に望まれるより格段にいい。
「スタックが悔しがる顔見てえからな」
ハイクがクッと笑うと、第二班の団員も……野郎どもも悪戯げに笑った。
サンダリアは、貴族、女、だけじゃない。貴族、女、魔力持ち、外暮らしの野生令嬢である。
さらに付け加えれば、ドラゴンの高さと同じぐらいの傾斜屋根で寝られるほど、肝が据わっている。
「私が魔力持ちだと知ったスタックの顔を想像してかしら。フフッ」
サンダリアも笑うのだった。
午後の活動が始まる。
第一班は任務後だから休養。
第二班は、町に行くことになった。
サンダリアは、第二班預かりになり同行する。
ギルバートがハイクと言葉を交わしている。町行きの打ち合わせだろう。
二人の話が終わり、どうやら出発のようだ。
「ハイク、頼んだぞ」
「お任せを」
ギルバートの言葉に、ハイクが答えた。
「サン、ハイクの言うことを聞けよ」
「了解です!」
ギルバートは、第一班任務の報告をロゴスと一緒に聞くため、サンダリアのお守りを離れることになったのだ。
食堂でのロゴスとの話は、それだったのだろう。
眉間にしわを寄せて見送るギルバートに、サンダリアは大きく手を振っておいた。
「町までは歩いて半刻だ」
ハイクがサンダリアと並行で歩きながら言った。
ハイクとサンダリアを先頭に歩いている。
サンダリアが一番遅いと判断されたのだろう。遅い者を先頭に進むのは、団体行動の鉄板である。
「これも、一応訓練って感じ?」
昨日、馬車で来た道を歩いて向かっている。
「ああ、サン嬢ちゃんの体力確認だとよ」
サンダリアが口にしていた自然育ちの事実確認だろう。本当に外で暮らしていたなら、半刻など歩けるはずだと。
「そんで、帰りは一刻ほどかかる。今回の町行きは、運搬任務になる」
「帰りは荷物があるってこと?」
行きは身軽で、帰りは重荷あり。行きはよいよい、帰りは怖い。ということ。
「そう。落下傘諸々の補充。任務の度に減るから、随時補給品が町までは運ばれてくる。まあ、サン嬢ちゃんには背負わせねえから、安心してくれ」
「訓練なら、私も背負うわ。平気よ」
サンダリアは頬を膨らませる。
「ハハ、期待しないでおく。そう、最初っから気張らなくていいって。先に、空挺団の諸々に慣れてくれってさ」
それが、ギルバートからの指示のようだ。
「ついでに、空挺団は馬は使わない。いや、使えねえ。馬がドラゴンに驚くから」
だから、昨日も馬車は本部屋敷から離れた場に停車した。
空挺団の陣地旗が立っている場に。
「さて、ちょっとばかり急ぎ足で行くぞ。辛かったら遠慮なく言ってくれ」
「了解です!」
サンダリアはハイクのペースについていった。
そうして、町まで半刻かからずに到着する。
「マジでスゲーな、サン嬢ちゃん」
ハイクが舌を巻く。
「道なき道を行く大自然暮らしだったんだもん。道があるってだけで楽勝楽勝」
「本当だったってことか。納得だ」
そこで、ハイクがニヤリと笑う。
「第一班は賭けをしてるぞ。この状況は予想外だろうな。早く本部に戻れそうだ」
サンダリアはピンとくる。
「町までの往復時間を賭けてるのね!」
「そう、いつもはな。だが、きっと今回の賭けは違う」
これもすぐにピンときた。
「フフッ、私が脱落すると思ってるはず」
公爵令嬢が町まで往復できるはずがないと。
スタック率いる第一班の面々が集まり、口々にやいのやいの言って賭けをする光景が目に浮かぶ。
きっと、サンダリアは散々な言われようをしていることだろう。
「ああ。大半が脱落に賭けてるな、きっと」
「じゃあ、賭けになんないじゃないの」
「ギルバート副団長は、サン嬢ちゃんに賭けた」
「じゃあ、独り勝ちね」
「サン嬢ちゃんが戻った時の第一班の奴らの顔が見物だな。さてと、俺らが荷物確認をしてる間、サン嬢ちゃんは急いで買物してくれ」
「え? 別に買いたい物なんてないわよ」
サンダリアはハイクの申し出を断った。
「いや、買物させてやれってギルバート副団長の指示だ。サン嬢ちゃんは、身一つで空挺団入りしただろ」
「あー、なるほど……フフッ、身一つじゃないわ。ちゃんと荷物は運んだの。『魔法』を使って」
サンダリアはニッと笑った。
ハイクが『へえ』と答える。
「私、荷運びは得意よ。なんなら、帰りも半刻で帰れるぐらいにね」
「ほおぅ。じゃあ、その裏技を見せてもらおうか」
かくして、サンダリアたちは本部帰還を爆速で終える。
サンダリアの『圧縮魔法』により、掌サイズになった荷運びは行きと同じ帰り時間だったから。
もちろん、陣地旗の所で『圧縮魔法』は解き、サンダリアも十キロ相当の荷物を背負って帰還した。
汗一つかかず、涼やかな顔で。
スタックをはじめ、第一班の団員らは絶句していた。
もちろん、ロゴスも……サンダリアの帰還に賭けたギルバートだって。
「往復のタイムレコードを出した。サン嬢ちゃん、ありがとな」
ハイクが手を上げる。サンダリアはハイクのそれに応じて、手をパンッと叩きあった。
第二班の団員らともハイタッチして、記録を祝う。
第一班の悔しげな表情を横目に。
まだ、サンダリアが魔力持ちだと第一班には明かしていない。知ったら、どんな顔をするんだろうか。今から楽しみだ。
「ハイク、荷運び任務の報告を」
ロゴスがハイクを呼んだ。
きっと、爆速帰還の詳細を訊かれるだろう。
ハイクがサンダリアに目配せする。
『圧縮魔法』を報告してもいいかどうかの視線だ。
サンダリアは小さく頷いて笑った。
そこで、サンダリアはグイッと手首を掴まれる。
「おい、サンは俺に報告だ」
ギルバートがサンダリアを連れ出す。
「どこ行くの?」
ズンズンと進むギルバートに問うた。
ギルバートの足が止まる。
「お前の部屋」
「了解です」
「少しは躊躇しろよ」
「へ?」
サンダリアには躊躇する理由がわからない。
「チッ」
「チッ、理不尽舌打ち返し」
ギルバートが腕組みして、サンダリアを見下ろした。
威圧感半端ない。
「す、すみませーん、上官」
「よし」
二人は、三階サンダリアの部屋に向かった。
部屋にはまだ、ギルバートの正装がテーブルに置いてある。
「これ、いいか」
ギルバートがぶっきらぼうに訊いた。正装を指さして、持って帰っていいか、と。
「まだ、終わってない」
「どこがだ?」
「私の繕いは『魔法付与』が最後の仕上げ」
サンダリアは両手を正装にかざした。
「『幸あらんことを』」
その瞬間、正装を包む仄かな光。
それがスッと消えた。いや、正装に付与された。
「どうぞ」
「あ、ああ……」
ギルバートが正装をソッと撫でる。
「まあ、これを着るのは入団式と棺桶に入る時ぐらいなんだがな」
「あと、野生令嬢を迎える時でしょ?」
サンダリアとギルバートは自然と見つめ合い、プッと笑った。
「で、報告しろ」
「何を?」
ギルバートが何を訊きたいのかわかっていたが、サンダリアはすっとぼける。
ギルバートとは、そういう会話が楽しいから。
「わかってんだろ」
「へへへ、んっとね」
サンダリアは正装が置いてあるテーブルに並べた小箱を一つ手に取る。
それをパカッと開けてギルバートに見せた。中にはミニチュアの衣類。
「『圧縮魔法』で荷物を縮小してるの」
「何!?」
サンダリアは蓋を閉めて、小箱を床に置く。そして、手をかざした。
「『圧縮解除』」
仄かな光の後、小箱が一瞬でクローゼットに変わる。
「……なるほどな。掌サイズになりゃ、爆速帰還も頷ける。魔法か……(魔力持ちにして魔法使いってことになるな)」
「そ、この『ズル』、なかなかでしょ」
サンダリアは自身のポケットをポンポンと叩く。そこに荷物を入れて戻ってきたのだ。
第二班の団員らも自身のポケットに荷物を入れて。
「ああ、最後は圧縮解除して、第一班に『ズル』を隠したわけだ」
「大儲けした?」
サンダリアはニヒッと笑い、クリッとした目つきで訊いた。
「……ハイクが教えたか」
ギルバートがフッと楽しげでいながらも、悪い顔で返す。
「うん、分け前は?」
サンダリアは小者のように手を擦ってみせた。
「お前なあ、一応公爵令嬢だろ。変な仕草をするなよ」
ならばと、サンダリアは手の甲を頬に添え、顎を上げる。
「オーッホッホッホッホッ。私、はした金には興味なくってよ」
サンダリアはサンダリアが思う貴族的令嬢を演じてみた。王城で会った令嬢たちを見本に。
「……それはそれで嫌なもんだな」
ギルバートがガクッと肩を落としたのだった。
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