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フェアロは人間すぎる

 残り1日。


 もはや皆、完全に油断しきっており、良くも悪くも場の空気は穏やかだった。


「一時はどうなるかと思ったよね〜」


 ミュトは完全に油断しきった表情で芝生に寝転びながら言う。

 

 ミュトは少し前までは、完全に意気消沈していたから目立たなかったが、一応元気系の女子だ。


 顔つきは可愛らしい感じで、八重歯があり小悪魔っぽい。


「ねえ、フェアロ〜。なんか反応してよ」


 フェアロは不思議な少年だ。


 ペルソナと同じレベルで感情が読み取れない。なによりもとても普通なのがまた不気味だ。


「あ、ごめんごめん。僕まだちょっと怖いんだよ」


 フェアロは頭に手を当てて照れたように言う。


「私が守ってあげるよ〜」


 ミュトは寝転がったまま体を横に回転させて、フェアロに近づき膝に頭を置いた。


 一瞬フェアロの瞳が揺れた。


 何だ今の反応?


「まったく、照れちゃうなぁ。膝枕なんて」


 フェアロは恥ずかしそうに頬を掻いた。


「あ、そういえば前にね。美味しそうな木の実があったから拾って食べたら、ただの石だったんだよ」


「いや、まずまずなんで落ちてるもの食べてんの〜!」


 ちょっとした笑いが巻き起こる。やっぱり変だ。こいつは「人間すぎる」


「フェアロくんはおっちょこちょいなんだね」


 セリウスが小さく笑いながら言う。


「ねえ、少し話せる?」 


 僕も作り笑顔で適当に笑っていると、イロイダから話しかけられた。


 あ、きた。


「う、うん」


 僕はイロイダに連れられ、みんなから離れた。


 しばらく無言で歩いたのち、イロイダが話を切り出した。


「なんて言うかさ、あなたはどうしたいのかなって」


「どうしたいって?」


 なんとなく察しはつくが聞き返してみる。


「私たちの関係よ」


 照れたような、でも真剣な眼差しで僕を見つめた。


「そんはこと言われても……」


 僕が下を向くと、イロイダは何か決意したように言った。


「そうね。なら私もちゃんと言わないとね」


 イロイダは大きく息を吸っていった。


「私はあなたが好き! 結婚したいくらい好き!」


 イロイダは顔を真っ赤に染め上げながら、大きな声で宣言するように言った。


 早い、早いぜ。それは1番ないって。


 今終わったよ、僕たちの物語。君の出番、終わったよ。


「この世で1番守るべきものは何かわかるか? テンプレだよ。もちろん邪道な展開も嫌いじゃない。でもね、前提があるから邪道も邪道として際立つんだ」


 込めた感情は怒りだ。僕は怒ってる。


「あ、あの、一体なんの話をしてるの?」


 イロイダは僕の言っていることが、本気で理解できないようだった。


「つまりだな。君は道を間違えたってことだ」


 僕はゆっくりとイロイダに近づく。


「な、なに?」


 イロイダがゆっくりと後ずさる。


 僕は殺意を持ってイロイダに接近し、おでこにデコピンをした。


「なんてね! でも今のは聞かなかったことにするよ。今はまだその時じゃないだろ?」


「え、あ、ちょっと!」


 僕はイロイダを無視して背を向けた。


 危ない危ない。殺すところだった。


 そうだ。イロイダは確かに邪道したが、僕は今ヒロインを殺そうとした。ヒロインを殺すこと以上の邪道があるか? 

 

 多分誰にも理解されない。でも僕にとっては今の出来事ほど重要な事はない。


 僕にとって今の展開は、殺してでも阻止したくなるほどの何かだったんだ。

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