21話「襲撃の夜」
天運の檻・21話になります!
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石川県豊生市。
煌環苑跡で捜索を行っていた多糯章率いる2課の執行隊員は突如、謎の集団から襲撃を受ける。
集団を率いる女性隊員の発砲した銃弾が多糯章や良奨を含めた執行隊員を襲う。
多糯章はすぐに良奨や他の隊員に触れるとその場から一瞬にして姿を消す。
銃弾は瓦礫に直撃し、瓦礫を粉砕する。
「逃がしたか。 だが――」
女性隊員はすぐに他の隊員に煌環苑の他の地点に向かうよう指示する。
煌環苑の別地点で良奨や他の執行隊員とともに姿を現す多糯章。
「みんな!無事か!?」
「聖花さん!これは…いっ、一体何が…!?」
良奨は何が起きたのか理解できずに混乱する。
自分が今いる場所と先ほどまでいた享亭の書斎とはかなりの距離がある。
「いきなりですまない。
俺の術式で飛んだんだ。」
多糯章の術式は”瞬間移動”。
自身や触れた対象をあらかじめマーキングした地点へと瞬間移動ができる。
マーキングしていれば距離に関係なく移動が可能であり、多糯章は有事に備えて常に執行隊本部と現場のいくつかの地点にあらかじめマーキングを施していた。
良奨や他の執行隊員は多糯章の術式で窮地を脱したのだ。
しかし触れるのが僅かに遅れた執行隊員は銃弾による負傷を受けていた。
「本部に飛ぶことも考えたが、おそらくこの状況…事前に計画されたものだろう。
それにあの服装、国衛局に関連した者たちだ。本部に移動しても危険と判断した。」
多糯章は負傷した執行隊員の応急処置を行いながら口にする。
良奨は突然の状況であったにもかかわらず、あの一瞬でその先のことまで想定し行動に出た多糯章がなぜその年で2課の代表を務めているのかを理解した。
「通信はすでに使い物にならない。
だが、まだ生存者はいるはずだ。…こんな状況ですまないが、協力してもらえないか?」
多糯章は他の2課の隊員を救出すべく良奨たちにも協力するよう願い出る。
―貴様の考えはお見通しだ。聖花 多糯章。―
多糯章を襲撃した女性隊員が口にする。
すると、良奨や他の隊員の背後に先ほどの女性隊員と同じ格好をした襲撃者が現れる。
多糯章は自分の移動先がすでに予測されていたことに驚愕する。
だが、その感情の揺れが多糯章の的確な判断を鈍らせてしまう。
良奨に襲撃者の銃口が向けられる。
その時、二人の素早い影が襲撃者に刀を振るう。
―龍河一刀流・水瀧斬り!!―
その刃は良奨たちを襲おうとした襲撃者を瞬く間に倒す。
良奨は二人の影を見ると驚愕した表情を見せる。
「歩!?それに…龍河岡先輩!!」
良奨たちの窮地を救ったのは歩と蒼だ。
だが、二人は煌環苑跡の捜索任務に参加していないはず。
「なぜ、君らがここに…?」
疑問に思った多糯章が口にする。
「暗菜さんから連絡があったんです。」
多糯章の問いに蒼が答える。
数刻前、蒼は明の発言を思い出し明に連絡を取ろうと試みていた。
だが、明の連絡は一向に繋がらなかった。
そんな時、暗菜から連絡が蒼のもとへきたのだ。
―暗菜さん…?―
―よかった無事だね。蒼くん、明から連絡来てない?―
―それが俺もあの人に聞きたいことがあって連絡をとっているんですけど…―
―そう…―
―…どうかしました?―
―多分、明が連絡を返すことはない……と思う。―
―!?―
―実は、たった今襲撃にあったんだ。
なんとか返り討ちにしたけど、おそらくこの襲撃は計画されたものだと思う。―
―!!!―
―蒼くん、悪いけど今から至急2課と合流してほしい。―
―2課と?…彼らは煌環苑で…―
―うん。そこなら二人が一番近い。―
―…襲撃の救援に。ってことですね。…わかりました。 暗菜さんは…?―
―私も付近の隊員の救援に向かう。
2課と落ち合ったらまた連絡して。―
「敵は無人だけじゃない。これからは内部にも気を付けろ。…と明さんは言っていました。」
「そうか…」
多糯章は蒼が2課の救援に来てくれたことを感謝を述べる。
歩は良奨にケガがないか尋ねる。
だが、そんな歩の表情はどこかせわしないものに良奨の目には映った。
歩は連絡のとれない明の身を案じていた。
長年、歩と共に過ごしてきたからこそ、理解できる。
他の者は誤魔化せていても同じく歩も不安な気持ちと戦っていることを良奨は理解していた。
だからこそ、今度は歩の後ろではなく隣で共に支えていくために――
良奨は歩の隣に立つ。
その頃、同じく煌環苑跡で調査を続ける執行隊員。
そこには勇翔の姿もあった。
携帯から響く他の執行隊員の叫び声を聞き、勇翔たちは怯えた表情を見せる。
「おいおい、なんだよ!これは!!」
「ここに無人はいないんじゃないのかよ!」
「ど、どうしよう…!」
勇翔を含めた周囲の執行隊員に恐怖が伝染していく中、突如仲間の執行隊員が狙撃される。
目の前で仲間の死体を目にしたことでさらなる恐怖が勇翔たちを襲う。
すると多糯章たちを襲撃した人物と同じ武装をした集団が姿を現し、勇翔たちを取り囲む。
しかし、その集団の攻撃から勇翔を守る人影が現れる。
「なに!?」
勇翔たちを取り囲んだ集団は為す術もなく倒されていく。
その人物を見た勇翔が目を丸くする。
「兄さん…」
勇翔を助けたのは、兄の傑だった。
傑の後に続いて同行していた霞や美衣が勇翔のもとに駆け付ける。
霞はすぐに勇翔のもとに向かい安否を確認する。
「勇翔くん!無事!?」
「ご、ごめん…また助けられた…」
勇翔は複雑そうな表情を見せる。
その目線の先には美衣やその他の索敵に向いた術式を持つ隊員に指示をする傑の姿だった。
霞は勇翔の負傷した傷の手当てをしながら持ち前の明るさで対応する。
「この状況じゃ仕方ないよ。
うちらも襲撃にあったんだけど、傑さんがすぐに対応してくれたの!
ここにもすぐ来れたのは傑さんが勇翔くんを案じてたからだよ!」
「それはそうなんだけど…」
霞の発言を以てしても勇翔の表情はいまだ変わらない。
霞は自分が考えているよりも兄弟二人の間に何かしらの問題があるのだと察する。
すると傑が勇翔のもとへやってくる。
「勇翔、ケガはないか?」
「う、うん…」
「そうか。」
二人の単調な会話に挟まれ困惑する霞が話題を変えようとした時、索敵を終えた美衣が傑たちのもとへやってくる。
美衣の術式によって襲撃者の数はおおよそ40人程度の少人数であると判明。
だが、いづれも煌環苑跡に散在する2課への奇襲に成功し、すでに2課の執行隊員の半数以上に死傷者が出ている状況だった。
傑はすぐに周囲の執行隊員への救援に向かうべく美衣や霞に指示する。
美衣たち索敵に向いた隊員を先頭に襲撃を受けている隊員のもとへと向かう。
傑と勇翔も他の者に続いてその場を離れる。
――その時だった。
「待て。」
傑が勇翔に立ち止まるよう指示し、目を閉じ全意識を研ぎ澄ませる。
周囲の風の音、遠方で僅かに聞こえてくる襲撃音。さらにその場にいる自分を含めた勇翔や霞の呼吸音までも耳に伝わる。
そんな中で唯一、自身に向けられた殺意。
そのたった一つの気配を頼りに傑は刀を抜く。
傑の刀と何者かの短刀がぶつかり合う。
「なっ!?」
「!!!」
勇翔と霞は目の前に突如現れた人物を見て驚愕する。
その人物は先ほど自分たちを襲った集団と同じ武装を見に纏う人物だが、他とは異なる異質な空気感を漂わせる小柄の男だった。
小柄の男はすぐに傑に肉弾戦を仕掛ける。
素早い足技が傑に襲い掛かるが、傑は素手で攻撃を往なす。
距離をとる傑に小柄の男は拳銃による発砲を繰り出す。
眼先に迫る銃弾を傑は刀で切断しようと刀を向ける。
しかし刀が銃弾を切断した途端、銃弾がはじけ飛ぶように炸裂し、周囲にいた勇翔や霞たちにも銃弾の破片が襲い掛かる。
小柄の男は傑のいる方向を見ながら、短刀を宙に投げては手に取る動作を繰り返しながら笑みを浮かべる。
「へぇ、これが報告にあった天与五人衆か。」
男の見つめる先には無傷の傑が立っていた。
傑は炸裂した銃弾を全て刀で斬り落としていたのだ。
さらに銃弾の破片が勇翔たちに向かわないよう破片の軌道までも考慮したうえで。
「随分達者な奴だな、これを無傷で済ませるのはさすがに戦慄するぜ?」
「お前たちは何者だ。
その服装、国衛局だろ。なぜ俺たちを襲う。」
傑は小柄の男の発言に異に返さず尋ねる。
「はぁ?なんでって、そりゃ――」
宙に投げた短刀を手に持つと小柄の男の目に殺意が籠り始める。
「そのために”俺ら”がいるからだろ。」
男は再び急接近し傑と戦闘を開始する。
すると応戦する自身の背後から何者かの気配を感じる傑。
傑は小柄の男の拳を受け止め、気配を感じた方向へ刀を向け何者かの攻撃を防ぐ。
その者は先ほど多糯章を襲った女性隊員だ。
傑は二人の攻撃を受け流し距離をとる。
「おい宮嶋!!
俺の獲物だ!邪魔すんな!」
小柄の男が自身の横に立つ女性隊員を怒鳴りつける。
宮嶋と呼ばれた女性隊員は長い髪を耳にかけながら僅かに小柄の男に視線を移す。
「ならそのまま死んでも文句はないな?九十九。」
すると九十九と呼ばれた男の拳から突如として血が噴き出る。
「なっ!?」
「触れられたことすら気付かないとはな。
貴様の目は節穴か?」
「ッ…!!
……相変わらず神経を逆なでする奴だな…お前は。」
「なら報告にあった内容を頭に叩き込め。
これでは貴様をこの場に編成した意味もなくなる。」
「無駄話は済んだか?」
―!!!―
宮嶋と九十九の間に入り、攻撃を仕掛ける傑。
傑は自身の術式の詳細を知っているかのような素振りを見せる二人を相手に間髪入れずに戦闘を再開させた。
その頃、襲撃者からの猛攻を掻い潜りながら他の隊員のもとへと向かう多糯章たち。
だが、敵の攻撃手段が銃撃による遠距離での攻撃により刀での戦闘を行う多糯章たちは苦戦強いられていた。
着弾すると破裂を起こし広範囲に攻撃を行う炸裂弾。
幾重にも重なる壁をまるで紙の如く貫通する貫通弾。
さらには銃弾に流源を纏うことである程度軌道を歪めることができる技術。
全てがまるで自分たちを殺害するためにだけに完成されたものに多糯章の目には映る。
「これでは…キリがないな…!」
「多糯章さん…!」
蒼が多糯章に合図を送る。
二人は壁際に方向転換し、襲撃者の死角を作り出す。
襲撃者に生まれた一瞬の隙を見計らって攻撃を行う。
だが、別の方角から現れた襲撃者が他の隊員に向けて発砲を行う。
「しまった…!」
多糯章は術式を使用し、仲間の前に現れ銃弾を弾く。
だが炸裂した銃弾は四方八方にはじけ飛び、隊員を傷つける。
「うぐっ!!」
さらに上空から数名の襲撃者が追撃を仕掛ける。
蒼や多糯章は他の方向から迫る襲撃者で動くことができない。
そこに歩が飛び上がり襲撃者に攻撃を繰り出す。
間一髪で歩に命を救われる隊員。
歩は負傷した隊員を優先して逃げ道を確保し誘導する。
刀を構える歩だが、敵が無人ではなく人間を前に戸惑いが浮き彫りになっていく。
「(なんで人間と戦わなきゃならない…!俺らは……)」
執行隊は無人を執行するために存在している。
元国衛局員だった歩も術式発現者や犯罪者を取り締まった経験はある。
それでもここまで自分たちに明確な殺意を持つ襲撃者は初めてだった。
歩の脳内になぜ襲撃者は自分たちを襲うのか。その疑問が残り続ける。
そんな時だった。
「歩!!!」
良奨の声が歩を目の前の現実へと引き戻す。
歩の前には先ほど自分が倒したと思っていた襲撃者が銃口を向けていた。
歩は襲撃者の息の根を止め切れていなかったのだ。
その詰めの甘さを後悔する間もなく、銃弾が歩へと放たれる。
咄嗟に良奨が歩を庇う。
銃弾は良奨の肩を貫通し、奥の壁へと着弾する。
銃弾は炸裂し壁が破壊され、地面に大きな音を立てて崩れ落ちる。
すると地響きが生じ始め良奨の立つ地面に亀裂が入る。
「マズい!!!」
歩は良奨の腕を掴むが、地面はそのまま崩れ歩と良奨もろとも崖へと崩落してしまう。
「歩!!良奨!!」
蒼が奈落へと落ちる歩と良奨に向かって叫ぶ。
だが襲撃者は依然とこちらに向かい続ける。
蒼は悔しい表情を見せながらも負傷者の避難を優先しその場を一度離れる決断をする。
流源をさらに開放し、二人に威圧をかける傑。
その威圧は二人に冷や汗をかかせるほどに強力なものだが、突如二人の耳元に通信が入る。
すると宮嶋が九十九に目配せし、何かを察した九十九はため息をこぼした後、短刀を鞘に納める。
「潮時だ。我々の任務は達成した。」
宮嶋は傑に向かって口にする。
「待て!」
傑は刀を構え宮嶋たちを追いかけようとするが、その瞬間九十九が指を鳴らす。
すると霞が勇翔に向けて刀を向けて迫りかけていた。
「!?亜里子!何をしている!」
「か、身体が勝手に動いちゃうんです~!!」
傑は動きを止め、霞の方へと向かう。
すると霞も同じく勇翔からと距離をとり傑から逃げようとする。
その動きを見た傑は霞が自身と同じ動きをしていることに気が付く。
「(あの男の術式か…!)」
傑は九十九の術式効果によるものだと理解し、すぐに動きを止め刀を鞘に納める。
すると霞も刀を鞘に納めたことで事態は収拾する。
だが、その頃には宮嶋と九十九は姿を消していた。
しばらくして、九十九による術式効果が切れた傑と霞。
そこに多糯章や蒼を連れた美衣が到着する。
蒼の存在に驚く傑だが、すぐに多糯章の指示で煌環苑跡から離脱する指示を受ける。
煌環苑跡を捜索する執行隊2課。
そこに突如現れた襲撃者によって、2課の隊員は壊滅的な打撃を受けた。
・死傷者32名(捜索の支援に投入された1課の隊員を含む)
・行方不明者6名
任務に参加した1課に所属する9名の隊員のうち、松風 勇翔と亜里子 霞を含めた4名の隊員のみが生存。
煌環苑跡からの離脱に成功したのは、蒼や1課の隊員を含め僅か17名の隊員だけだった。
「たったこれだけ…」
勇翔が小さな声で嘆く。
無人との戦闘に特化した執行隊は対人での戦闘に慣れている者は少ない。
多くの執行隊員が今回の襲撃で犠牲となったのだ。
それは2課だけでなく、他の地でも同様だった。
数刻前。
東京都伊斗市
「はぁ…はぁ……」
壁にもたれながら荒い息を上げる阿波村。
国衛局員の宴で次々と鳴り響く発砲音。
上層部の護衛のためその場にいた阿波村も襲撃に遭うが、硬化の術式を発動し銃弾から身を守り、なんとかその場を脱した。
だが、無防備の状態で度重なる襲撃を受けたことで阿波村の腹部には銃弾による大きな出血があった。
そんな状態であっても阿波村は自身の護衛対象である邁の安否を気にかけていた。
阿波村は負傷個所を布で止血し、意を決して走り出す。
そんな様子を会場のはるか遠方の森奥から見つめる一人の襲撃者。
「やはり硬いな。
彼のもとへ向かうまで止まるつもりはなさそうだな。」
すると襲撃者が阿波村を発見する。
「マズい…!」
前方を囲まれ、万事休す。
その時だった。
―獅壕二刀流・猛牙荒吼!!―
凄まじい勢いで襲撃者が切り倒されていく。
阿波村の窮地を救ったのは春瀬だった。
春瀬は執行隊で唯一の二刀流による流派の使い手。
二本の刀による連撃で一気に襲撃者を蹴散らしていく。
「阿波村!」
そして自身の刀を阿波村へと投げる。
阿波村は春瀬から刀を受け取り、自身に迫る襲撃者を斬り倒す。
春瀬と背中合わせで襲撃者からの攻撃に対応していく阿波村。
「春瀬さん!ようやく酔いが覚めたんですか?」
「アホ抜かせ!最初から酔ってないわ!」
なんとか襲撃者を倒し、邁たち上層部の国衛局員がいる部屋へと向かう阿波村たち。
部屋に到着すると、邁が銃を構えて襲撃者と対峙していた。
阿波村は邁を救出し、他の国衛局員の安否を確認する。
「阿波村!無事だったか!」
「鳳焔寺局長こそ、ご無事で!
はやくここから出ま――」
阿波村が邁に手を差し伸べた瞬間、一発の銃弾が壁を貫通し阿波村の胸を貫いた。
銃弾が邁の頬をかすめ、遅れて傷が開く。
「ゴフッ…」
阿波村の吐血を遠方で様子を伺っていた襲撃者が確認する。
「…ようやく術式を緩めたな。」
そう口にすると遠方にいる襲撃者。
壁に空いた僅かな穴から阿波村の姿を捉え、もう一発銃弾を撃ち込む。
銃弾は阿波村の頭部を直撃する。
邁の顔に阿波村の頭部から噴き出た血が降りかかる。
「阿波村!!」
春瀬が叫ぶ。
だが襲撃者がこちらに迫ってくるのを目にした春瀬はすぐにこの場から離れないとならないことを察する。
「そんな…阿波村…」
邁に絶望の表情が浮かぶ。
目の前には頭部が半分欠損し、目から光が消えた阿波村の身体が倒れていた。
上層部の地位に就いてから7年の間、命を顧みず自分の命を守ってくれた阿波村との思い出が邁の脳裏に蘇る。
そんな邁を現実に引き戻すが如く春瀬が邁の肩を掴む。
「ダメです!ここで立ち止まったらコイツの命が無駄だ!!」
邁は阿波村の遺体を目にしながら悔しい表情を見せる。
だが、春瀬の言葉を聞き邁は意を決してその場を立ち去る決断をする。
振り向かずに走り続ける邁たち。
背後で聞こえてくる執行隊員や国衛局員の悲鳴。
邁たちと共に会場から逃げ延びた者は僅か数名程度だった。
先ほど遠方で阿波村を銃殺した襲撃者が邁たちが生き残ったのを確認する。
「3班、目標は生存。次の段階へ移行可能だ。」
そう口にした襲撃者はその場から離れ闇へと消えていく。
各地で謎の襲撃を受けた執行隊。
その被害規模は全国的に及び、国民の耳にも知れ渡ることとなった。
だが、そこで報道されたのは執行隊が襲撃を受けた内容とは裏腹に執行隊が国衛局員を殺害したといった事実は大きく異なるものだった。
後日、国衛局は執行隊の全面凍結を命じ、現在行方不明の執行隊員の捜索を開始した。
「うっ……うう……」
目を覚ます歩。
身体に鈍い痛みが走るが、活動には問題はない。
「目を覚ましたか。」
すると自身の背後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「あなたは…!!」
歩は慌ててその人物の方を振り向く。
そこには――
「絙さん!?」




