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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第五の部 学園生活順風満帆なお話
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第二百六十四話 事後の顛末


 課外授業の最中に発生した『魔獣暴走』の異常事態は、多数の怪我人は出しつつも死者が出ることはなかった。むしろ、狩人も生徒も含めたその全てが軽傷ないし全治数週間程度に収まった。


 保護者(貴族)からは狩人ハンター組合や学校への安全性を疑問視する声が上がったものの、極々一部に止まった。むしろ、この危機に過不足なく対応できるほど、万一の事態に備えてどれほどに入念な準備及びに教育を行なっていたのか、両組織への水準の高さが再認識されるほどであった。


 次年度の課外授業の継続も一部では疑問の声が上がったものの、元々はリスクを承知での授業であり入学時点でも説明がなされていた。よって、問題なく継続がされるらしい。


 とはいえ、魔獣が突如として凶暴化した原因の究明は当然求められた。なぜこのような事態に陥り、予防策は如何様になるかという説明は必要であった。


 現場に居合わせた『関係者』の証言によると、此度の騒動における最大の原因は違法薬物『誘導香』が使用された事であると判明。


 それらを持ち込んだのは狩人ハンター三名。


 課外授業が行われる辺り一帯は、しばらく前より組合から関係者以外の侵入を禁止する旨が発せられており、彼らはその発令を違反したことになる。


 しかし残念ながら、当狩人ハンター三名は関係者が駆けつけた時点で、誘導香に引き寄せられた魔獣によって全員が死亡が確認。詳しい事情の聴取は不可能であった。また、死体はおろか、装備の損耗も激しく、身元の照会困難と判断。


 さらなる事態の究明のため、以降も調査は続けるものの、証拠や情報の少なさからこれ以上の真相発覚は困難であると考えられる。 


 

「──というのが、この事件における『落とし所』となります」

「良いんですか。そんなのを一介の生徒に教えちゃって」


 波乱の課外授業が終わって少しの日が経過した頃、俺は学校長の部屋に呼び出されていた。


「リース君には今回の件で大変にお世話になりましたからね。被害を最小限に抑えられたのは間違いなく君の貢献が大きい」

「俺だけの成果じゃないでしょうよ」

「もちろんです。アルフィ君をはじめとしたノーブルクラスの生徒たちの尽力も忘れてはいませんよ」


 通常クラスの生徒たちの誘導や呼びかけにはノーブルクラスの生徒たちが積極的に行動していたらしい。おかげで深刻な混乱に陥る前に迅速な避難活動を行えたのだ。さすがは学年トップ層と、ちょっと我がことのように嬉しかったのは秘密である。


「とはいえ、最も危険な場所に居合わせた当事者が君であることに違いありません。ですから、仔細を伝えておくのが筋でしょう。これには君の担任であるゼスト先生も同意しています」

「だったらあの担任が話せばよかったじゃん」

「彼もまぁまだ忙しいので。少し手が空いた私が説明を受け取った次第ですよ」


 森の奥で九尾狐という化け物と戦い、間一髪のところで大賢者に助けられた記憶はある。しかし、その場に同じく居合わせた学校長までは覚えていなかった。その辺りを申し訳なく伝えるも、学校長は「あの状況であれば仕方がありませんよ」と気を悪くした様子もなく笑っていた。実際問題、あれは俺の人生の中で五本の指に入るくらいに本当に命の危機に瀕した絶望的状況だったといえよう。


 九尾狐の情報は早急に組合を筆頭に国の各所へと共有。森の奥深くへと足を踏み入れなければ特別に警戒する必要はなく、これまで通り狩猟目的で狩人ハンターが入ることは問題がないとの裁定が下された。


「ですが、今ここで話す内容は全て、君の胸の奥に留めておいてもらえると助かります。当然、君の友人にもです」

「そりゃぁまぁ……理解はできます」


 学校長が対外的に発表した説明の中には一つ、大きな隠蔽が存在している。


 誘導香を使用したのはジーニアスの生徒。


 最後まで行方を眩ませていた、あのジルコとエディの二人組だ。


 俺が駆けつけた時、誘導香の強烈な匂いがあいつらに強くこびり着いていた。おそらくは使用法を誤り、封入した容器を自身の足元に叩きつけて割ったのだろう。あれは矢か何かにくくりつけて遠方に飛ばすか、魔法で離れた位置から割るのが適切な使い方だ。


 ただ、エディらに誘導香を渡したのは身元不明の狩人たちだ。これはジルコたちが証言をしている。


 誘導香は国からも製造も所持も厳しく制限されている劇薬。扱い方によっては冗談抜きで町一つが壊滅するし、量と濃度次第では国を丸々一つ飲み込む大惨事に発展する。それだけに入手販路は裏社会にしか存在しない。


 形はどうあれ、裏社会とつながる人間と名門魔法学校の生徒が関係を持っていた──なんて話、大不祥事(スキャンダル)間違いなしだ。いくら事情説明したところで学園への責任追及は止まらないだろう。


 よって、死人に口無し──身元不明の狩人ハンターらに全ての責任をなすりつけたのである。


「リース君は理解が早くて助かります。他の子達であればもっと難色を示していたでしょう」

「師匠の教育が良かったもんで」


 ジーニアス魔法学校に通う以前より、大賢者からは貴族の世界がしがらみに囚われたやたらと面倒臭いものであると口酸っぱく教わってきた。学校長のこれもまさしく『政治的判断』というやつと理解できる。


 もっとも、理解と納得が必ずしも等分(イコール)で済まないのが人間である。


「つって、あんまりスッキリしない終わり方には違いないでしょうよ。騙されたとはいえ、やらかしたのはジーニアス(ウチ)の生徒なんだから。俺も無関係じゃなさそうだし」


 エディとジルコが誘導香の使用法を誤っていたことから、それが発する効果についての正しい知識はなかったと考えられる。けれども当日の二人の行動からして、おそらくはよからぬ企みを抱いていたのだろう。そしてその矛先は間違いなく俺に向いていたはずだ。


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大賢者pop
― 新着の感想 ―
ギルド側は、風聞と消去法で特定してるんじゃない?
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 表向きには関係ないが、何かしらの罰は下るのかなぁ
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