社会性も恐れるに足る力である
それから男は、1時間教室内で待機せよ、と言い残し教室を去った。
おそらく話し合いや自己紹介の場を設けたのだろう。
この学校の創設者である、前で話していた男、名をキリスと言ったか。
あいつは実力は均等になるようにすると言っていた。実力と言うのはまとめ上げる力、シンプルな戦闘能力など、いろいろある。
それならおそらく、会話能力のある人間も配置されているはず……だが、一向に話が始まらないぞ。
みんな難しい顔をして、ただ言葉の通り待機している。
「ねえねえ、なんか話切り出せよ」
僕は隣のヒュブリスに小声で話しかけた。
「なんでよ。仕切るのとかめんどくさいじゃない」
彼女は露骨に嫌な顔をすると、そっぽを向いて、私関係ありませんオーラを出し始めてしまった。
さて、どうしようか
誰かが切り出すのを待つにせよ、状況は悪化していくばかりだ。時が経つにつれ、どんどん話しづらくなっていく。
仕方ない、最初だけ僕が話を始めるか。
「みーー」
「ーーみんな」
僕が口を開けようとした瞬間、フェアロが立ち上がり教卓の方へ向かった。
誰がやるかと思ったら、まさかのお前とは。
「まずは自己紹介とかしよ! このまま黙っててもつまらないし」
「あ、それ俺も思ってた!」
すると、それに賛同するように1人の男子生徒が声を上げた。
「え〜と、俺はカイ。趣味は友達と遊んだりすることで、得意魔術は炎系全般。よろしく!」
「カイ、よろしく!」
2人はニコッと笑い合うと、空気はどんどん緩んでいった。
すると、続々と生徒たちも周りに目をやるようになり、少しずつ会話が増えていく。
「僕はフェアロ。趣味は食べることで、得意魔術は光系だよ!」
フェアロが話を終えると、女子生徒が勢いよく立ち上がった。
「私はティアラ! 得意魔術は光と風だよ。元気なとこだけが取り柄だよ!」
ティアラはニコニコしながら楽しそうに話した。
こんな元気なのに、なんでさっきまで黙ってたんだ?
「俺はーー」
ーーその後もクラス全員の自己紹介を終え、今は自由にみんな立ち歩き、話したい人と話している。
僕はあえて静かなキャラを演じることにした。
決して、自己紹介を失敗したわけではない。ただ、わざと控えめな自己紹介をしたのだ。
「へえー、フェアロくんとミュトちゃんは幼馴染なんだ!」
フェアロを囲むように、何人かの生徒が集まって話していた。
「お前は行かなくていいの?」
「どうせ馴れ合うだけ無駄でしょ」
ヒュブリスは腕と足を組み、まるで王女様にでもなったかのように偉そうな態度だった。
これだからエセ貴族は。金はあっても礼儀ない。
「ふーん」
「なに、その感じ」
「いや、もっと外交的なもんだと思ってたからさ」
するとヒュブリス鼻で笑って、な訳ないでしょバカ、と何故か罵倒してきた。
こいつはあれだ。関わろうと思えば関われるけど、絡むのは好きじゃない感じか。
それから、特に大きな進行はなく、その日はそこで解散した。
フェアロたちは遊ぶ約束まで取り付けていた。陽キャ恐るべし。
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その夜。
淡い月明かりが窓を突き抜け、少年の顔を照らす。
少年は小さく寝息をたてて、静かに眠っていた。
「ぐはぁ!」
突然の吐血。
すごい量の血が口から出るのと同時に、少年の腹部の布団が赤く染まってゆく。
「……忘れ、てた」
少年は苦しそうにしながらも、落ち着いて考え込んだ。
この学校は5年制。僕が有名になったから1〜2年は経ってる。目的は僕を殺すこと、つまり卒業生がいると言うことだ。
もともと魔王を倒せるように、特訓されていたレベルの卒業生がいる。よくよく考えてみれば当たり前だ。僕はもうゲーム感覚ではいられないらしい。
これは呪いか。僕の体一部、髪の毛などの物がある場合に、使える特殊な魔術の一種。
そう結論づけると、少年は静かに怪我をした場所に手を当てた。すると、明るい緑色に光り始め、少年の傷を癒してゆく。
そのまま顎に垂れた血を手で拭うと、血の集まった手のひらを上に向け、真っ赤な炎で燃やした。
その炎は飛び散った血までもを綺麗に燃やしてゆき、いつの間にか何事もなかったかのように戻った。
「ふう」
少年は一仕事終えたように息をつくと、あくびをしてゆっくり目を閉じた。




