喧嘩するほど仲がいい
僕は朝起きて少し寝ぼけながら、声を出す。
「スキロス」
「はい!」
僕が呼びかけると、どこからともなくケモ耳が顔を出した。
「今日は真面目な話だ。3日後、他の幹部も集めて会議を開く。呼んでおいてくれ」
僕は簡潔に話を済ませ、目を閉じて横になった。
「じろじろ」
スキロスは一向に帰ろうとせず、じっと僕を見つめている。
全く、察しの悪い犬だ。
「もう去っていいよ」
「じろじろ」
口で言っちゃってるし!
まあ何でもいいんだけどさ。
「帰りたくない」
うん、言うと思ってた。
僕は寝返りを打ち、早く帰れと言う、言葉を込めた笑顔でスキロスを見つめた。
「帰りたくなーい!」
「帰れ」
僕は圧倒的な反射神経で、できるだけ食い気味で言った。
だが、スキロスは駄々を捏ね始めた。こうなるとかなり面倒くさい。
「嫌だ嫌だ!」
「わかったから。……お願いだから黙ってくれ」
ただでさえ声が大きいスキロス。
ここはいわゆる学生寮だ。余裕で隣の部屋に声が漏れる!
「はいはい、こっちおいで〜」
僕は布団の中にスキロスを手招きした。
「んふふ〜」
頭を撫でてやると、露骨に嬉しそうな顔をした。
やっぱりスキロスは可愛いからいいね。
胸がでかいから女として意識しそうになるけど、それ以上マスコット的可愛いさが勝る。
*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*
そして学校に行くと、クラスが妙に盛り上がっていた。
僕はとりあえず席につき、教科書を読み込んでるヒュブリスに話しかけた。
「ねーー」
「ねえねえ!」
と、思ったら逆にカイに話しかけられた。
初めて話すよな? 何の用だろうか。
それにカイ以外にもフェアロやミュトたちもいるし。
「お前さ、初日から女連れ込んだって本当?」
カイは楽しそうにニヤニヤしながら聞いてきた。
「ちがっーー」
「はあぁぁ!?」
うわっ! びっくりした。
ヒュブリスは急に大声を出して、教科書投げ捨て、勢いよく立ち上がった。
すると僕を睨み、だんだんと顔を近づけてきた。
「あんた……」
も、もうよく分からないって! 僕、パニックだよ。
「私のことが好きなくせに女連れ込んだの!!」
「は、はあ?」
ヒュブリスは急に座ると、顔を赤くしながら熱弁し始めた。
「だ、だって、あんた一回私に求婚してきたし? そ、それに、いつも話しかけてくるじゃない!」
ヒュブリスは指先同士をつんつんさせながら、恥ずかしそうに言った。
お前思春期の男子か!
と、心の中で鋭いツッコミを入れつつも、ちゃんとヒュブリスを見つめた。
「こ、こんなの浮気よ!」
「ちょっとちょっと〜、何の騒ぎ?」
すると、続々と人が集まってきて、慌てた顔をしたティアラがそんなことを聞いてきた。
すっごい目立っちゃってるなぁ。
「……まずは落ち着くべき!」
するとぉ……誰だっけこいつ?
あー、思い出した思い出した。シイナだ。
「シイナちゃん、なんか楽しそうだねぇ?」
ニヤニヤした表情でティアラがシイナにくっつく。
「ティアラも」
シイナは控えめな無表情系だと思っていたが、少しだが浮かれているように見える。
なに呑気に楽しんでんだよ!
「誤解だって! 僕はずっと寝てただけだよ」
「火のないとこに煙は立たないのよ!」
な、何でそんな日本のことわざ知ってるんだよ!
「そ、その言葉……」
「まあまあ、まずはミノルくんの話を聞いてあげなよ」
ティアラはやっと話を納めてくれた。
「はいはい、まず情報の根拠はなんですかカイくん」
ティアラは、まるで裁判長のように振る舞い始めた。
「ええっと、フェアロから聞いて……」
「ではフェアロくん」
「はい、今日の朝。隣の部屋、ミノルくんの部屋から、何かを嫌がる女の子の声が聞こえて」
フェアロは冗談っぽく、大袈裟に体を震えさせると、笑いが巻き起こる。
「いいえ、僕は寝ていただけです!」
事実だ。実際僕は一度も起き上がっていなかったし。
「そんなのどうでもいいの! ただこれだけ答えなさい! 今日の朝、女の子が部屋にいたの?」
「ええっと、ぼ、僕は何もしてなくて……それで本当に寝てただけで」
「それで?」
ヒュブリスは僕の机に手をバンと置き、鋭い目つきで瞳を覗いた。
「つ、つまり、手は出してない……的な?」
「やっぱ連れ込んでるじゃないのぉぉ!!」
その一件から良くも悪くも名が知れてしまい、僕らはクラスメイトとも仲良くなったのだった。
めでたし、めでたし?




